表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/303

52話【Enterキーの殺人鬼は一大スクープをゲットしたそうです】


補習は1時間半ほど行われ下校は、5時が近付く頃だった。みっちり滝本に教えられ、魂が抜けかけている。涼は、補習が終わるとすぐに習い事がある、という事で走って帰っていった。


たしか、涼の習い事は5時からだったっけ?家まで30分くらいの筈だから、遅刻ギリギリだ。篠川は、部活前ににグラウンドを覗きに向かった。丁度、誠が練習試合に交代で出た所だ。


サッカー部の誠は、2年生で念願のレギュラーを獲得した。1年生では、友人がレギュラー入りを果たし悔しがっていた。サッカーボールを誠は追いかけていく。


篠川は心の中で声援を送ると、部室へ歩いて行った。階段を上り、コンピューター室の扉を開けて挨拶をする。


「こんちはー」

既に、沢山の生徒が集まってきていた。そして今は、現行の仕上げ真っ最中。華山もパソコンと向かい合いキーボードを壊しそうな勢いで打っていく。


その為、

「先輩、部費で修理になるので壊さないで下さいね。いままでクラッシャーして5台も壊してるんですから」

「分かってる。それくらい、ね」

華山は「あっ」と呟いた。その瞬間、周りの生徒から溜息が漏れる。

「ごめん、Enterキー外れたわ。んじゃ、他のパソコン使うね」

華山は外れたEnterキーをキーボードに無理やり捩じ込むと、隣のパソコンへ移った。


篠川はその様子を見て、苦笑しつつ空いている席に腰掛けた。

キーボードを打ち、作業をする。

ブツブツ、と現行を読み上げながら篠川は打ち込んで行った。


すると、また向こうから。

「先輩!これで7台目ですよ?なんで、Shiftが外れてるんですか?」

「ごめん、ごめん、つい……力が入っちゃって」

呆れた生徒たちは、華山を作業班から外し刑事班に移動させた。それが吉と出て華山がいなくなると、作業がはかどっていった。



部活が終了したのは、5時だった。記事を印刷し終え、明日から掲示が始まる。

「篠川。明日はウチらとAの掲示班ね」

と、3年生に言われ、頷く。華山は篠川が話し終えるのを見て、中庭に呼び出した。

「篠!終わったら中庭のベンチのとこ!待ってるから!」

聞きたいのだ、あの話を。


篠川は短く話を終わらせ、コンピューター室を足早に出て行った。出る寸前、ある生徒に、「逆告白かもよー」と言われたがあり得ないと思う。

なぜ、皆そういうのが好きなのやら。


呆れながら中庭に向かうと、華山はベンチに座って菓子パンを頬張っていた。しばらく菓子パンに夢中だったが篠川に気がつくと手を振り、隣に座らせた。


「篠川、このレーズンパン奢るから隣に座って」

不審に感じながら、菓子パンを受け取り篠川はベンチに座った。

「篠川、正直に話して。あんたさ、本当に学生なの?」

「え……」

「こないだ、聞いちゃってさ。篠川が社会人だけど潜入捜査しに来てるって」

「まさか、それをスクープにするきですか?」

「もちろんよ。一大スクープじゃない」

「ならば、言えません。話してはいけない決まりなので」

「それってさ、本当にこの世の人間じゃないって事?」

「えっ……それは……」

「私、黙ってるから。ね、お願い。秘密にする」

「でも、これ言っちゃうとマズイし」

「私が何があっても守るから!」


どう、守るんだよ(怒)

「それって、俺に利益ありますか?」

篠川は手を固く握り締め、俯いた。華山は、途端に黙り込む。

「利益、そうだよね。新聞部にしか利益ないもんね」

「秘密に、してくれますか?」

「え……」

華山は驚きのあまり絶句してしまった。話してくれるの?篠川は。

「信じて貰えないですよね。前に、他の人にも話したんですが、信じて貰えませんでした。俺は本当は、14歳ではありません。20代とだけお話ししておきます」

「それが、真実?」

「いえ、ほんの一部です。俺は元会社員です。未来から来ました。独身でした」

「未来……」

華山は、その時少しだけ宇宙人などのオカルト的な事が信じられる気がした。いままで、そんな記事を書いた事はあるがすべていない事を実証する記事ばかりだった。


「俺は、占い師の男の力を借りてこの姿になりました。俺は、限られた時間しかこの世界にいる事ができません。ましてや、話してしまったがために帰らなくてはなりません」

その時、いきなり華山に抱きしめられていた。気管が…………

「もう、いい。黙って。信じてあげる、その話」

ハーレム王になれる気がする。たぶん、もうなってる。

「華山………」

「どうせ、その事でいろいろ悩んでたでしょ?大丈夫だから」

華山の頭が俺の肩に乗る。重い。でも、嬉しいかな。いや、そっち系の意味じゃないですから!いや、ただ単に社会人になってこんな風になる事とかなくて……


バッ、と華山は起き上がると篠川の頭を撫でていた。

「辛かったよね。ごめん………知らなかった。でもね」

「でも……?」

「やっぱり、美味しいスクープだから貰っていくね!」

・・・・・スクープ?スクープ?スクープ?スクープ?待って……!!!!!!!!

華山は俺を撮影すると部室へ走っていった。慌てて俺は華山を追う。

「待て!華山!その画像返せ!」

顔を真っ赤にした篠川は華山の後を追った。階段を上り、先に部室へ回り込む。そこでコンピューターの命の電気を止め、鍵を閉めポケットに入れる。


しかし華山は俺と入れ違いに合鍵を使い、自家発電装置を稼働させた。

「残念!停電時も使えるように自家発電装置を設置してあるんだー!しかも、部長は合鍵を使える。職員室から拝借した鍵で閉めたって、開けれるんだなー!」


「くそっ!」


華山はパソコンに携帯電話と繋ぐコードを差し込み、キーボードを打っていった。

「ハハハハハッハ」

負けた。しかし、まだ終わっていない。俺は印刷機の電源を落とし、コードを抜き、棚の中に隠した。が、華山は印刷時になるとコードを探し出し、電源を入れ印刷を初めてしまった。


「なんでさ、そんなの作るんだよ」

すると、華山は印刷されてくる新聞を取り出しながら、

「売れるから」

と答えた。

「反響、そんなにいいのか?」

篠川は首を傾げながら問う。

「先月、1000部売れた」

「一枚10円だから、1万円か……」

結構、売れるんだな。って、感心してる場合じゃねぇ!!

「印刷をやめろ!」

「嫌だ。金になる」

「お前の金じゃねぇーだろ」

「少しだけ拝借してる」

「最低だな」

華山は新聞を機械から取り出し終えると、今度はコピー機にかけ始めた。

「やめろ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ