50話【真面目な裏と不真面目な表】
今晩の夕食は、キノコ野菜のソースがかかったハンバーグと、白御飯に味噌汁である。メニュー表を確認すると前にも出た事がある料理だ。
2分ほどで食べ終えたあと、華山の部屋に向かった。もちろん、勉強のためである。女子部屋と男子部屋ではガラスの扉で仕切られているが行き来はほとんど自由だった。というより、最近は部屋も混ざってきているようで必要性のない扉である。
ノートを脇に抱えて篠川はガラス戸の凹みに手をかけた。
心臓がバクバクと跳ねて、今にも口から吐き出しそうである。
「勉強を……ぉしぇてぇもらぃにぃきぃたぁだぁけでぇ」
と言葉にならない意味不明な発言を繰り返しながら、扉を開けた。南側の部屋になるため、心なしか暖かく思えた。華山の部屋番号を掲示板でまずは確認する。
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001岡田
002華山
003伊藤
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案外、簡単に部屋って見つかるんだな。「002」の部屋番号を覚え、廊下を歩いていく。確か、こっちはまだ混ざってないんだよな。篠川のいる南側の寮は、男女が混ざっているのだが北側は、全員女子である。
「っ〜!なんか、こえぇ」
真っ先に頭に浮かんできたのは、他でもなく「恐怖」だった。部屋の扉には、流行りのデコが施されたネームプレートが掛けられている。
縁にはレースやら、ビーズやらスパンコールやら。オジサンの知らない小物が混じっている。って、オジサンこんな所に来ていいのだろうか……。
などと考えている間にも、「002」号室はやってくる。ドアをノックするとルームウェアをきた華山が顔を出す。「入りなよ」と言われそのまま頷いて、篠川は華山の部屋に上がった。
華山の部屋は、予想外にスッキリしていて小物はほとんどなく、勉強道具ばかりが揃っていた。(イマドキの学生ってこうだったっけ?)と頭を抱えながら部屋を見渡した。
アイドルのポスター0枚、漫画0冊、雑誌は「ニュートン」などのサイエンス系の雑誌が床に散乱している。
こうなったら、本棚を見せていただこう!何が何でも、漫画やファッション誌を見つけ出してやる。
「華山、本棚見ていい?」
「面白いもん、ないと思うけんどええで」
なにやら作業をしている華山の邪魔にならないように、本棚の扉を開けた俺はあまりの衝撃に失神しそうになる。
並んでいるのは、参考書や学者の本など。期待した本は一冊も見られなかった。
(どーゆーことだ……)
期待を必ず裏切る少女、華山。雑誌や漫画を一冊も持っていなかった。なんでだ…。華山に携帯を見せていただくと、メールのやり取りの内容は、友人との教えあいなどである。
勉強ができる奴とは、こうなのか。肩を落とした俺は華山に謝り自室へ戻ることに。
「どーゆーこーとーダ!みんな、あんな本しか持っていないのか?」
その頃、華山は篠川が帰ったのを見ると本棚に手をかけ、なにやら小細工をする。すると、本棚はくるりと回転して裏側の本棚が現れる。
そこには、人気アニメの漫画やファッション雑誌が無造作に並べられている。
「ふふっ。ふふふふふふ、真面目な子にちょっとは見えたかな?」
そう言って華山は雑誌を取り椅子に飛び乗り足で床を蹴り回転させた。
「簡単簡単。みんな簡単に騙せるし、誰もこの隠し本棚に気が付かない。4週間かけて制作した甲斐があったよ」
そう言って雑誌にハサミの刃を当てた。




