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49話【ダイヤグラム睡眠法】

日和は自室へ戻る途中、アイスの袋を開封した。中から冷気が溢れてくる。

「我慢できない!」

バクっとアイスに噛り付き、イライラしつつ部屋へ戻った。ふと、カレンダーを見るとテストが近付いていた。もう、テスト週間が見えてきている。テキストを開き、一通り目を通す。大体覚えているため、確認だけで勉強は終了した。


篠川もコーヒーを口に含みながら、参考書をめくっていく。意味の分からぬ暗号式が目の前でダンスしているように見える。篠川の習うのは「公立コース」のハイレベルである。参考書の問題構成は、標準が50%、基本が30%、応用が20%となっている。頭の良い、美和のようになると標準40%、応用40%になるらしい。そうなると、「難関私立コース」になる。

「意味ワカンねぇー。ハァ!?こんなに難しかったっけ??」

解き方が、全くもって分からない。どういうこっちゃ!はてなが頭を埋め尽くしていく。


公立コースにも関わらず、篠川は小テストで総合順位50人中39番であった。その為、華山に馬鹿にされてしまった。なんという事だ、華山は総合ランキング1位なのである。雲の上の存在になってしまっている。


手を伸ばしても届かない。掴もうとしても、空気を掴むのかのように指の間を通り過ぎていった。(華山……)華山凛は全教科満点の偉業を成し遂げた神だ。由美香は、まぁ堂々と連続最下位記録を成し遂げた死神だ。


コンコン!

ドアがノックされ、篠川が振り向くと華山がドアの隙間から顔を出していた。

「教えてあげよっか!」

そう言って、部屋のドアの前に置いた段ボール箱を睨みつける。その合図によると、段ボールが邪魔で開けないという事らしい。篠川はノート類をまとめて椅子から飛び降り段ボール箱を寄せた。すると、勢いよく華山がドアを開け放ち篠川はドアで顔面を強打した。ガコン、という音が鳴り篠川は脳震盪を起こした。

「篠川!だいじょーぶ?ごめんねー!アハハハ」

頭を掻きながら、華山は篠川の頭を持ってきた参考書でバシバシと叩き意識を取り返す。三途の川を遠くから観察していた篠川はまた人間界へ帰ってきた。

「へぁ?」

「いやぁ!大丈夫?馬鹿になってない?元々馬鹿かな?教えてあげようではないか!」

そう言って華山は篠川を椅子に座らせ隣のベットに腰掛けた。


2時間、みっちり華山に教えて貰い篠川の頭はパンク仕掛けていた。

「1次関数応用のダイヤグラム2なんて、むずかしくないじゃーん!えええ?こんなのもわかんねぇのか?P66でしょ?計算なんか、この段階で出てこないのよ?時間と距離を表したやつの、これをダイヤグラムっつうの。ほれ、ここ矢印いれてみぃ。進行方向が……」


ノートにダイヤグラムの図が描かれていく。

「A駅から、バーッと行って、休憩の繰り返しやお?この、Bの列車は、A駅に着いたら、またBに向かってバーッと行って、休んで、下って……。こう見たら、簡単やお?……って、篠川!寝るなぁー!!」

華山の熱気あふれる指導中、篠川は眠ってしまっていた。腕枕を作って夢の世界へ行ってしまっている。

「ったく、せっかく人が教えてやるって言ってるのに」

華山は篠川を睨みつけながら、背中に篠川の上着をかけて部屋を出て行った。


篠川が目覚めたのは夜中の1時過ぎだった。机には開いたままの教科書と、夕食と思われる料理が並んでいる。

「ふわぁー!」

体を起こすと、服に張り付いていた何かが床へハラハラと落ちていく。椅子の上からそれへ手を伸ばして読んでみる。

「えっと、何?んー。《篠川へ。教えてる間に寝ちゃうなんて、あんたバカァ?まぁ、いいか。とにかく起きるまでは私は自分の部屋にいるから続きを教えて欲しけりゃくる事。あと、夕食はきちんと取ってね。凛お姉様より》………」

イライラするようなメモである。まぁ、夕食を取ってくれたし、有難いな。

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