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46話【壊れたつり橋渡る占い師】

また、か。と俺は呟きながら寮へ続く坂を登る。坂を登れば寮が見える。大きく伸びをして駆け出した。その時、俺の動きが停止した。

「なっ……!!?」

体が動かなかった。いや、歳の問題とかじゃなくて物理的に。足に接着剤が付き地面に貼り付いたかのように。(なんだよ!これぇ……)動かない肉塊(しのかわ)は必死に助けを呼ぼうとしたが、声も出ない。


その時、篠川の制服のポケットに入っていた携帯が震え、その振動により道路に落ちた。そして、運良く何かにあたり電話に出ることができた。


『篠川さん!こんにちは!』

明るく陽気な声の持ち主、占い師は篠川の今の状況を知ってはいるが無視する。そして、会話を続けた。

『いやぁ、篠川さん。今の生活どうですか?お困りのことはないですか?』


(たくさんあるよ!てか、早くコレをどうにかしろっ)

口を動かせず、声帯も固まってしまったようだ。もちろん、占い師の元にこの声は届かない。(篠川さん、何も話してくれませんね。まぁ、当たり前か)ポケットから煙草を出して吸っていると背後から手が回されていた。


占い師の同僚である。

同じく占い関係の仕事をしており、人気雑誌の星座占いの担当をしている。

首を絞め付ける腕の力は次第に強くなっていく。


「ゲホッ、苦しいです」

「ったく、また煙草吸ってんの?ハーちゃん体弱いんだから、控えてよ」

ハーちゃんは、占い師のニックネームである。本名は後々わかるとして。同僚の女は占い師の煙草を奪いゴミ箱にポイッと放り投げる。


「あっ!まだ、煙出てましたよ!?火事になったらどうするんですか!?ったく、この館もいくらかかったと思ってるんですか?」

と、怒鳴り散らしながら煙草の火を消してゴミ箱に戻す。

「あたしゃ、知らないわよ。安物件の中のライブハウスを改造しただけでしょ?


1000万円もかからないような所じゃない。そんな物件、燃えたって知らないわよ」

そう言って部屋を出て行った。


ハァー、と溜息をつき占い師はキーボードを押して画面を切り替えた。そこには、ブラウンアッシュの髪の少女が映し出される。髪を後ろで束ね紺色のヘアーバンドをしている。その少女も、リセット者だ。今は、県内の高校に通う。制服姿からして学校帰りだろう。

背中にはテニスラケットを背負っている。確か、26歳の人だったかな?10年前の自分に戻ってるんだっけ?

「特に、動きはないか」

最近のリセット者はおとなし過ぎるんだよ。もっと、ふざけた奴が来てくれればいいのに。どの画面に切り替えても、友人とカラオケに行ったり、遊んだり___。占い師の期待する面白い画像は映らなかった。それから数時間おきに動画を確認したが特に何も起こらず。


期待の星、篠川もハーレムコメディ人生を送りやがって。コメディは、もう飽きたわい。とにかく、今は今までとは違うシリアス系を見たいのに。

ガンガン、とキーボードを叩き画面を切り替えていく。これまで、あまりにもイライラが溜まりすぎてキーボードに頭突きしたりクラッシャーしたりと散々な目に合わせてきている。


「どいつもこいつも。このリセットにいくらかかると思ってるんだ。億桁だぞ!?こっちの財布が破損しそうだというのに呑気に暮らしやがって。面白くねえー」

占い師は通帳を手に取る。げっ……今月ピンチだ。

「チッ、ヤバイな。赤字だ____」

占い師は、現在占い師とその他仕事でやり繰りしている。一番の収入は、リセット者の延長である。


すべての砂時計を使い切った後、「帰りたくない」と言い金を払う。その金は一般人が頑張れば出せるかもしれないという量であり、ほとんど準備に消えていく。そして、残りはすべて占い師の自費。


大変な職業なのである。(今月の食費、どうするか____)占い師は、破綻仕掛けのつり橋を現在渡っている。

一歩間違えれば、踏み外しそうだ。




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