42話【美和の正体?】
「まじかよ」
勉強のできる美羽がなんで____。その時、背後から視線を感じ振り返る。
「篠川君、見ちゃったのね。私の真実を。そうよ、私は裏口入学生」
「美和は勉強出来る。だから、裏口なんかしなくても……」
「篠川君。倍率は約20倍。けれども、私はここに来なければならなかった。私立に行かないと、勘当されちゃいそうだったの。良いわよね、篠川君は裏口なんかしなくても入れるから」
昔は、低かったんだよー!今回の俺も「裏口」なのだが……。昔の倍率なんか、0・いくらだぞ!低いんだからな!
「篠川君、みんなには秘密にして貰えるかしら?そうね。中3まで、バラさないでくれない?高校は、ばれた時用に用意してあるから」
「それも、裏口かよ」
とんでもない!と美和が手を振る。俺は胸を撫で下ろした。
「いいえ、高校はキチンと入試を受けるわ。編入試験」
「だよな……」
美和は一歩足を踏み出し、俺の小指に自分の小指を引っ掛けた。
「約束」
美和は「ゆびきりげんまん、嘘ついたらハリセンボン………」と歌い契約をさせた。
そして、また真剣な表情に戻り、釘を打ってから出て行った。指に残る感覚。とんでもない約束をしてしまったが、美和を守るためなんだよな。
俺はモップを床に押し付け、磨いていった。
「約束、ねぇ」
裏口入学生と、裏口入学生の約束。人が聞けば、驚くような話だ。というより、普通はあり得ないだろう。
その時、部屋の隅の窓から視線を感じた。その辺りに目をやると、
「篠川、今の話本当?」
ショートカットの髪に大きな黒い瞳。
人形のような顔立ちの少女、日和は呟いていた。
篠川は絶句してしまった。が、日和を即座に部屋に入れ話を続けた。
「ごめん、盗み聞きするつもりはなかったの。美和さんと話しているのが聞こえて」
「そっか」
日和は俯き、黙り込んでいた。罪悪感を感じているのだろう。
「美和さんは………頭が良いのに……その……」
篠川はモップに顎を乗せ、口を開く。
「裏口入学生、でしょ?」
日和はその言葉に跳ね、危うく転けそうになる。「それ、ほんとう?」とまた呟き俯く。篠川は真実を言いそうになり、口を紡ぐ。さっき、約束したんだ。
「いや、二人でこないだのアニメの話を……」
「嘘だ」
「いやぁ、そのぉ、主人公は裏口入学生で……」
「騙そうとしても、無駄だよ」
日和は顔を真っ赤にして、俺に叫ぶ。それでも、俺はめげなかった。約束なんだ。
「いや、本当だって。主人公の……宏子は、経済的な問題で…」
話している間にも、日和は爆発しかけているのがわかった。でも、どうすりゃ良いんだ。秘密を守ることは、大切だと思う。
日和が単純ではないことも、知っている。
「日和、あっ!学食で好きなランチ奢るから忘れて、ね」
「ランチは、さっきBランチを食べてきました」
額に汗が溜まっていく。
「あっ、売店で欲しがってたノートを……」
「先日購入しました」
また、篠川の額に汗が溜まる。その汗は、少しずつ落ちていく。
「うっ、えっと、あー!美少女アイドルのポスターを……」
「この間、ファンブックを買ったので全種類揃ってます」
顔から汗が出切り、顔が青く変色していく。
「あー!そうそう、欲しがってたペンギンのぬいぐるみSサイズを」
日和は呆れたように、肩を落としショボショボ歩き始めた。最後に、「Mサイズを買ったのでいりません」と呟いて。
「セーフ」
その時、背後から悪魔の声がした。
「約束、守れましたか?」




