37話【命のシナリオは俺が書き直す!】
何なんだよ、高校に慌てて飛んできたのに結果は同じかよ。俺は携帯電話を地面に投げつける。その時、頭を下げた視線の先に人の足が見えたような気がして顔をゆっくりとあげた。
「県警の____です」
風が警察の人間の声をかき消し名前が聞き取れなかった。聞こえたのは県警、の単語だけ。
「御愁傷様でした。少し、署でお話を……」
「ふざけんな!」
俺はその場から逃げ出していた。走って、元来た道を引き返しながら占い師に電話をする。プルプルプル……。呼び出し音だけが鳴り、占い師は出なかった。中2の世界へ戻してくれよ。変わらなかったじゃねーか!涼は、シナリオ通り死んだじゃねーか!舌打ちをしながら走り続けた。
もう1度、俺は占い師に電話を掛けた。しかし、占い師は電話に出ない。
「ざけんな!なんで、出ないんだよ」
ずっと呼び出し音が鳴り響くだけで、状況は同じだった。帰してくれよ、こんな事になるならば涼との生活をもっと大切にしたから…。
その時、目の前が白い閃光に包まれ体が熱くなり、目が眩んだ。
気が付けば、教室にいた。机が規則的に並び窓からは夕日が射し込んでいた。
「ん……あぁ」
時刻は4時56分。もう直ぐ5時が来る。どうやら、中2時代に戻ったようだ。日付を確認すると、時空移動した当日の日付。
「帰ってきたなぁー。ふわぁ」
大きく欠伸をして椅子から立ち上がった。
「未来を変える事は罪、か」
ならば、未来を変えるために戻ってきた俺は罪なのだろうか。
罪と言われれば、罪のようで罪ではないような気もする。
が、頭を使う事が苦手な俺は荷物を持ち教室をノソノソと出て行った。オレンジ色の廊下を歩き、暗い階段を降りていく。パタパタと上履きが床と当たるたび音がなった。1階に降りると、靴箱が見えてくる。
2年生の靴箱の前に立ち、扉を開け靴を取りコンクリートの床に投げつける。
「くそっ」
パタッと音を立て靴が転がった。
「世界は、不公平だよ。なんで、必要とされる人間が死んで、社会から切り離されたような不要な人物が生きてるんだよ!人間のゴミになんで命を与えるんだ」
厨二病が治らないオジサンは叫んだ。
背中に背負った荷物を腕から滑らし手のひらに紐を握らせ、床に投げつける。持っているものを全て投げつけたい気分だ。
「くそぉ……」
そのまま顔を手で押さえてしゃがみ込む。遠くからバレー部の声が聞こえてくる。吹奏楽部の演奏も聴こえてきた。
『ナイスキー!!』
『ナイサー決めろーナイサー』
バンバン、とボールが床を跳ねる音も混じる。次の体育大会にそなえバレー部が練習してたんだっけ?気分転換にでもなるかと、上履きを履き直し体育館に入って行った。熱気に包まれた体育館は、今までに見た事のないような世界が広がっていた。
空中をボールが飛び交い、選手が空中を飛んでいる。
サーブを打とうとする選手が視界の端に見えた。
ブロックする大型の選手も見えた。
必死にボールを拾いに行く選手、腕を伸ばしなんとか返そうとする選手。
Bクイック……Aクイック……。
様々な技がほんの数分間に繰り広げられる。
世界は、違っていた。同じ学校でもここまで違うものかと目を疑う。
いつの間にか、落ち込んでいた心はバレーに夢中になっていた。
勿論、運動オンチの為やろうなどとは思わない。
見ているだけで十分だった。
見ているだけで心はスッキリしていた。
新たな希望も生まれてくる。
涼は、この世界ではまだ生きている。
つまり、もう1度涼を助ける手段はあるのだ。
もう、心の中にモヤモヤは無かった。
その時、背後からバレー部のマネージャーの女子生徒に声をかけられる。
「バレー部の、新入……」
「いっいえ、違いますっ。見学ぅっだけですぅので!」
声が震え、心臓から助けそ求める腕が伸びてくる気がした。俺は鞄を取り逃げるようにして寮へ戻った。




