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36話【救いたい命】

壁にかかる制服。停学処分を食らって、3ヶ月休む事になった。予想より短かく感じたがやはり、生活していると長く感じ始めた。

大量に宿題を出されたが、午前中に終わらせてしまった。いつも通り5時半に起きたため9時過ぎには終了した。


停学中、同級生の奴らとは連絡を控えるよう、と親に言われてしまい篠川や涼と話せない。外出も慎むよう、にとも言われているため『引き篭もりニート』状態だ。


「くそっ」

床を叩き、怒りをぶつけるが何も変わらなかった。漫画やゲーム類も没収、テレビも禁止だ。頭を冷やせ、だとよ。朝の7時に家の固定電話にかかってきた篠川からの話によると、


『誠が殴ったオタク野郎は、擦り傷さえも負っていないにも関わらず事件を大袈裟に話し気に入らなかったから、親を使い停学にさせたということだった。』

怒りに任せあらゆる物を蹴り、殴り破壊する。


それでも、気は晴れなかった。外は青空なのに家の中は、雨が降っているようだ。スコールのような激しい雨。心の中でも、涙の雨が降り傷にしみ込み傷め続けた。



篠川は午前中から上の空だった。普段ならば、明日は休日の為ウキウキしているはずなのだが。休み時間も、1人窓の外を眺めていた。涼も、荒れていた。教室の備品を投げたり、教卓を投げ倒したり……。もしかすると、誠が涼の心の底のものを封印していたのかもしれない。心の鍵_____誠が居なくなった為その鍵が外されてしまった?


涼の心の奥の獣が目覚めた!?篠川は立ち上がった。誰も手出しが出来なくなった(ケモノ)を助けられるのは“俺だけ”と感じたからだ。

「涼、やめろよ。お前が壊れる」

涼の腕を抑え、止めようとするが止まらなかった。暴れるたびに腕が当たったが俺は抑え続けた。

「ゔあぁぁぁぁ」

獣のような雄叫びをあげ涼は俺の顔に頭突きして、廊下へ走っていった。


鼻に頭が当たり出血するが、簡単に止血して直ぐに涼を追いかけていった。

「涼!待てっ!」

(こんな時、誠が居てくれれば…)寄りによって、停学なんて。涼の姿は、いつの間にか消えていた。さっきまで目の前を走っていた筈なのに。肩で息をしながら辺りを見渡す。まるで神隠しのように消えていた。

「……っ!一本道で消えるとか、頭がおかしいんじゃ」

涼の向かったと思われる道は、校舎を繋ぐ渡り廊下だ。窓は全て開かないように設計されており、まっすぐ進んだ先は高校生の教室があった。

しかも、高校生の教室のある校舎とは扉で分断されており鍵がかけられていた。


「アイツ、まさか」

あり得ないとは思うが、神隠しもしくは、俺とは違う方法でタイムスリップを……。俺は携帯電話を出して占い師に電話をかけた。呼び出し音が数回鳴った後甲高い声が俺の耳をつん裂く。

《ハイハイハ〜イ!どうしました?どうしましたっ?サポートならば、サポートセンターにお電話することになってますからねぇ》

「おい、占い師!ハァハァ……俺とは違う方法で、時空を移動する方法ってあるのかよ!?」


しばらくの間沈黙が流れたかと思うと、紙をめくる音がした。そして、何かをブツブツと呟いているのが耳に入った。

《3つ、ありますね。1つは、『闇の占い師』の力を借りる。2つ目は、その方が能力を持っていた。3つ目は………》

「3つ目!?教えろっ!はやくっ」

《3つ目は、いや、残り2つですね。1は、校内に能力者がいる案と2は、たまたま時空移動したとしか……》

「まじかよ」

俺は座り込み、占い師に頼み込む。

「涼を、追わせてくれ。戻らせてくれ、今からなら遅くない筈だ」

《今、涼さんを追っています。GPSを付けているので、位置情報機能がオフになっていない限り……いました!》

占い師の声に俺は、ガッツポーズをする。が、

《今、涼さんは……バイクに乗っています》

俺の頭の中に最悪の結末が浮かんだ。涼が、バイクに乗って事故を起こす。という事は、高校時代に飛んだのか。


「高校時代に、飛ばしてくれ。あの日、事故を起こしたあの日に飛ばしてくれ」

俺は携帯電話に向かって叫んだ。未来を変える結果でも、俺は助ける。これが俺の早とちりだったとしても構わない。

「俺は、帰る前に何かしたかったんだ!俺が死んでも構わない、だから涼を助けてくれ」

俺が叫び終えると、占い師は頷き準備を進めた。そして、篠川の前に扉が現れる。俺は迷わず、飛び込んだ。



涼は、気がつくとバイクに乗っていた。制服を着ており高校生の教科書をリュックに入れていた。いつの間にか、高校生になっていた。が、

「中学時代の夢を見ていたのか」

と思い込みトンネルに差し掛かった。その時、背後から誰かが呼ぶ声が聞こえ涼はバイクを路肩に止め、振り返った。そこには、制服をきた篠川がいた。

「篠川じゃん!どうしたの?篠川、寮じゃねぇのか?反対方向だろ?」

篠川、俺は腕時計を見ていた。涼が死亡するまで残り1分の時だった。間に合ったのだ。俺は、適当に話を合わせ涼を引き留めていた。


しかし、

「そろそろ、行かねぇと遅刻だわ。篠川はどうするの?」

涼が話しながらヘルメットを被っる。そして、バイクにまたがりエンジンをかけた瞬間、姿は消えていた。代わりに大型のトラックがその場に止まっていた。ブレーキをかける事なく突っ込んできたトラックは、また走りだしフラつきながらトンネルの向こうに消えていた。


俺はとっさに携帯電話でナンバーを撮影して涼の元へ駆け寄った。


道路には、凹んだバイクと血だらけの涼がいた。バイクの部品があちこちに飛んでいる。急いで警察に電話を掛け救急車も呼ぼうとした。が、

「しのぉかぁわぁ。よばぁなくてぇええで。どうせぇ、しぬんやで」

首の骨が折れ、全身おかしな方向に曲がった体を見れば誰も助かるとは思わないだろう。出血量も酷かった。しかし、俺は呼んだ。助かる可能性は、まだ消えていない。

もし、俺がもっと涼を止めていれば……。話を続けていれば。


結局、何も変わらなかった。数分後救急車と警察が駆けつけると、俺は警察に車のナンバーと事故の状況を伝え占い師に電話を掛けた。

「俺、助けられませんでした。せっかく、飛ばしてもらったのに……」


『彼は、幸せだったのでは?本来ならば、”一人で”死ぬ予定だったのですよ?そこを、彼は篠川さんという友人と共に最期をを迎えられましたから。それに、あなたのおかげで救急車と警察も来たではないですか。本来ならば、何の手当てもなかったのですよ』

「でもっ!俺は、何をしに来たのですかっ。助けに来たのに、ただの目撃者ではないですか!」

占い師は黙り込んだ。そして、電話の向こうで何かが折れる音がしたかと思うと、

『では、質問です。未来を変えることは罪だと思いますか?』

「罪ではない、と思います。それで助かる命もあると思います」


『不正解です。今、この世界がこれで成り立っているというのに、未来を変え、死んだはずの人間を生き返らせた時、例えば仕事という枠に元々入っていた方達がいます。しかし、生き返った人間が加わると仕事を追い出される人間も増えます。今で、枠が一杯なのに増えてしまうと溢れてしまうのです。社会は________壊れます』


確かに、そうかも知れないけれど……。

『つまり、罪です。社会を、壊した罪』

「でもっ!人を助ける……!」

『では!私はこれで!』

占い師は、電話を切ってしまった。涼………。






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