33話【居眠り珍回答】
気がつけば、外は明るくなっていた。雀が鳴きながら空を飛んでいく。
「ふんなぁ……」
重たい頭を起こすと、辺りには制服を着た男女が授業を受けていた。その生徒たちの前には、教師が立っており黒板に文字を書いていた。
俺も、同じ制服を着て目の前に皺くちゃになったノートを置いていた。
「帰って、来たのか」
そう、呟きながらシャーペンを取り、欠伸をしながら黒板の文字を板書していく。カリカリ、とシャーペンを走らす音だけが響き私語をするものは居なかった。
目の前では、美和がノートをキチンと取っている。横では誠や涼が黒板を見ながら欠伸をしてノートに落書きをしながら授業を受けていた。誠は、特に授業を受けなくてもソコソコ点数は取れるからいいものの、涼は授業を受けなければ赤点になる。
そっと、誠のノートを覗くと真っ白なノートの紙の真ん中にグチャグチャとシャーペンを回して、幼児の絵の様なものを描いている。涼はノートの端に画力0の女の子を描いていた。絵は、顔だけがキチンと描かれており体の方は、棒人間状態。
「……お前ら」
呆れながらも、2人の机を叩き『此方の世界』へ帰って来させる。涼は、すぐに戻ってきて、はにかみながら頭を掻きノートを取り始めたものの、誠は中々戻って来なかった。まだ、シャーペンでグチャグチャと絵を描いている。
「………誠!ヤバイって!」
俺が少し机を揺らしても、まだボケーと魂が抜けた様な顔をしてグチャグチャと描いていた。その時、パシンと空気を切る音がしてシャーペンを動かす手が止まった。
驚いた顔の誠が見上げると、社会の教師が教科書を持って立っていた。叩かれた腕を抑えながら誠が「あわわわ……」と焦っていると、
「続き、教科書P158の問題。『南北に分断された朝鮮半島の北部に成立した国名は?』」
誠は、慌てて教科書を開くが、
「大河、それは地理の教科書だ。今は、歴史の時間。仕方ない、次。涼、答えろ」
いきなり当てられた涼は女の子を消しゴムで消して、教科書を持ち立ち上がった。そして、パラパラとページをめくり目をグリングリン動かしていく。
そして、
「朝鮮」
と答えた。が、不満そうな教師の顔を見て慌てて言い直す。けれども、噛んで噛んで呂律が回らず言えなかった。諦めたように、教師は美和に当てた。美和は、淡々と答え、席に着く。
「朝鮮民主主義人民共和国、です」
ガラッと椅子を引いて俺の前に腰掛ける。その後、コツンと額を叩かれた2人は涙目になりながらノートに「朝鮮民主主義人民共和国」と書いていた。が、教師に、
「それだけ書いて、どうするんだ?」
と言われ、2人はその下に教科書の本文を写していった。
美和は、クスッと笑い口の前に手を持って行き吹き出すのを抑えた。日和も、ふふっと笑い目を細めていた。




