32話【再び楽しい中学生活へ戻ろう!】
気がつけば、タクシーにまだ乗っていた。近くのバス停の看板を見ると見知らぬ街だった。しかし、タクシーは動いておらず路肩に停められたままになっていた。
俺は急いで運転手を探した。すると、近くのベンチでペットボトルの飲料水を飲んでいた。深い緑色の制服の男は大きな欠伸をしながら。
「あのぉ」
俺が運転手に話しかけると、右手を上げ俺を隣に座らせた。
「お客さん、寝ちゃうもんだから行き先わからないじゃないですか。料金も半端ない値段になってましたし」
「すっ、すみません。では、ホテルまで」
俺は運転手にいままでの代金を支払い近くのホテルまで乗った。そこで追加の料金を支払いホテルに入っていった。
ホテルは、知らない名前でそこまで大きくない。薄汚れた外観は、イマイチな雰囲気をかもし出している。
部屋の鍵をロビーで受け取ると、鍵に示された部屋に入っていった。すると、電話が鳴った。
「もしもし。篠川です」
電話の相手は、占い師だった。
『最近、良いこと起こらないでしょう?また、戻りましょうよ』
占い師の言葉に、俺は「はいはいはいはいはい!お願いしますっ」と叫び顔の見えない相手に頭を下げていた。
『では、そちらへ行って直接飛ばしますので少々お待ち下さい』
俺には、その言葉の意味が理解出来なかった。《直接飛ばす》?《そちらへ行く》?どのワードも意味が不明だった。
その時、部屋のインターホンが鳴り響いた。さすがに、早く着きすぎだろうと思いながら扉を開ければ、案の定従業員だった。
『お客様に会いたいという方がロビーにお見えですが』
そっち系か!俺は部屋の鍵を持ち、靴を履き鍵を閉めロビーへ向かっていった。階段を降りた先には紅カーペットが敷かれ、豪華な椅子が何脚も並んでいた。
その中に、一人だけ怪しい人物がいた。あいつが、《お客様》か。
「篠川、です。何のご用件でしょう?」
俺は相手の向かい側の椅子の横で話しかける。が、何も喋らずただ、椅子を勧めるだけ。俺は椅子に頭を下げながら腰掛け、もう一度同じ質問をした。
すると、マントのような黒いフードを被った人間は、いきなり俺の手を取った。
『貴方が、篠川さんですね!?』
その声には、聞き覚えがあった。占い師の男だ。
『占い師です。お会いできてとても嬉しいです。初めて、直接お会いできましたね!』
女のような喋り方だが、いままで男と信じてきた。が、俺の手を握っている手は綺麗で爪の手入れがキチンとされていた。どっちなんだ!
男or女?こういう際は、単刀直入に聞いた方がスッキリするかもしれない。
「あのぉ、失礼ですが性別は……?」
すると、占い師は高笑いをして、
『よく、聞かれるんですよ。アハハ。
その辺は、深く足を踏み入れない方が良いですよ。
貴方の為ですから。アハハ』
答えてもらえなかった。一体、どっちなんだ。もし、俺の知り合いだとすれば検討がつけやすいのに。
『貴方の考え、当たっているかもしれませんね』
「え?」
俺は、目を見開き占い師を見つめた。どういう事だよ……。
『そうですね、何から話しましょうか。どうです?会社員に戻って』
「疲れますよ。今日だって……」
その時、俺の口を占い師は手で塞いでいた。
『話さなくても、見てますから』
なんだか、天使が降臨したような感覚に襲われた。
何だ、こいつ。良いやつじゃないか!
『そうですね、疲れますよね。では、戻りますか?』
占い師は、イキイキとしていた。はい、そう俺はつぶやいた。すると、契約書の様なものをマントから取り出していた。
『では、ここにサインを』
それは、契約書だった。何項目かあり、全てに記入するそうだ。
1.絶対にリセットの事を話さない(わかりました・いいえ、嫌です)
2.しばらく居なかった期間は、病気と言うこと(わかりました・いいえ、嫌です)
3.深い仲になり過ぎないこと(わかりました・いいえ、嫌です)
これ、了解しないといけないんだよなぁ。そう呟きながら、スーツのポケットからボールペンを取り出し俺は全てわかりました、の方に丸をつけ最後にサインをして母印を押した。
「ありがとうございました。契約成立、では行ってらっしゃい」
俺は占い師に頭を下げて、あの世界へ旅立っていった。




