29話【続くハーレム】
コーヒーが、底に少し溜まっている。なんだか、もう飲めない。いつもならば、ゴクって言ってる頃なのに。
「なんだろねー」
携帯電話をポケットに戻し、篠川はグッと伸びをした。いざ、戻ってみれば暇なもんだ。半分追い出し部屋にいるような物。チッと舌打ちをして、ポケットから煙草を出す。
その時、また頭を殴られる。バサっと音を立て俺の脳細胞が破滅する。
「篠川、コーヒー飲んでないでショルイを仕上げろよ!」
また課長に叱られる。(ウザイうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざい)俺の時間を邪魔しないで下さい。
カップをキッチンに戻し、デスクに戻る。目の前に広がる書類の山。
「篠川君、それさ篠川君が眠ってる間に溜まったんだよ」
背後の方から声がする。振り返ると………????
「みっ……美和?」
「何?私の事忘れたって言うの?ずっと、背中合わせに仕事して来ましたけど?」
肩まで伸ばした髪を揺らしながら、体を乗り出す。茶色に染めた髪の毛を指に絡ませながら鋭い視線で俺を見つめる。
「いや、覚えてるとも」(嘘だろ?美和は中学から一緒だったのかよ)
「中学から、会社まで同じなんて凄いよね」
そうだったんだ。
もう一度、前へ向き直り書類と睨めっこする。(うぅ、怠い)書類にボールペンを走らせていると顔の横に、もう一つ顔が現れた。美和だ。
「篠川君、今書いている書類は明後日最終提出。その隣のは今日までなので、隣のからやった方がいいですよ」
いつも、美和は的確なアドバイスをしてくれる。おかげで、こないだの商談も成功している。
「ありがと」
そう言って、隣の書類から目を通していく。今回も、助かったよ。
「もし、駄目だったら一緒に残業してあげるから安心して。まぁ、変な安心してヤラナイとかはナシ。しっかりやってね」
そう言って、美和はパソコンのキーボードを高速で打ち始めた。残業を一緒にしてくれるなんてドンダケ天使なんだよ。
俺は、また書類を終わらせた。残り、30冊。
「篠川君、言っとくけど手伝う時は、電車賃と居酒屋代を出してね。終電逃したら、タクシー代出してね。手伝ってあげてるから、それくらいはしてよね」
そう言って、ポンとプレッシャーを俺の肩にのせてくる。ブルッと震えながら、俺は頷く。
「篠川!」
棚を挟んだ向かい側から、アイツの声がする。
「なんだよ、日和」
「私が先日渡した書類は出来たのか?」
勿論、できていない。篠川は真っ白の書類を日和に渡す。そして、両手を合わせ日和を拝む。
「全く、甘え過ぎです」
そう、言いつつ日和は篠川の書類を仕上げてくれた。俺の後ろから、美和がブーイングを言う。
「日和は、甘過ぎ!甘過ぎて、甘過ぎて、砂糖よりも甘い!」
ビシッと、美和が日和を指差す。そう言い、手の上で砂糖菓子を転がす。そして、口の中に放り込んだ。
「日和が、篠川に甘いからそんなのになっちゃうじゃない!」
「私のせいではないです!ねぇ、篠川」
また、二人の喧嘩が始まった。年の差は、どこに行ったのかねぇ。




