25話【刑法235条窃盗罪10年以下の懲役又は…】
冷たい風が吹く校門前に、俺の姿があった。隣には、爆走した俺を追ってきた日和もいる。
「走るなら、言ってくださいよ……。ゼェゼェ、いきなり飛び出すのでびっくりしましたよ。腕が折れたかもしれないのに」
肩で息をしながら顔を真っ赤にして汗を流している。
「ごめん、ごめん」
日和に謝り正面を見る。そこには俺達だけではなく生徒指導部の教師も立っていた。
「なぜ、勝手に出たのですか?」
先程、正直に『命の期限が切れそうでした』と言うと、「これだから厨二病は嫌いなの」と言われてしまった。正直に答える俺のようなバカもどうかと思うが、こんな教師もどうかと思う。日和は、イヤホンをしていた為何も聞いてはいなかった。ちなみに、外出許可を日和は得ている。日和を見た生徒指導部の教師は、
「道端で聞くなんて危ないですっ」
そう言って、取り上げてしまった。涙目になる日和。あの中には、大切なボカロ曲が入っているのだ。3年半かけて集めたボカロ集。それを奪われてたまるか!教師に飛びかかり、イヤホンを掴んだ腕を伸びた右手の爪で引っ掻き、奪い返す。びっ、と手を動かし自らの耳にイヤホンを戻していた。
「刑法235条。窃盗罪。10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です」
驚いた教師は、俺たちを押し込むように校内に入れ校門へスタスタと戻っていった。
なんとか、校内に入る事ができたが減点となってしまっただろう。脱走したもんな。どんどん、減点が増えている。しかし、まぁ仕方がない事だし。
振り返ると、校門前でさっきの生徒指導部の教師がどこかのクラスの担任と会話をしているのが見えた。四角い皺、だらけの顔が、何やら複雑に歪んでいる。
俺は、ジッとその話に耳を傾けた。耳に飛び込んでくる雑音とともに、会話も少しずつ入ってくる。
「まったく、厨二病は嫌だわ!」
「仕方ないですよ、思春期ですから。そのうち、自然と治ると言いますしまぁ、様子を見るのが一番でしょう」
「でも、脱走……」
「仕方ないですよ、そういう者でしょう。そういう事もしたくなる物です」
笑うと、目が細くなる眼鏡のデブ教師。坊主頭には白いタオルが巻かれている。手には、スコップを持ちブルーのカッターシャツを土で汚していた。
花壇の花の植え替えの担当のようだ。花壇には、その他多数の生徒も顔やジャージを土で汚して作業をしていた。
篠川は、その場を離れ靴箱に上履きを取りに行った。まだ、時間は休み時間だった。
日和は、ソクサクと靴を履き替え教室へ歩いていく。早足の日和のバックのキーホルダーは、激しくブンブンと揺れている。
「日和っ」
俺は、日和の後を追う。途中で振り向いた日和は、舌を出し目に指を当て、「べー」と笑うと教室へ全力疾走で走っていった。
しかし、途中で『痛いっ』と腕を抑えて立ち止まりながらも、足を動かしていた。




