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23話【骨折救出】

ギシッ、ギシッ、ギシッ。その音は、上に上がるにつれて大きくなっていく。不気味に感じた俺は、少し立ち止まり今来た道を振り返っていた。目の前に広がるのは、あの錆びた裏階段だけ。


特に、変わったものはなかった。内心、ホッとして俺はまた次の段に足をかけた。その時だった。キィーーーーと、耳を劈く様な嫌な音が鳴り始めた。俺は、さっきと同じ様に何も無いだろうと断定して次の段に、足を掛ける。しかし、途中で異変に気が付いてしまう。


「なんか、変だな」


階段を上っていたはずが、目標の裏口から遠ざかっている気がするのだ。その上、足元がグラついている。さすがに、オカシイと思い辺りを見渡すと、目の前にはさっきまでの壁はなく、青空が広がっていた。


最初は、目の錯覚かと思ったが何かが違う。その景色は、錯覚よりもハッキリしていて立体的だった。頭の中に、嫌な考えが浮かぶ。(俺、今階段………)続きを考えようとした時、体の横、数メートル横で何かが折れる様な音を発していた。グガガガガ……バキッバキッ……ガーン。最後に、鐘を叩く様な音が鳴った後俺の体は地面へ吸い込まれていった。


自分でも訳が分からず、こんがらがっていた。耳の横を物凄い勢いで風が通り過ぎ、上空へ飛んでいく。重たい頭が下側となり、大変危険な状態だ。必死に、手を伸ばして何かを掴もうとしたが目の前には、空気しかなかった。空気を握り、悔しさに顔を歪める。


「死ぬのかよ……。リセットしにきて」


辺りには、誰も人がいない。救急車を呼んでくれる人間はいない。つまり、死ぬ。サイゴの覚悟を決めて俺は目を閉じた。自分でも、気がつかないうちに願っていたのだろうか。俺の体は、砕け散る事はなかった。瞼の裏に描いていたグロシーンはどこかへ行ってしまったようだ。


体が地面にぶつからない異変を感じ、俺は目を開けた。もしかして、痛みを感じない死に方をしたのだろうか。それなら、嬉しいのだが。

目を開けた俺の前には、あの青空が広がっていた。終わりの無い、青空が。


「えっ………」


ここは、地上なのか?地球なのか?俺は、なんで生きて……


頭の上から、苦しそうな唸り声が聞こえてくる。女?見上げると、そこには日和の顔があった。


「日和?」


「篠川!間に合って、良かったです。私、実は寮に英語のテキストを忘れてしまい許可を得て取りに。寮が見えた時に、貴方が落ちかけているのを見て自殺は救わない主義なのですが自殺とは断定できず、助けに来ました」


汗を流した顔で笑顔を作り、俺に向ける。俺は、日和に地面に降ろしてもらい足を動かした。(生きてるよな?生きてるよな?)地面を何回も踏んで、生きていることを改めて知る。


「日和、俺60キロ超えてるけど重くねぇのか?」


あの高さから落ちたにもかかわらず、日和が俺をキャッチしたことがオカシイと思う。1キロの物を、10メートル落としただけでもtを超えると聞いたことがあるのだが?俺の、聞き間違い?


日和は、一瞬戸惑った顔をしたが直ぐに、計算を終えハッという顔をする。慌てて日和は自分の腕を確認すると、


「痛い!」


両腕に激しい痛みを感じた。電気が走った様に痺れている。夢中になっていたため、腕の痛みに気がつかなかったよう。篠川が駆け寄り、心配そうに覗く。


「腕……折れました」


日和は篠川に皮肉を込めて伝えた。

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