表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/303

1話 【落ちこぼれ会社員の俺】

篠川(しのかわ)は、溜息をついていた。短い髪の毛には、薄っすらと汗がにじむ。



最近は、何もかも上手くいかない。何をしたって怒られてばかりだ。こんなことならば、人生をリセットしてみたいものだ。


子供の頃から、また開始すれば楽しい事ばかりだったはずだ。しかしまぁ、大学を卒業後社会人になり、稼ぎ始めるとこんなにも生活は変わるものか。


ゲームと睨めっこしていた俺は、今は大量の資料と睨めっこだ。家に帰れば、誰かが迎えてくれていたが今では自分自身の影が俺を迎える。


溜息ばかりが、耳に響く。だれか、こんな俺を救ってくれはしないだろうか?

夏になり、クールビズがやって来ると社内には半袖が目立っていた。


それでもまだ、長袖はいる。暑くないのだろうか?俺なんか、蒸し暑くてデスクにミニ扇風機が3台も完備されている。


「おい、篠川!」

また、課長のお呼びのようだ。嗚呼、憂鬱だ。誰か、俺を救ってくれる人間はいないのか?課長のデスクまで歩くと、俺の前に紙の束を勢い良く叩き下ろした。


その衝撃にデスク上の文房具が揺れた。

「駄目だ。やり直し、こんなの上に提出できるわけがないだろう?」


汗ばんだ額から悪臭を放つ課長。こんな人間、消えて仕舞えばいい。また友人に注意された『死神発言』をしてしまった。

「すみませんでした。今日中にやり直します」


【真面目】な俺は、そう答えた。紙の束を受け取り、またキーボードを打っていく。なぜ、俺がこんなことをしなくてはいけないのだ?こんな人生を歩むのであれば、叶うはずもない夢を追いかけている方がよっぽどマシなきがする。


昔は、プロ野球選手になるのが夢だったっけなぁ。草野球をして…………。

いつの間にか、目から涙が溢れていた。俺は、何やっているんだ?昔話を思い出しても、この先は何も変わらないのになぁ。


革靴を脱ぎ、脚をデスクにのせて背もたれにもたれて伸びをする。

タクシーを呼び止め、乗り込む。終電を逃してしまったためだ。

しかし財布を見て驚いた。自宅までの料金が足りないのだ。


このままでは、家の数キロ手前でアウトだ。銀行へ走って下ろしに行きたいところだが、近くには建物すら見当たらない。(嘘だろ………)


なんて、ついていないんだ。仕方なく、タクシーを降り歩き出した。ここからだと、何時間かかるだろう……


スーツで、歩けるわけがない。スーツなんかで歩いて仕舞えば、家で倒れてしまう。うん、死んでしまう。ぽっくりと。


どうするべきか……どこかのホテルに泊まるべきかもしれない。いや、この辺りに建物はないのだ。


「どうするか……」


もう、死も覚悟で歩くしかないな!上着を脱ぎ、腕にかけ革靴にギュっと足を押し込み歩いていく。


暗い夜道はとても怖かった。大人でも怖い程、街灯もなく暗いのだ。心配性の俺は、カバンで盾を作り、いつ襲われても大丈夫な態勢をとる。


「……ドコカラデェモ、カカッテ……コイ」


震える声。いや、これは心配性ではなくただの『怖がり』なのでは?自分の中で、そんな答えが出てきても、俺は『心配性』を貫いた。


自分の靴音でも震えている。


「帰ったら、ビール飲むか……」

頭の中に、ガラスのコップが現れ、ビールが注がれていく________

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ