102話【事件4・倒れる・】
ズチャッ、と音がして雨に濡れて光る地面に美和は崩れ落ちた。
篠川は呆然として携帯を握った右手をダラリ、と下げ俯いている。
「嘘、だろ………」
口元を抑え、美和は屋上に座り込み、手をつき「あ、あ、……」と呟いている。
まだ通話中の携帯から声が響いている。
《途中でさ、苦しみ出して………ってアスカ!聞いてるのか!?》
「ごめん、直ぐ行く」
ピチピチ、と水が溜まった屋上を歩き、ドアを開けて篠川は美和と共に降りていった。
会場のドアを開けると、既に警察が到着しており、滝本の姿は何処にもなかった。
辺りを見渡し、誠を探すと椅子に座りペットボトルの水を飲んでいる。
「誠!」
「あー、シノ」
誠は酔っているようで顔が赤い。
ふわぁ、と欠伸をして篠川を見る。
「何が、あったんだよ」
「ん?あぁ……まぁ、心臓発作かなんか良くしらねぇけど、いきなり倒れてさ」
心臓発作で警察まで動くかよ。ありえねぇだろ。
『他に何か』あるから動いたんだろ?
心臓発作だけならば、救急車だけ来ればいいだろ?
「大丈夫なのか?」
「さぁな。だいぶヤバいんじゃない?医学部にでも行った奴に聞いてくれよ。俺より詳しいだろ?」
「あ……篠川君、私達は関係ないよね?」
背後から声がして振り返ると、美和が引き攣った笑顔で立っていた。
篠川はぎこちない笑みを浮かべて、首を縦に振る。
すると、よかった、と美和は笑い誠の横にストン、と腰掛けた。
「あれ?涼君は?」
美和はキョロキョロ、と辺りを見渡し目を丸くする。
本当だ、と他のメンバーも不思議そうに首を傾げた。
「ん?………本当だ、居ない」
「ふわぁ、ん……帰ったのか?」
そっかぁ、と美和は笑いんー、と伸びをする。
そういや、滝本が倒れたのにみんな平気な顔してるなぁ。
まだ実感が湧かないとかだろうか。
辺りにいる参加者も電話をしたりゲームをしたり……。
まぁ、流石に笑ってる奴は居ないけれど。
こんな事件には関わりたくないと思ってたんだけど。
まさか、同窓会で関わっちまうとは。
「心臓発作だけなら帰らせてくれてもいいと思うけど」
誠はふぅ、と溜息を吐き頬杖をついた。
「俺、バイト入ってるんだけど……店長に電話するの嫌なんだけどなぁ」
「遅れるよりマシだろ?」
篠川に言われ、渋々誠は会場から出て行った。
ドアを開けて廊下に出て、携帯の電源を入れて電話帳を開く。
そこで大っ嫌いな店長の名前を探して電話をする。
呼び出し音が鳴り響く間も体は震えっぱなしだ。
プツッ、と音がして相手の声が耳に入ってくる。
《もしもし》
「あ………テッ、店長ですか!?大河です」
《あ……あぁ、んで如何したんだ》
ブルリ、と震えながら本題に入る。
「実はですね……」と言いながら冷や汗をかき、全身が凍ってしまいそうだ。
「バイト、今日お休みさせてください!」
心の中で(うわぁ)と叫びながら目を瞑り、答えを待つ。
《あぁ?なんでだよ!》
(いつも通り恐ろしい)
「あぁあ……その、事件がありまして!」
《事件かよ……フンッ、まぁ今度代わりの日出ろよ……プツッ、ツーツー》
(今日は優しかった……)




