100話【事件2・到着・】
「私だけ、浮いちゃったら嫌なの!」
「皆んな、そんなもんだよ」
キーを差し込み、エンジンを掛け出発する。
車の通りが少ない道を選びながら会場へ向かう。
「ねぇ、時間大丈夫?」
心の中で舌打ちをしつつ、時計を確認してわざとらしく激しく頷く。
「良かった」、と美和は笑うと車窓から見える流れる景色を眺めていた。
まだまだ、会場までは時間がある。
「ねぇ、なんか曲無いの?」
美和はガサガサ、と車の至る所をあさっている。
CDを探しているのだろうが、残念ながら車に乗せてはいない。
出てくるのは使われずに、埃をかぶった地図やよく分からない説明書ばかり。
篠川は左手で美和の手を止め、携帯電話を取り出し音楽のアプリを起動させる。
「おっ!なんだー、音楽プレイヤーのアプリ入れてたんだ!」
美和は携帯電話を奪い取り、曲を選曲していく。
電子音が車内に響き、美和の鼻歌も混じり大合唱が始まる。
篠川の眉間に皺が寄り、舌打ちが聞こえてくる。
「ふふんふーん、ふふんーんふーん……」
「鼻歌やめろって。音外れてる………残り、10分位だからな」
はいはーい、と美和は機嫌良く返事する。
その時、歩道から視線を感じ篠川は徐行して、端に停車させる。
美和は突然の出来事に右手で停止ボタンを押して、「ん?ん?」とパニック状態だ。
篠川は後部座席に身を乗り出し、ロックを外してドアを押し開ける。
すると、コツコツ、と音がして薄い緑色の裾の辺りが膨らんだワンピースを着た日和が顔を覗かせる。
「良いんですか?」
「あぁ、美和も良いだろ?」
美和の方へ目をやると、リスのように頬を膨らませて顔を赤くしていた。
日和は車内を見渡して美和に笑いかけると後部座席に乗り込んだ。
「ありがとうございました。実はバスに乗り遅れてしまって、たまたまお二方が車に乗っているのを発見した所、乗せて頂き本当に感謝します」
「良いって良いって」
篠川はまた、車を走らせる。
ガタガタ、と凸凹道を走る車の中で日和と美和の見えない火花が飛んでいるのがわかる。
(頼むよ、誰か来いよ……誠か涼か)
「あー、ちっ、地下ちゅううしゃっじょう停めてくる!」(地下駐車場)
また、道の端で車を停車させ追い出すように2人を降ろすと、車をまた走らせた。
「篠川さん、ありがとうございました」
「アスカくんーありがとー」
開いた窓から2人の声が聞こえる。
音楽を切り、地下駐車場へ停めに向かった__________
会場へ着いたのは約束の時間より1分遅れた頃だ。
日和とは別れ、篠川は誠と涼と再会する。
といっても、数日前まで会ってたのだが……。
「うわぁぁぁあぁ!アス……シノに身長負けタァ!」
と、叫ぶのは誠。
アタフタ、と篠川と自分の身長差を確認する。
ニタニタ、と涼は笑いながら、
「アハハハー」
と声を出す。
………ん?なんで、涼がこの時代に生きてるんだよ。
死んでるハズじゃ…………。
何が起きてる!?
「そうだ!シノ、華山が来てるよー」
え?と、笑いながら辺りを見渡すと本当に華山が会場に来ていた。
白いジャケットに、黒いシャツを着た長い髪の華山がそこに、居た。
「な……んで……」
篠川は目を丸くして華山を見る。
「あー、華山さ、なんかここで働いてるらしいよ」
「ちげーよ、涼。バイトだよ!バーテンダーやってるんだろ?」
ギャハギャハ、と2人は笑い、また肩を組む。
その時、華山が篠川に気がつき走ってくる。
「篠川じゃん!わぁぁ!ねぇねぇ、今何してるの!?」
華山が篠川の首に腕を巻きつけ、うまく喋れない。
そのせいでなんか、『張り付いてます』。
「くるしぃ……うわぁ……か、っしゃれ、はた……いますぅ」
「うわぁ!先輩!アスカちゃんが窒息死しかけてますっ!」




