動揺
ブーブーブー。携帯のバイブの音で俺は目を覚ました。光からの着信。
「もしもし…。はい。」
寝ぼけながら俺は、電話に出た。
「洸ちゃん?また寝直してたの?よく寝るね?」
クスッと笑う光。俺はこいつのこういう優しさ混じりの笑い方好きなんだよなー。……すきっ…だったのか…。また泣きそうになった。
「俺は寝なきゃいけないんだよ。そういう生き物。はは。」
俺は冗談混じりにそう呟く。そうでもしないと泣きそうだから。
「そんな人間いませーん。あはは。洸ちゃん?どうしたの?なんか無理してない?気のせい?」
「気のせい。元気。寝起きなだけ。ありがと。」
流石にずっといるだけあって鋭い。もう少し光と向き合う時間が欲しい。
「起こしてくれてありがとうな!やべ、夕方すぎてんじゃん。洗濯物とか色々やりたいこともあるし、切ってもいい?」
「あ、そうなんだ。そっち行って手伝おうか?」
「いや大丈夫。ありがと光。んじゃまた後でメールする。」
そう言って、俺は一方的に電話を切った。家事とか嘘。いやまあやらなくちゃいけないけど、とりあえずなによりいま、光の声まともにきけねーや。
<ちょっと洸ちゃんいきなり電話切るとか!!もー!ちゃんと後でメールしてよね!>
光から怒りのメール。そらそうだよな。ごめんな光。
<わりー。光トイレ漏れそうだったんだよ!んじゃまたあとでな!>
軽く流してしまった。まーこれが一番の逃げだ。俺はポケットにけいたいをなおして洗濯物でもかけようかな?と思いパッと立ち上がるとポケットから携帯が落ちた。そのタイミングで着信音。
「ん?流石に光おこったかな?」
光だと思い込み電話を取りかけて、川西さんからの電話でまた携帯を落としそうになった。
「も、もしもし!どした!」
声が裏返った。我ながら恥ずかしい。そういえばメール途中で俺ねたっけ?返したよな?
「河原さん?川西です。すみません。昨日といい今日といい。お休みなのにすみません。彼女さんといましたか?」
こんな時に配慮しなくてもいいのだが。
「大丈夫だよ。実はさっきまで寝てた!はは。とんだお寝坊だろう?んでどした?」
「河原さんごはん行きません?昨日のお詫びに。」
すこしかたい声で川西さんは呟いいた。なんか悩んでんのかな?とかをすっ飛ばしてうれしすぎて叫びそうになった。俺は失礼なやつだ。恐らく悩んでいるのだろうに。それでもウキウキが止まらなかった。小学生か。自分の感情の変化にびっくりする。俺ってこんなにげんきんな奴だったのか。
「うん。いいよ。川西さんの最寄り駅まで行くね。」
頑張って冷静を装って言った。
「本当ですか?!ありがとうございます!ふふじゃ駅で待ってますね!」
川西さんは元気な声で嬉しそうに笑った。電話越しなのに顔まで想像できた。俺はもう完全にこいつに惚れてるんだろうなと思った。
「おう!んじゃまた後で!すぐいく!」
いつものマイペースな俺が想像もできないようなスピードで用意を済ませて出た。こんなにもドキドキしてこんなにも楽しみなのはいつぶりだろうか。俺は川西さんの最寄り駅まで超急いでいった。
早く会いたいその気持ちを抑えられずに。
川西さんの最寄り駅について降りると、もーすでにいた。はえーよ。と思いつつニヤケを必死にこらえた自分がいた。
「おっす!」
よっ!と俺がするとお前はニコッとして、
「おっす!」
と敬礼ポーズをして言い返してきた。
不意打ち。何それ可愛すぎるんだけど。赤面を隠すのに必死で俺は俯いた。そしたら今度したから覗き込んでくるものだから、目のやり場に困った。
「と、とりあえず、何食べたいんだよ。てか彼氏さんはおこらない?大丈夫?」
そういうと一瞬曇った顔になったがすぐ笑顔になって、
「大丈夫ですよこんくらい。」
と、めいいっぱい強がる。そんなことしなくたってすぐわかるんだけどなー。わからないふりをして、
「そっか!んじゃ何食べんの?」
と、元気に返してみた。そうだよな俺は悪い奴だよ。お前がここにいてくれるだけで嬉しいなんて、不謹慎にも思ってしまうんだから。
「ラーメン!」
「またラーメン?好きだねー。川西さんのラーメン好きにはあっぱれだよ。」
「へへ。大好きですよ。」
あー、これちょっとドキッとしてしまった。俺に言ったわけじゃないのに。
「じゃー今日は違うとこ行ってみよ。」
そう言って俺たちはラーメン屋に歩き出した。こうしてたらカップルだよなー。とひとり勝手に思いながら。…。




