気持ち
今日はなんだかぼーっとしっぱなしで、結局きがつけばバイバイの時間になっってまった。光を家まで送ってくると俺は申し訳なさそうにつぶやいた。
「ごめんな今日は。なんだかずっとぼーっとしっぱなしで。光。」
そういうと光はなんだか訴えたそうな一生懸命な瞳をして、
「ううん。いいの!そんなときもあるよ!寂しいけどそんなにわがままいったらしんどくなるときもあるだろうし。だからね、今日はありがとう。」
と、言ってきたお前。
あーいい子だな。そう思ったらもう抱きしめていた。光はぎゅーっとし返してきてえへへと、言いながら家に入っていった。
ポツポツ…ポツリ。その瞬間に雨が降ってきた。ああ、今日がやっと終わった。なんだか罪悪感と嫌悪感で苦しくなって、そして、ホッとしている自分を見つけていやになった。雨はいい。この頬を伝う涙をそのまま消してくれるから。なんだか涙がポロポロとでてきて止まらなくなった。あーまだ電車乗らなくちゃいけないってのに…。まあ…いいか。ここからそんな遠いところに住んでいるわけでもないし、今はまだ22時過ぎだし少しゆっくり帰るとするか。そー言えばここって職場のすぐ近くなんだよなー。そう思いながら駅に向かってとぼとぼと歩いていると、少し先の方に見慣れた後ろ姿を見つけた。………川西さんだ。どうしよう…固まってしまった。なんでこんなタイミングで出くわすかなぁ?よりによってこんな情けない姿の時に。俺は、川西さんが気づきませんようにと、強く願いながら歩いた。でも、気付かれた。しかも今日に限って一人で帰ってるし…。あー出た。あの笑顔俺の大好きで大嫌いな、俺の心を狂わす笑顔。
「河原さーん!奇遇ですね!あっていうか、傘さしていないじゃないですか!」
合うや否や、手を振ってこっちにやってくる様は、ほんと無邪気な子供のようで…。
「おう!急に降ってきたからな。ていうか仕事は?」
俺は、気を取り直して、話す。
「あ、今日は早く終わったんです。ていうよりも店長が早くあげてくれたんです。まあいっても30分ほどですけどね。」
そう言いながら、ニコッとするお前。そんな眩しい笑顔をしないでくれ。俺は!俺は、光が大事なんだ。こいつは彼が大好きなんだ。この気持ちはただの親心!そうだ、親心だ。自分にそう強く言い聞かせて、頷く。
「河原さーん??どこか痛いのですか?顔がいたそうな顔してます。」
相変わらずこいつはよく人を見ている。俺のこいつのことが好きなところ。どんなときも、人を大事にしておもいやりのあるやつ。人の良いところ、悪いところ、若いくせによく見ている。って言っても俺とそんなに歳変わらないはずだけどな。
「んーまあいろいろだよ。」
俺がそういうと、川西さんはハッとした顔で、
「あれ?今日って彼女さんとデートでしたよね?なんかあったんですか?」
と、つぶやきやがる。ああ、人の気も知らないで。この馬鹿。まあそんな所がいいんだけどよ。
「んー。何もねえよ。俺も色々考えることがあるんだよ。例えば、誰かさんが全然言うこと聞いてくれないとか、聞いてくれないとかー。」
「えーーーーーー。あっ。えっとあのすみません。」
「プッ。あははははは!」
本気で困惑してやがる。あーすげえ可愛いの。もうマジでいじりがいあるわ。
「あはは。おもしれえな。本気にしやがんの。なんか元気出たわ。サンキュー。あはは。もうまじで面白いよ。」
そういうと川西さんは少し頬をふくらます。
「川西さん家までおくっていってあげるよ。まあ毎日途中まで電車一緒だから、川西さんが良ければだけど。」
こいつといるとあきない。こいつといると常に笑っている自分がいる。また、自分に疑問を持つ。あー自分はこんなに良く笑うやつだったかと…。
「もう!笑いすぎです。本当ですか?河原さんと話していると楽しいので嬉しいです。いつもは乗り換えでサヨナラなので。じゃあお願いします。」
お前は寒そうにマフラーを巻き直しながらそう言った。なんだかドキドキしている自分がいて、言ったことに迷う自分がいた。
「おう!」
そして、駅に向かって二人で他愛もない話をしながら歩き出した。ドキドキが収まらない中俺の心を隠してくれるような雨の中を。




