戯言マニュアル
ありきたりな詞の羅列
使い古しの恋の詩
口当たりばかりいい詞
耳触りのいいだけの韻律
初めの誰かの感動を
何度も薄めた劣化複製
面白くもなく驚きもしない
徒言たちの吹き溜まり
所詮は誰かの百番煎じ
どこかで聞いたよくある話
手垢にまみれた愛の詩
手触りばかりいい語感
口解けのいいだけの残響
一時流行ってすぐ消える
そんな虚言の繰り返し
ただ次々と書き換えて
累々と続くゴミの山
結局誰かのマイナーチェンジ
誰かが唄う愛の唄
誰かが語る悲劇譚
「そんな台詞は聞き飽きた」
目先鼻先換えるだけ
同じことしか唄っていない
「まるで心が籠もっていない」
外装ばかり着飾って
見た目は綺麗で中はからっぽ
「そんな詞は死んでいる」
美辞や麗句を並べただけで
心も想いも伝わるものか
「思い上がりも甚だしい」
伝える気もない独り善がりを
あたり構わず撒き散らすだけ
「そんなものなどただの自慰」
虚ろな字列はただの誇張
周囲の熱気に呑まれただけの
嵌め込む詞はただの死骸
毒にもならず薬にもなれない
同じ一節の繰り返し
誰もの飽くなき永劫の徒労
薄く浅く広がり続けば
いつしか誰も顧みず
誰の心も動かさず
誰の内にも響かない
無為無駄無意味を垂れ流し
葡萄を見上げる狐のような
この唄こそが
ただの戯言