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1-4 俗神対応

一週間以内といいつつかなりのハイペースで書きあがってきています。

 コウは自分が場違いな場にいる気がしてしょうがなかった。

 神と戦えるといっても、学生である自分は世界の未来だの、見たこともない人の命を守るため、とかいった大層な意思も持って戦ったのではない。

 成り行きに流された結果、ああなっただけだ。

 今からあなたを殺します。

 嫌なので反撃します。

 前回の戦いを二行で説明しろといわれたら、コウはそんな説明をするだろう。

 そんな自分が世界を左右する場にいても場違いな気がしてしょうがないのだ。

(まぁ、そんな会合が街中の喫茶店で行われてりゃあ場違いもくそも無いか)

 そういいながらコウは紅茶をすする。

 そんなコウの横でハヅキが腕を組んで唸る。

 これは非常に珍しい光景だ。

 気心の知れない相手には基本的に隙を見せない対応をすることを常としているハヅキが、交渉相手役の前で唸っている

「む~、ええと、なんですって?」

「だから、こちらからの条件は三つ。一つは乙女ロードに私を連れて行くこと。もう一つは私に衣食住を用意すること。衣は私が買うんで後でお金を頂くッす。食はなんでもいいや。三食、食えれば文句は無いっす。住はネット環境が整った広い部屋でお願いするっす三つ目はそこの人類最強と模擬戦をお願いするっす」

 一つ目は何を言っているのかよくわからない。

 乙女ロード?

 どこそれ?

 二つ目も神にしてはあまりに庶民的過ぎて理解ができなかった。

 三つ目に関しての問題はない。

 模擬戦くらいなら、とコウは快諾した。

「……こちらと争う気はないと?」

 クゥの横に座ったルウラがまじめな視線を投げると、クゥはへらへらと笑って頷いた。

「だって私と先輩が戦ったら私が秒殺されるじゃないっすか。私と先輩はあんまりに相性が悪すぎるっす。自殺みたいな真似は勘弁っすね。あたしゃあ、毎日楽しく生きていれば問題ないっす」

「そうか」

「……そんなに相性悪いのか?」

「そりゃあ、もう!」

 コウの問いかけにクゥが大仰に頷く。

「あたしのファクターの基本は移動ってのが致命的で……。移動に関しては右に出るものがいない先輩と当たるとどうしても、って感じっすね。……ちょっと失礼しますよっと」

 そういうとクゥは席を立ちトイレに移動した。

 言動がいちいち庶民的なせいで目の前のポニテ女が神であるということを忘れてしまいそうになる。

「おい。本当にあれがカミサマなのか?」

「そういう反応も無理は無いがな。クゥはほかの神全員と戦闘経験がある」

 その一言にコウの背筋が冷たくなった。

 全ての神と戦い、生き残ったというのだ。

 あの五月席とも。

「ファクターは?」

 ハヅキが問う。

「『自由解放』《リバティ・フロム・タイト》。クゥは際限なく自身のスピードを上げられるファクターといっていたが……恐らくはハッタリだ。でなければ私と戦ったときに逃げられた理由がわからない」

 あちらの世界ではこちらの世界と交わるまでは神の頂点を決めるバトルロイヤルが開催中らしかった。そんな戦いでルウラが本気でなかったはずは無い。やらなければやられる命がけの戦いなのだ。

 その勝者は世界の全ての理を支配できるようになるらしい。

 詳しいことを戦っていた本人にもよくわかっていなかったようだが、殺されそうになって無抵抗になる必要も無い。実際、ルウラは巻き込まれた感が強い、と述べていた。

「私のときもかなり本気だったのだがな、逃げられてしまった。他の神と比べれば私が彼女にとっての天敵らしい。他の神と戦えば場合によっては倒すこともできたのだろうが……彼女はそれをしなかった。彼女は想像以上に強かだよ」

 すべての神に対しての情報があると言うことはバトルロイヤルにかなり有利だ。ファクターにも相性があり、それを勘案して作戦を組み立てることができる。

 そのことを聞かされれば彼女が強かであるということも納得がいく。ふざけているように見えるのもわざと、だろう。

「ふ、む」

 それを聞くとハヅキは考え込むように目を閉じる。そうしているとき丁度、クゥが戻ってきた。

「いやぁ、おまたせっす」

「クゥさん。貴方は絶対神になる気は無いのですか?」

「あんまし無いっす」

 即答した。

「よろしければ理由を聞かせてもらっても?」

「ほら。自由って拘束があって始めて成り立つ概念といえなくないっすか?」

「確かにそういう見方もできますね」

「だから絶対神となって世界の全てを好きにできるといわれても逆にそれはそれで張り合いがないっすね。もしあたしが勝ち残っても世界は今のままで平常運行のはずっす。といっても恐らくどの神が絶対神となり、世界を弄繰り回しても世界は平常運転でしょうけど」

「それはどういう意味ですか?」

「世界の理を弄くるってことは法則自体が全て変換されるってことっす。その変換に対しては誰も気付かないんっすよ。仮に砂糖が辛くなっても、みんなこれは以前からそういうものだ、としか思わないっす」

「おい」

 向かいに座っているルウラに小声で話しかける。

「世界の理を弄くるってどういうことだ?」

 コウの質問にルウラは少し考えて質問で返した。

「コウ。どうして人間は水を飲まないと死ぬんだ?」

「……そりゃあ、水分が足りないと体が不調を起こすからな」

「なんで水分が必要なんだ?」

「人間の体の8割は水って聞くぜ?」

「何故。水でできているんだ?」

「…………しらねぇよ!そうなっているからだろ!」

 少し声を荒げてしまい、隣の二人が驚いたようにこちらを見る。

 あわてて頭を軽く下げてなんでもないという意思を伝える。

 本当は複雑で難解な名前の物質が化学反応を起こし、人間にそうさせているのだろうが、そんなことには興味が無かったため答えることはできなかった。

 ルウラはコウの回答に頷く。

「法則というものは突き詰めてしまえば最後には『そうなっているから』としかいえなくなる。反応においてそうなるという説明も最終的にそこに行き着く。世界の理を弄くるというのはその『そうなっている』の部分を好き勝手に弄繰り回すということだ。先ほどの例をとるなら、人間が水を飲まなくてもいいようにすることだってできる」

 ルウラの言葉はあまりに現実離れしていて、理解が遅れる。

「とにかくカミサマが本物の神様になるってわけか」

「そうなるな。全知全能。時すらも支配できる誰も到達できない領域の存在となる」

 こういったものに成り果ててしまうのであれば、クゥの言い分も理解できる。確かにそれではあらゆるものにたいして張り合いがなくなってしまう。

 立会人のような1人と1柱が会話をしている間に、メインの1人と1柱は次の話題に移っていた。

「できれば居住区はあなた方が住んでいるところに近いところがいいっすね」

「それはかまいませんが、それだとあなたに都合が悪くありませんか?あなたの天敵であるルウラがすぐそばにいるということになります」

「首輪があるほうがそちらは安心できるっす」

 一瞬だけ、本当にそれは一瞬だけだった。

 へらへらしていたクゥが鋭い視線をハヅキに投げた。

 コウもルウラもそれには気付かない。

 正面にいたハヅキが何とか、その視線に気付いたくらいの一瞬。

(ようやく……かな?)

 冷や汗が少し吹き出てくるが、内心、ハヅキは歓喜していた。

 今からの問答は神からのテストだ。

 精々、楽しませてみせろ。

 目の前の神はそういっている。

 この場の支配権はクゥが全て握っている。始めからペースは終始、クゥのものだった。

 あのトイレを挟んだのはわざとだろう。

 クゥの言動に油断を覚え、まともに会話の作戦を立てないような相手であればそれまでの相手。良いように扱われるだけの存在と認識されるだろう。

 この神はある種、ダンクよりも厄介だ。

 敵対はしてこないが、味方にもなるつもりは無く、そのくせ自分の都合でこちらを掻き回してくる可能性がある。

 だからこそ、この場で味方につけておきたい。

 全ての神と戦闘経験があり、相手の陣営に飛び込むことも躊躇わない強かさを持つ彼女がこちらにつけば後の事がかなりやりやすくなる。

「確かにこちらはそのほうが安心できますね。では後にこちらから提示させていただきます。……時にクゥさん。乙女ロードにはいつ頃を予定していますか?」

「う~ん、そちらの都合に合わせるっす。こっちの予定は当分、空白になっているんで。案内はあなたがいいっすね。貴方は面白そうっす」

 終始やる気の無い素振りを崩さない。

 少しアプローチの方向性を変えてみる。

「わかりました。こちらとしては十日後にしたいのですが……」

「かまわないっす」

「それはよかった。では今から手配を取りますね。30分ほどお待ちを」

 そういってハヅキは席を立ち、その言葉のとおり、きっかり30分戻ってこなかった。

 その間、ルウラとクゥはずっとコウを肴に話題に花を咲かせていた。

「ほほう。では困ったら恋人に泣きつくのがこの男の基本行動であると?」

「そんな悪意のある言い方はいけない。この二人の絆は尊いものだぞ」

「けど、先輩的に女に泣きつく男ってどうなんっすか?」

「…………」

「沈黙するな!何か言えって!」

「コウ。私に泣きつかれても困る。浮気だ」

「ハードル低すぎだろ!」

「先輩は男女のお付き合いと貸したことないっすからね。加減がわからないっす。許してやってくれっす」

「何であんたがルウラの保護者面してんの?」

「いや、ほら、先輩ってどうにも守ってあげたくなっちゃうじゃないっすか」

「そうか?むちゃくちゃ強いぞ?」

 コウの言葉に若干、ルウラの口角が引きつる。

 コウがしまった、と思ったときにはもう遅い。

「あーあーあー!人類サイキョーは空気の読めなさもサイキョーっすねー!こんなデリカシーの無い言葉を平気で口にできるなんてー!」

「バ、バカ!違う!今のは!」

「しかも煽りの耐性もないときたー!」

「コウ。気にするな。強さを認められる事は私にとっては誉れだ」

 そう言うルウラは若干目が泳ぎ、肩が落ちている。

 こういう反応は困る。いっその事、責めてくれた方がやりやすい。

「……ごめんなさい」

 なすすべなく、反射的に謝ってしまった。

「何に対して謝っているのだ?やめろ。私が惨めじゃないか」

(めんどくせえぇぇぇええええ!)

 コウは胸中の感想を必死で隠し、すまなさそうな表情を顔面に貼り付ける。

「いや、今のは謝る所で……」

「空気を読むって単語は日本にしかないらしいっすね」

「余計な茶々を入れんなや!」

「時に先輩」

「え?俺、スルーされんの?」

「先輩ってそんなに感情豊かでしたっけ?」

 クゥの質問にルウラは目を伏せる。

「……やはり不自然に思うか?」

「ええ、かなり」

 そういってクゥはすでに冷め切ったコーヒーに口をつけて会話に呼吸を持たせる。

「先輩は天界ではもっと冷淡でした。どういうわけだが性格がアレ揃いの12柱の中でも私、先輩と戦うときが一番、生きた心地がしなかったっす。これはファクターの愛称の悪さ抜きの感想っす。まるで機械と戦っているような不気味さ。感情を一切そぎ落としたような攻撃は戦った側からしてみれば異様なものっす」

 コウからしてみればにわかには信じられない言葉だった。

 この女は情緒豊かなはずだ。

 戦場の真ん中で敵の言葉に縛られてしまうくらいには。

(ん?)

 ここで少しの矛盾が引っかかる。

 前回の戦いの折、初めてルウラと模擬戦を行ったときのことだ。

 強さは義務だ、とまで言い切った。

 そんなことを真顔で言う女が戦場のど真ん中で戦意を喪失するなんて事があるのだろうか?

「そのことに関しては前から私自身気になってはいた」

 当人に自覚あり。

 これはかなり重症といえないか?

「私自身、こちらに来てからどうにもいろいろなことに対して感情のブレが大きくなっているように感じている。それが決定的だと感じたのはダンクとの戦いのときだ」

「話はロウアーから聞いているっす。私自身、こうしてできるだけ穏便に会いにきたのも先輩が話を聞いている限り、同一人物とは思えなかったからっす」

「ちょっと待て。そんなに以前と違いがあるというのに、ダンクはそんなこと気にもしても……」

「気付いていたよ。あいつが始めて来たときの会話を思い出せ」

 ルウラに言われて、記憶を洗い出してみると確かにそのことには触れていたが、あんな状況で言われてもわかるはずも無い。

「あの方自身、先輩と殺し合いできれば後はどうでも良いって方っす。とっくの昔に狂った神の言動を掘り返しても何にもならんっす」

「……それもそうだな。……そう言えばあの粘着紙ともあんたは戦ったんだろ?どんな感じだったんだ?」

「うーん。互いに千日手って感じっす。あたしの攻撃はなかなか通らないし、あっちの攻撃はあたしにはトロくてかわしやすかったし……。あの方と相性がいい神と言ったら七月席とか九月席とか……。逆にあの方と決定的に相性が悪いのは先輩っすね。移動の概念を全てひっくり返してしまうあの方のファクターはかなり先輩にとって厄介なはずっす」

 コウはルウラに対して少し怒りたくなった。

 一番、相性の悪い相手とこっちに来ていきなり戦う事になっていたのに一言もそのことを言わなかったのだ。

 強がりにも程がある。

「ほお、そんなにあいつと相性悪かったのか」

「知らなかったのか!」

「うむ、戦いづらいなーくらいにしか思わなかったな」

 先ほどの感想は取り消しだ。

「いや、だって、ダンクだぞ?あんなのに迫られたら相性どうこうとか考える気にもならない。必死になるだけだ」

「まぁ、そりゃあ……」

 二人して大きくため息をつく。

 そのとき丁度、ハヅキが帰ってきた。

「お待たせしました」

「いやいや、苦労かけるっす」

「クゥさんなら絶対に一ヶ月後を狙ってくると思ったのですが、それならこちらは助かります」

「……一ヶ月後?」

 ハヅキの指定した日にクゥが首をかしげる。

「ええ、一ヵ月後に○×先生のサイン会が」

「一ヵ月後でお願いするっす」

「反応はや!」

 クゥの言葉にハヅキの顔が曇る。

「それが……少し難しいのです」

「ええ!?なんでぇ!?」

「仮にもあなた様は神です。それならば、かの道の人間を全て占めだし、最低限の人間のみを残すことにしなければなりません」

「そ、それは論理の飛躍っすよ!大体、現地の空気を感じ取れない訪問にいったい何の意味があると!?余計な気は使わないでください。お願いします!」

「そう言われましても……あなた様がこちらの味方であるという確証は申し訳ありませんがありませんもので……」

「こういうときの接待だろうが、日本人!」

 もはや語尾にも余裕がなくなったクゥを見てハヅキは胸中でほくそ笑む。

 予想以上の反応だ。

 この神は強かではあるが、自身の趣味の範疇ではまるで冷静さを失ってしまう。

 でなければ、条件の一つ目にあんなものを持ち出さない。

 趣味と実益を兼ねようとして失敗する例だ。

 もっと言ってしまえばこの神にとってこの会談自体、試験のようなものなのでこんな条件と今の対応を持ち出したのだろう。

 だからこそ、下手に出すぎることは禁物だ。

 この神は制限にわざと自らをおくことを良し、としている。

 これは先ほどの『拘束があってはじめて自由が成り立つ』という発言から推測できる。

 こちらに容易に時間を与えるような真似をしていることも考慮すれば、この神は接待など望んでいない。こちらがこの神に対して面白おかしく制限を加えてくることを楽しみたいのだ。

 端的に言ってしまえばドMだ。

 ちなみにサイン会が開催されるという情報は今日の早朝に出たものなので十二月席が知らなくてもおかしくない。

 30分おいたのはわざと。実際何もやっていない。近くのコンビニで漫画を立ち読みしてきたくらいだ。それくらい時間をかけて、手間をかけたと思わせれば遠慮がちにもなってしまう。

 この神は俗物的だ。

 貧乏性と言い換えてもいい。

「それに私にも用事がありまして……」

「これ以上に大事な用事ってなんっすか!?」

「一ヵ月後はコウとデートの予定です。これだけは絶対に譲らん」

 語尾の威嚇にクゥがビクリと反応する。

 コウもハヅキも多忙すぎてなかなか二人でどこかに行く時間が取れないのだ。

「わ、私が味方につかなければ……」

「………………はい?」

「ヒィ!」

 地の底からの一声だった。

 生者が発したとは思えないようなどす黒い一声だった。

 十二月席の目が泳ぐ。

 蛇を前にした蛙のような有様だ。

「……お願いします。どうか予定を空けてください。ずらしてください。連れて行ってくれるだけでいいんです。余計な気は使わないでください。雑踏の中、サイン会に行きたいです」

 十二月席がハヅキに頭を下げた。

 優劣は決したのだ。

 自分の要求を取り下げないあたりはさすがというべきかも知れないが。

「どうする?コウ」

 いや、ここで振られても……。

「行ってやれよ。なんか見ていて可哀想になってきた」

「……わかったわよ」

 さも不本意そうに、いや、半分本気で不本意なのだろう。渋々といった風に頷く。

「私の恋人がそういってくれるようなので一ヵ月後に一緒に行きましょう」

 そういってハヅキは手を差し伸べる。

「私たちの友人となっていただけますか?」

 まるでやくざのような言い分である。

「はい」

 半分、涙声でその手を躊躇いがちに握り返そうとすると、ハヅキの手が蛇のように伸び、蛙を喰うがごとく、クゥの手を捕まえた。

 握手というよりも捕食である。

 ルウラはクゥの手を離すと大きく息をつく。

 クゥはがっくりとテーブルに頭を付した。

「さて、楽しんでいただけたかしら?」

 不敵な笑みを浮かべてハヅキが発した言葉はコウとルウラには意味不明な言葉だった。

 顔をテーブルに伏せっていたクゥが顔を上げる。

「はぁ?なに言っているんすか?」

「この場であなたを楽しませることができなければ、私たちは対等になることはできない。この場は、そういう場でしょう?」

 クゥはその言葉を受け、さも楽しそうに口角を上げた。

 へらへらとした雰囲気はすでになく、別人のようにも思える。

「彼とのデートが一ヵ月後というのは嘘?」

「いえ、それは本当です。真実を織り込まなければそれっぽくみえないでしょう?」

 それを聞くと、クゥは両手を挙げて息を吐く。

「……な・る・ほ・ど。神と共存をしていきたいという人間は想像以上に面白いものですね。他者を見る目に優れている。いいでしょう。当面はあなた方の友人として、十月席のようなポジションに着くとしましょうか」

 どうやら十二月の神はこちらを気に入ってくれたらしい。




「ちょっと……。君、マジで彼女の恋人何っすか?」

 喫茶店を出るときにクゥに呼び止められ、そんなことを聞かれた。

「そうだけど?」

「彼女、滅茶苦茶怖いじゃないっすか!」

「あれ?さっきのは茶番じゃなかったの?」

「いやいやいや!演技するにも限界があるっすよ!殺られるかとおもった……」

 どうやら十二月の神はハヅキが苦手らしい。

「ところでコウ君。君は神に対しての人類唯一のカウンターらしいっすね」

「ああ、不本意ながらな」

「そんな君に1つ聞きたいっす」

「どうぞ」

「私が先輩を殺したらどうする?」

 凍えるような瞳がコウを伽藍締めに拘束した。

 見つめられるだけで心情を読み取られそうになり、体が動かなくなる。

「……何、言ってんのかわからねぇよ」

「気楽に答えてくれればいいっす。心理テストみたいなものっす」

「ざっけんな!」

 声を荒げ体の緊張を無理やり解く。

 コウの大声に周囲の人間が立ち止まる。

「よくもまぁそんな胸糞悪くなる質問ができたもんだな。十二月!お前ら仲良いんだろうが!あの姿は大嘘か!それがお前の本心なのか!」

「どうしたの?コウ」

 ハヅキに肩をつかまれ制止され、ようやくコウは冷静さを欠いていたことに気づく。

「クゥ。何を言った?」

 ルウラの問いを無視してクゥがコウの目前まで迫り、一言。

「君に目覚めたファクターと、君のその発言は矛盾にまみれている」

「なに?」

 スッとコウから離れ、もう一言。

「その矛盾を解消しない限り、君は決して神には勝てない」


本当はもっとビジターとの戦いとか書きたいんだけど挟み込めないなぁ。続きは一週間以内!

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