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3-2 呪いは終わらない

ワールド・ロストは半分メツの話です

 過不足なくきっかり三分。

 命の刻限は刻々と過ぎていく。

 そして、それは相手も同じだ。

「喰らい斬れ!」

 コウの血が『インテグラ』を覆い、結晶化。鋭利な刃となる。

 必殺の『赤剣』が顕現。

 飛来する銀釘を叩き斬った。

 否、喰い斬ったというべきか。

 実体を持たない分、あっさりとした手ごたえだが、銀釘が一本消失する。

「相変わらず予想以上のことをしてくれるっ!」

 サキが仮面をかなぐり捨てる。

 邪魔だ。

 失血のせいで感覚が鈍くなっていることを補っての行為だった。

 尚も銀釘を飛来させるが、出血多量で意識が朦朧とし、視界がぼやける。それでも地中からの攻撃と合わせ、コウの行く手を遮る。

 あれに接近されれば決着だ。

『達磨にしてでも生かす』

 言葉が重みとなって、傷のせいで吹き出た汗とは別の種類のネバついた汗を発生させる。

 目的を忘れ、全力の攻撃をサキは繰り出す。

「させるものか……!」

 二本の銀釘がコウに殺到。

「そんなもので!」

 コウが赤剣と化した『インテグラ』を銀釘に叩きつけた瞬間、奇妙な感触が手に伝わる。

 先程まで銀だった釘が銅に変わっていることを確認。

(切り替えられるのか!)

 背後から銀釘が迫る。

 赤剣を振りきれば背後からのものに貫かれ、かといって背後のものを処理すれば押さえつけている二本に正面から串刺しだ。

 絶妙のタイミング。

 コウは体を思い切り前方に倒した。『インテグラ』を土台にし、二本の釘に乗っかるように体を預ける。ついで体を横に傾け、転がるように地面へ落下。上半分を失った銅釘二本と目標を見失った銀釘が空を切る。

 地面に赤剣が当たるように転がり落ちる。せり出すはずだった銀釘が赤の剣にのまれ、地上に姿を現すことなく喰い尽くされる。攻撃に余裕のなさが表れている。

まだ攻撃は終わっていない。上空から釘が二本落ちてくる。剣を体の下にしていたため、赤剣では対応しきれない。地面を転がり、回避。

 転がった反動を利用し、身を起こし、サキへ接近を試み折る。あの釘は方向転換に時間がかかるのは今までの攻防でお見通しだ。一気に零距離へと――。

「舐めるなっ!」

 サキは手に持っていた釘を投擲してきた。

 完璧なカウンタータイミング。

 足は既に踏み込んでおり、勢いを殺すことなどできはしない。

 さらに眼の端が最悪を捉える。

 先程、上半分を削った銅釘が思った以上の速さで旋回してきていた。三本の釘の着弾タイミングはほぼ同時。

 この場を強引にでも乗り切るしかない。

 投擲された銅釘に接触する直前、コウは赤剣を地に突き立てる。そのまま棒高跳びの要領で体を上へ。剣を手放さないため、剣を支点に逆立ちしているような形になる。

「テメェが……」

 赤剣がコウの怒りを受け肥大化。激突した銅釘三本が飲み込まれる。

「舐めるなぁ!」

 逆立ち状態のまま、手首をひねり、体を半回転。サキを捉える。左腕をサキに突きだす。

 コウの怪力、しかも全力で地面にぶつけた。

それでも『ハミング・バード』は断末魔のような異音を立てつつも、しっかりと作動した。胸の内でハヅキにありったけの感謝の念を送る。

 サキは投擲の直後で動くことができない。

『ハミング・バード』が射出される。

 大きく開いた嘴がサキに着弾し、地面にサキをつなぎとめる。嘴が閉じ、しっかりと捕縛しようとするが、モーターが破裂音と煙を立てて停止。しかし、緊急時のロック機構が作動。地面から二月席を逃さない。嘴は地に着いたまま離れない。ワイヤーが巻きとられ、コウの体がサキの方向へ運ばれる。

 足が地面をしっかりと踏みしめ、サキのまだ自由な下半身を自分の体重で抑え込む。

「とったぞ」

 サキに馬乗りになり、赤剣をサキの喉元へ。

 これ以上にない決着だった。

 サキも力を抜く。

「殺しなさい」

「断る」

 視線が激突する。

「メツの好意を他のものに向けさせる。それで俺達にとっちゃ一応の解決だ。あんたはあんたの呪いが解決するまで、どこかに監禁する。それで手打ちにしてほしい」

 頼む。首を縦に振ってくれ。

 怖くて戦闘を始める前に聞けなかった。もしこの方法が無理であれば、自分はこの戦いに目的を見出すことができず、負けていた。

 そしてうまくいった。

 だからこそ強く願う。

 祈るように。

「無理よ。私の呪いは、一度でも好意を持てば発動する」

 寂しく、虚しく、サキは微笑んだ。

「親友を助けなさい」

 コウの表情は変わらない。

 ただ、大きく息を吐き。

「そうか」

 短く、そう言った。

 顔を横に向ける。

 コンテナから這い出て、転がっているメツがいた。

 顔には絶望が浮かんでいる。

 視線をサキに顔に戻す。

 サキはありったけの謝罪を視線に込めてきた。

 コウの目に力はない。

 それでも手に力は入った。

 赤剣がサキの喉元に喰い込む。




 横倒しになったコンテナで戦闘を見続けていた。

 意識は元に戻ったものの、体が未だにいうことを利かない。

 親友はすごいと思う。

 自らの持つ全ての暴力を駆使して、サキを追い詰めている。

 心が痛む。

 自分の存在が戦闘のありようを決定づけ、そのくせ自分は何も出来ない。

 服従因子とか言うものがあるせいで何も出来ない。

 力が無いせいで何も出来ない。

「サキ……コウ……」

 いう事をきかない腕を無理やり動かし、自分の体を固定していたベルトを外す。

 何とかコンテナから体を出せた頃には、戦闘の決着がついていた。

 地面に愛しい人が縫い付けられ、コウがそれにまたがり、剣を喉元に這わせている。

 これ以上に無い決着。

 しかし、自らの胸に飛来した感情は不安だった。

 コウの表情が無表情のままだ。

 二言、三言。

 言葉が交わされた。

 聞こえない。

 コウの顔がこちらを向いた。

 表情は無い。

 全てを悟った。

 これ以上の決着は、ある。

 殺し、殺されの世界。

 元来、ここはそういう場。

「や、め、ろ」

 口から言葉が漏れる。

 無力な言葉だ。

 届きもしない。

 邪魔だ。

 自分の行動を制限するものが。

 服従因子が邪魔だ。

 消えろ。

 消えてしまえ。

 邪魔をするものは全て。

 言葉が紡がれた。

 紡がれた言葉は命名だ。

「我が名は……『消し去るもの!』




 サキが安らかそうな表情を浮かべる。

 コウの手に力が入る。

 その時、

「我が名は……『消しさるもの』!」

 あり得ない言葉が響いた。

 声のした方を咄嗟に見る。

 メツがこちらにタックルをかましてきた。

 サキの上から弾き飛ばされ、二人は地面を転がる。

「駄目だ!コウ!」

 馬乗りになってコウを押さえ込んだメツは変わり果てていた。

「メツ?」

 髪の色素がなくなっていた。

 友人の髪は白髪になっていた。

「見ろ!僕はもう大丈夫だ!消してやった!服従因子を消してやった!」

 嬉々として語るメツが異様に写った。

「僕のファクターは消滅だ。もう呪いなんか効かない。サキ見てくれ!僕は大丈夫だろう?」

「う……そ……」

 サキの双眸に涙が浮かぶ。

 その様子を見てコウは悟った。

 メツの呪いが消失したことを。

 メツがファクターに目覚めてしまったことを。

 目眩がした。

 下手な三文芝居を見せつけられている気分だ。

 あまりに気持ちが悪い。

 気づけばコウはメツをその場から逃げだしていた。


主人公二人目はメツです。

彼のファクターは消滅です。

この小説のタイトルですね!

主人公です

これからどんな目にあうか楽しみですね!

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