指定本
私が死神と言われているサイン神の秘書にも慣れてきたころ。
私はサイン神から本を借りた。
とても古い本であったけど、CDのように差し込んで自動的に翻訳してくれるPCに読みこまして読もうとした。
「…あれ?」
でも、PCは読み込んでくれなかった。
「どうしたんですか」
サイン神がいつの間にか部屋の中に入ってきて、私の手元を覗き込んでいた。
「あの、この本が読めなくて…」
「ああ、指定されていたものでしたね。私としたことが、うっかりしてました」
「指定?」
私はサイン神に聞き返す。
「ええ、ここの図書館の中で、閲覧するにふさわしくない本がいくつかあります。それらを総称して指定本と言います。これは、その中の一つのようですね」
「そんなのがあったんだ…」
私はサイン神にぼそっと言った。
「さて、この本は、そういう理由なので読めないようにプロテクトを掛けているんです。別の本を代わりに貸して差し上げるので、返していただけませんか」
「仕方ないわね」
私は、そう言ってその本をサイン神に返すと、別の本を貸してくれた。
「これ何?」
「あなたが読みたいと思っていた本の解説書みたいな本です」
「へぇー」
私が最初のページを見たが、見たことない文字の羅列でさっぱりわからなかった。
「では、これからも宜しくお願いしますよ。私にとって、かけがえのない人なのですから」
にこやかに笑い、部屋から出て行った。
その背中を、無意識に追いかける私がいた。