第14話:モーセ、燃える柴に話しかけられる。
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、ヨセフくんが「夢のアナリスト」としてエジプトの副王にまで上り詰め、世界を救う大逆転劇を見せてくれました。おかげで一族は最高の待遇を受け、爆発的に人口を増やしていったわけですが……。
時代は流れます。エジプトに「有能なヨセフがいたこと」を誰も覚えていない新しい王が登場しました。彼は増えすぎたイスラエル人を見て、「こいつら、もし戦争が起きたら敵に寝返るバグになるかも」と冷酷なセキュリティポリシーを採用。かつての「救世主の一族」は、一瞬にして「国家の奴隷」へとダウングレードされてしまいました。
杖一本で、世界の理を書き換える。
それでは、第14話「モーセ、燃える柴に話しかけられる。」いってみましょう。
---
王子から逃亡者へ:40年の「待機モード」
モーセさんの人生、スタートからドラマチックすぎます。当時、王様は「生まれた男の子は全員削除(ナイル川へ)」という残酷な命令を出していました。でもモーセさんはお母さんの機転で川を流され、なんと王女に拾われます。
こうして「奴隷の血筋なのにエジプトの王子」という複雑なアイデンティティを持って成長しますが、ある日、同胞を助けようとしてエジプト人を殺害。特権アクセス権を失い、逃亡者として砂漠の向こう「ミディアン」へ逃げ込みました。
そこからのモーセさん、なんと40年間も羊飼いをして過ごします。かつての王子が、何もない荒野でただ羊を追う毎日。若さゆえの正義感もキャリアも蒸発したような「長い長いスリープモード」です。
でも、神様はこの期間を「モーセの古いOSを初期化し、新しい権限を受け取るための空き容量を作る期間」として待っていたんです。
燃える柴:神様からの「呼び出し通知」
モーセさんが80歳になったある日のこと。ホレブという山で、目の前の「柴」が真っ赤に燃え上がりました。でも、どれだけ燃えても葉っぱ一枚焦げない。「物理法則がバグってるぞ……」とモーセさんが近づいた、その瞬間です。
「モーセ、モーセ!」
柴の中から声が聞こえてきました。神様が40年の沈黙を破ってログインしてきたんです。
「私は、エジプトで苦しんでいる私の民の叫びを、確かにログとして受信した」
ここ、第6話のソドムを思い出しますよね。地上で握りつぶされた叫びは、神様のサーバーには残るんです。奴隷たちの呻きや鞭の音……王宮では「労働リソース」として処理されていた声が、神様には「救出要求」として受信されていた。
神様は言いました。「さあ、行け。お前をファラオのもとへ派遣する」
「私はある」と、モーセの「無理です」連打
モーセさん、これには大困惑です。
「いやいや神様、無理ですよ! 私は口が重いし、そもそも一度失敗して逃げた身です。誰が信じるんですか?」
神様が「行け」と言うたびに、モーセは別のエラーメッセージを返して渋ります。でも、それも無理はない。彼は自分の正義感で人を殺し、絶望を知っている。だから、自分の力を信用できない。でも神様は、その「弱さ」ごと使おうとしていました。
モーセが「派遣した神の名前は何だ? と聞かれたら?」と問うと、神様は究極のネームサーバを返しました。
「私は、有って有る者」
「私は『存在する』という事象そのものである」という、ルートディレクトリ(根源)としての定義。この最強の認証コードを掲げていくなら、どんなシステムも上書きできるというわけです。
補正の結末:羊飼いの杖が「実行キー」になる
それでも渋るモーセに、神様は彼がずっと持っていた「羊飼いの杖」を指して言いました。
「それを地面に投げなさい」
杖を投げるとヘビに変わり、尻尾を掴むと杖に戻りました。
神様「これがお前の印だ。この杖を持って行け」
面白いのは、神様が新しい武器を渡さなかったことです。何十年も羊を導くために使ってきた、ありふれた道具。それが神様の言葉を受けた瞬間、民を導くための「実行キー」に変わる。
荒野の40年は、無駄な空白じゃなかった。羊を導いてきた手で、今度は民を導かせる。待機モードは、ちゃんと「訓練ログ」だったんです。
逃げ続けて40年。自分を「何者でもない」と定義していた老人は、神様の「同行保証」と「実行キー」を引っさげて、因縁のエジプトへ歩き出します。
ターゲットは、世界最強システム・ファラオ。
史上最大のデバッグ作戦の始まりです。
さて。
エジプトに戻ったモーセとアロン。彼らは王の前に立ちますが、王は「そんな神は知らん。もっと働け!」と負荷を上げます。ここから、エジプトの自然界が崩壊していく恐怖の「10の災い」が始まります。
次回、第15話。
「エジプト、10の災いでシステムダウン寸前。」
お楽しみに。……次は、カエル、アブ、イナゴ、そして暗闇。エジプトが文字通りボロボロになる、神様の本気モードのお話です。




