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ここがBLゲームの世界だと思いだしました。

タイトルの通り、がっつりBLが含まれます。

苦手な方は、回避してください。


――あ、私。転生してたんだ。


パリンっと手に持っていたはずのティーカップが、割れた音を聞いた。


私が思い出したのは、衝撃的なことが起きたから。

それは何か。


「姉ちゃん!?」


目の前で慌てている、我が弟の発言が発端だ。


『俺、この人と付き合ってるんだ』


そう紹介したのは、女の子――ではなく男の子だったからだ。


――え、それってBLじゃん!


そう思った瞬間、知らなかったはずのBLの知識が、ぐわっと頭の中を埋め尽くしていく。

その中で、名前は思い出せないけれど、前世の私が所謂、腐っているということだ。


つまりは、私は前世、腐女子だった。


何でもおいしくいただけちゃう、言うならば、雑食。

幅広くいろんなものに手を出していたのを思い出す。


その中で、手を取ったことのある『好きになってはいけない相手でした』というBLゲームに居ることに、今、私は気づいてしまったのである。

気づいたのは良いんだけれど、本編が終わってしまっている。


どーして気づかなかったの私!

弟の通ってる一緒の学園に居たって言うのに、どうして気づかなかったの!?

擦った揉んだの本編が終わってるなんて!!

どういうこと!!


大量の情報量が流れてきたのと、自分の失態にくらりと眩暈がする。

額に手を当てて、ソファーに反対側の手をついた。


「……ちゃん! ……姉ちゃん!!」


弟――ゆきが震えるようなそれでいて焦っているような声で、はっと我に返る。


そうだった。

意を決して、弟がカミングアウトしてくれていたのに、放置してしまっていた。


「雪……」

「姉ちゃん大丈夫!?」


呼べば、ローテーブを挟んで向かい側に居た弟が、こちらに向かって来ようとしていた。

私の足元には、カップの破片が散らばっているのに。


「ストップ!」


それをすかさず、手をあげて制止の言葉を出した。


雪がその言葉に、ピタッと止まる。


私が止めるのと同時に、雪の隣に座っていた彼――雨宮冬樹あまみや ふゆき先輩が、雪を止めてくれた。


「あ……」


悲しそうな顔をして、雪は俯いてしまった。


私の制止を何と思ったのか、想像はかなりつく。


「あのね――」

「俺、気持ち悪いよね」


説明をしようとしたら、私の言葉は遮られて、雪がそんなことを言った。

グッと握っている手や、震えているからだが痛々しい……じゃない!

壁になりかけそうになってるんじゃない!!


「気持ち悪くなんかないわ」

「じゃあなんで……」


ぽたぽたと涙をこぼしながら私を見る弟は、我が弟ながら綺麗で可愛い。

って、また壁になりかけているわ!!


「私の足元は、コップの破片だらけだから止めたの」

「じゃあ、何で……あんな反応……あっ!」


雪が、そこで思いついたかのようにはっと顔をあげた。


「姉ちゃん。貧血!?」

「そうよ。貧血よ」


私達、兄弟揃って少しだけ身体が弱い。

頻繁とは言えないけれど、ときどき貧血になったり眩暈を起こしたりするのだ。


今日は、それを使わせてもらうことにした。


「でも安心して、もう治まったから」

「そうなの?」

「ホウキと塵取り、持ってきて」

「うん! わかった!!」


泣いていたのがどこへやら、雪は元気よく掃除用具が締まっている場所――このリビングから出て行った。


それを見送った後、私は雨宮先輩を見てにこっと笑う。


「それで、雨宮先輩。どこまで本気なんですか?」


小説を呼んでいたので、すごく本気なのはわかっている。

だからと言って、これはこれ。あれはあれ。なのだ。


昔から私なんかより、可愛くて儚げで……そして、今でも私より背の低い雪。

いや。私が、女子にしては身長が高いのもあるけれど、雪は男子の平均より低い。

イギリス人の母と同じ金髪に水色の大きな目、白い肌、童顔……天使みたいな整った顔。

誘拐されそうになったのは、ストーカーにあったのは、数知れず。

そんな雪を物心ついた時から、守ると決めている。


ちなみに、私は黒目黒髪。

さえない女子高生。


それに、一年前に両親が交通事故で亡くなってから、私が両親の代わりなのだ。

だから聞く。


断じて、雨宮先輩の意気込みを聞いて萌えようと思っているわけではないのだ。

そう。本当に。

……いや。たぶん。


「全部本気だ」


うん。そうよね。

合格!! と言いたいところだけれど、まだまだだ。


「私が知らないと思いますか?」

「何がだ?」

「雨宮グループの御曹司であるあなたに、雪を幸せに出来るのですか?」

「ああ」

「このことは、ご両親は知っているんですか?」

「……いや」

「お世継ぎ問題は?」

「――それは……」


そこで、沈黙がリビングに落ちる。

雨宮先輩は何も言えないようで、俯いてしまった。


はあっと私は、溜息をつく。


「雪を幸せにするということは、その課題を何とかしないといけないことです」


そこまで言って私は、顔を持ち上げた雨宮先輩を睨む。


「本気なら、それをクリアしてきてください。だって、一生一緒に居たいならぶち当たる壁じゃないですか」

「……」


そうなのだ。

壁はたくさんあるのに、自信たっぷりに言われても、うちの雪が悲しむだろう。

それは、許せない。


黙りこくっている雨宮先輩に、


「何が『全部本気だ』だ! 出直してこい!!」


と言ってしまっていた。


目の前の雨宮先輩は、目を見開いている。


はっ!?

私としたことが!!

BLを生で拝めるチャンスを棒に振ろうとしているではないか!!


弟を守りたい姉心と、BLを見たい腐女子心が上手く共存していない。


なので、ちょっと情緒不安定に見えるかもしれないが、ふと微笑む。


「でも、この家にもいつでも来て良いですし、応援してますから」


と、付け足しておく。

フォローできただろうか?

私のBL観察ライフ、出来るだろうか?


ドキドキして雨宮先輩を見つめていると、ガチャっとリビングのドアが開いた。


「……姉ちゃん。ホウキと塵取り、持ってきた……」


雪が元気なくリビングに入ってきた。


これは、私の声、聞こえてたな。

そりゃそうだ。

気を遣わないで、話をしていたんだから。

だけど、雪にもわかって欲しいのは、壁があるということだ。


そう。壁!

二人の前に立つ障害と言う名の壁は、高いほど二人が燃えやすい!!

見れるのかな。

そんな、二人が見れるのかな?


ああいけない。

息切れ動悸がしてきた。


そう思ったのがいけなかった。

はあはあとドキドキが、次第に激しくなっていく。


「姉ちゃん?」


いつの間にかカップの破片をホウキで集めていた雪が、私の異変に気付いた。


「ごめ……ぐあい、わるいか……も……」


どうにも自分自身の身体が支えられなくて、ソファーに倒れた。


「姉ちゃん!!」


倒れてしまうと、瞼が重くてどうにもならない。

私の顔を弟が覗き込んできた。


「姉ちゃん! 姉ちゃん!!」

「だい……じょ……」


大丈夫ではなかった。

瞼が自然と閉じて、すとんと意識を私は失ったのだった。


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