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第二十三話

 沙汰を下した小判鮫一家は少ない費用を持って美波藩を追い出された。

 座敷童を失った反動なのか、その姿は落ちぶれ、家老たして見る影もなくなっていた。


 他の藩にも、此度の一件は、すでに小判鮫家の悪行としてふれ回っている。


 どこの藩でも受け入れてはくれないだろう。


 妖怪が跋扈する街道を果たして彼らが生きていけるのかわからない。


 そして、差し押さえた蔵からは大量の千両箱が発見され、全て勘定したのち美波藩の財政として一部を貰い受けた。


 また、此度の一件を助力してもらった幕府に一部を献上して、残りは全て美波藩藩主にプレゼントしておく。


 これは根回しだ。


 いくら醜く声太った藩主であろうと、藩主の威光は無視できない。


 ならば、金の力を上手く使えばいい。


 此度の小判鮫を追い詰めるにあたって、美波藩主は妹の藤、それに親戚の小判鮫を守るかもしれない。


 そこで悪巧みを事前に藩主に提案した。


 千両箱を発見していたからこそ、それを取りあげて藩主に献上するという密約だ。


 欲深い者たちには、千両箱は相当に価値があるように思えたのだろう。

 

 合計二十箱の千両箱を見つけ、十箱を幕府に。五個を藩主にお届けして、それぞれに協力を要請した。


 藩主様には、幕府に恩を売るために多めに千両箱を渡したのも説明してある。


 武士は面子も大事にしているので、藩主はこちらの提案を受け入れた。


 何よりも、座敷童の力を借りることによって、美波藩を発展させれば、もっと贅沢ができると言うことを伝えている。


 そのための資金として美波藩の財政に千両箱五個を貰い受けた。


 俺にとっては大勝利だ。


 運営資金に頭を悩ませていたところなので、これで藩内の新しい事業を行える内政資金ができた。


 ♢


 日が暮れかかる頃、藩主の屋敷の庭からは、蘭姫様とお玉、座敷童のサエ、三人の笑い声が聞こえてきた。


 あの小判鮫家の悪事を暴いた日以来、サエは自由を取り戻した。


 もう封印の巻物や、座敷牢に閉じ込められて力を吸い取る護符もない。

 蘭姫様と共に過ごす日々を楽しんでいる。


 幼女たち三人が楽しそうに遊ぶ姿を静かに見守る日々は楽しい。


 蘭姫様は白い小花を編んだ冠をサエの頭に乗せ、その愛らしい姿に目を細めている。


 サエもまた、蘭姫に対して純真な笑顔を浮かべ、お玉は二人を見つめて楽しそうに笑っていた。


 その姿を見るたびに、俺は心から安堵する。

 

 あの日の決断が正しかったことを、三人の笑顔が証明してくれていた。


 庭の池のほとりで三人は腰を下ろし、楽しげに話している。


 少し離れたところからその様子を見ていたが、会話が聞こえてきた。


「サエ、お玉、これからもずっと一緒にいようね!」

「もちろんじゃ、ラン姫とお玉の成長を楽しみにしておるぞ」

「お二人といられて幸せです」


 胸が温かくなる思いを感じる。


 蘭姫様とお玉、サエの絆は、本物だろう。


 三人の幼女が友人として、関係性を築いている。

 その光景が、俺にとっては此度の事件を解決して良かったと思える。


 だが、そんな彼女たちを守るために、俺は美波藩の未来を盤石な物にする必要がある。


 ♢


 その夜、我が屋敷では大きな宴が開かれていた。


 井上様やお鶴、平八や同心たちを招いて宴を開いた。


 皆が喜び、俺に感謝の意を示してくれる。


 その場で酒を飲みながら、和やかな雰囲気を楽しむ。


 宴の最中、俺の元に狐介がやってきた。

 此度の一件で、商人の狐介も随分と儲けたことだろう。


 小判鮫と好意にしていた呉服問屋は査察が入り、お取り潰しになることが決まった。


 その代わりにのし上がることが出来たはずだ。


 さらに俺に対して、反抗的だった商人たちは小判鮫派として、いくつか潰す手筈になっている。


「お代官様、一献」

「ああ」


 狐介が注いだ酒を飲み、そっと重箱が差し出される。


「うん?」

「いつものでございます」

「ああ、すまないな」

「いえいえ、これからは新たな事業を起こすとか?」

「耳が早いな」

「もちろん、お代官様は美波藩だけでなく、江戸でも話題になっておりますので」

「江戸で?」


 狐介の言葉に、俺は怪訝な顔をしてしまう。


「ええ、千両箱を幕府に十個も差し出した代官。就任してまだ半年ほどです。そんな若者が幕府に多大な利益をもたらしたのですから」


 悪目立ちはあまりよくないが、忠誠を誓っているように見せて、自由にさせてもらおう。


「今は関係ないことだ。こちらが行うことを邪魔されないのであればな」

「皆、期待しておられるだけですよ」


 警戒はしておいた方がいいかもしれないな。

 狐介とやりとりをしていると、自分が悪代官になったようで、悪い気はしない。


「新しい事業は、私にもお手伝いさせていただけるんですよね?」

「もちろんだ。二つの事業を行うから、お前にはその両方で動いてもらうつもりだ」

「それはそれは楽しみですな!」


 悪い顔をした狐介に、互いに顔を合わせて笑い合う。


「何を悪い顔をしておる」

「これは井上様!」

「ははっ!」


 筆頭家老である井上様が酒を片手に俺たちの前に座り、狐介が平伏する。


「良い良い、酒の席だ。して、桜木よ。何をするつもりなのだ?」

「井上様にもご協力を要請するつもりです」

「このような老骨を働かせるのか?」

「ええ、必要なことですから」

「遠慮がないのう。じゃが面白い!」


 本来は断罪される三人が、こうして結託して笑い合う。

  

 宴は続き、夜が更けるまで賑やかな笑い声と音楽が響いていた。


 小判鮫は、これまでどうやってあれほど莫大な富を築いたのか?


 奴が管轄する商売は、『呉服』と『遊郭』なのだ。


 裏がありそうな事業であることは間違いない。


 今後が楽しみで仕方ない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 完結です。


 いかがだったでしょうか? 楽しんていただけましたか? 江戸時代といいながら、参勤交代などの、その時代のルールは取り入れていない江戸時代風ファンタジーです。


 ネトコンのために続きを書き上げました。


 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 面白かった、応援してもいいよという方は、ブクマにて応援をよろしくお願いします。

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