はじまり
婚約破棄と言う言葉を婚約者から聞く事になろうとはリズル・リッツ・フェールはこの時、思っていなかった。この時というのは予想外な場所であって彼の事は予測できていた。何より自分の家族が怒り心頭で調べあげたのである。
リズルは帝国の3大貴族、第1位の公爵家の次女。長女のアイナは第1王子と婚約しており来年には成人する為、来年に式を挙げる予定だ。長男は聖騎士(次期、公爵家の当主)、次男は魔法師、三男は騎士団の騎士だ。
フェール家の特徴は銀髪に海の様な瞳をしていて皆、容姿端麗。リズルもふわふわとした髪と小柄な体格な為、妖精だなんだと言われている。がリズル自身あまり興味がない。
「何故、婚約破棄なのですか?」
リズルはさも分かりません。とばかりに戸惑った顔で問うた。
婚約者ことミエル・アゾン・リッツール。帝国が第2王子である。癖っ毛の黒髪に紫色の瞳。瞳には優しく笑みを浮かべ背も長身の為、常に周りの視線を集めていた。
彼は腕を組んで憎々しげに顔を歪め、隣にいる恋人は困った顔をしながら口許は、にやりと笑っている。
彼女の名はアイリス・ディタ・エンデバー。エンデバー家は企業を成功させ男爵の爵位を貰った成り上がり貴族だ。
アイリスは長い金髪に細かな飾りをしてドレスは白を統一しレースと小さな宝石で散らばさせ清楚さを出していた。良く見ればかなりお金をかけている。巷では純粋無知やら聖女の再来やら噂されているが、見た目だけで中身は歪みきっている。
ミエルは勿論、気づく事もない。ごく一部はアイリスの本性を知り痛い目もみて歯ぎしりしているというのに
リズルは密かに息を吐く。
帝国記念の舞踏会。華やかな場で皇帝陛下と皇后もいる。有名貴族も多数。既に、ひそひそと話し声が聞こえる。明日には社交界の噂の的に違いない。
「お前はこれまでアイリスに無礼を働き、傷つけた!何故、傷つける!これまで止める様に言ってきたの何故聞かない!」
「だから婚約破棄をなさるのですか?」
「そうだ!私はお前がこんな卑劣な奴だと思わなかったぞ!証拠もある!」
声を荒げリズルを指を指しアイリスを抱き寄せ、目配せるとミエルの取り巻き達が何やら紙の束を持って出てきた。
大体、想像できるけれど何を始めるのやら
思わず笑いそうになるのを耐えて、ちらりと皇帝と皇后を見ると、2人はそれぞれ何とも言えない顔で額を押さえため息を何度もしてた。因みに第1王子は飽きれ顔である。
「リズル嬢。貴方はアイリス嬢を茶会に招待したのも関わらず恥をかかせ、お茶をかけましたね。茶会の他にも怒鳴ったり、嘲笑って除け者にしたという色々と証言がある」
肩より下の茶髪の髪を束ね眼鏡をしたつり目の青年が前に出て読み上げる。
取り巻きその1としよう。名前はムリュー、何とか言って様な……彼は淡々と読み上げてゆく。
「以上がリズル嬢によるアイリス嬢への行いだ!」
ムリューはしてやったりとした顔をして告げる。取り巻きその2、その3(名前を忘れた)他数名は罵倒を飛ばしながらアイリスを慰めていた。
貴族達がざわざわとざわめく。戸惑いとフェール家を窮地に追い込める機会を伺う視線ら。
「分かりました。それが証拠という訳ですね。他はもうないのですね」
「そうだ!分かったか!」
だから謝罪して婚約破棄しろ!とミエルは生き生きとした顔で言った。
「仕方ありませんわ。本当は貴族会議でお父様が提出予定でしたが」
リズルの言葉にミエル達は怪訝な顔になる。予想とは違う反応で戸惑っている様だ。
「ここでごくごく一部ですが話さなければならない様ですね。勿論、証人も証拠も現場も押さえています。皇帝陛下、こういう場ですがよろしいでしょうか?」
「全く、愚息がすまないな」
陛下は眉間に深い皺を寄せて深いため息を吐いた。
リズルはそれはそれは見惚れる程の笑みを浮かべ「ありがとうございます」とドレスを広げ礼をした。
それを合図に父が前に出てリズルは目配せすると後ろに下がる。父の隣には兵士が控えていた。
「これは、一体……」
突然の展開にミエルは唖然と呟く。アイリス等も状況についていけていない様子だ。
ドサッと拘束された数人の罪人が前に引きづられた。その罪人の顔に見覚えがあるのだろう忽ちミエルは蒼白になった。
「この者達は会員制の人身売買、臓器の売買、麻薬を」
淡々と父は告げて証拠品等も王に見せる。
「愚息、愚息と思っていたがここまでとは」
深く息を吐くと兵士を呼び寄せミエルを指差し「拘束し軟禁しせよ。後日話をする」と言うとミエル達は連れて行かれた。何故ですか!?見てろよ貴様!等と叫んでいる。右から左に流そう……
バタンと扉が閉じられると皇后が手を叩く。
「皆の者すまなかったな。宴を再開せよ」
演奏者に目配せする。すると先程の雰囲気が嘘の様に穏やかな時間が流れだした。令嬢達のひそひそとした話ているもののダンスも再開され、かき消されてゆく。
リズルは肩を落とすと「お父様」と父を呼んだ。
「何でしょうか?」
「もう帰りなさい。疲れただろう」
「大丈夫ですわお父様。少し風に当たって来ます」
「ああ、そうすると良い」
家に帰った所で自分の事が噂になるのには変わりない。最悪な日だが、風にでも当たって気分転換をしよう。ひらりとドレスを流して、リズルは園庭の方へ向かった。その姿は凛々しく誰もが見惚れる姿であった。
初めての投稿ですが短めの予定です。




