表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲンの拳骨  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
22/51

其の二十二  板内の笑み

 水引屋内を、数名の男が歩いている。黒曜団の板内たちだ。


「押忍! 板内団長! 確認完了しました! どの部分も、しっかりと、準備されております!」

「団長。確認漏れはなさそうですぞい? どこも、しっかりと準備されておりますぞい!」

「ご苦労。・・・・・・身共が手がけたこの水引屋だ。隅々まで熟知しておる」

「押忍! さすが、団長であります!」

「あれだけ準備されていれば、間違いなく、華を飾ることができますぞい!」


 副木と立波は、板内の左右で店内を見回している。

 板内は「まもなく指示するからな」と、売り物の紙風船と線香花火を手に取り、笑っている。

 そこへ、ヘルメットを被ったちょび髭の中年男性が駆けてきた。


「へぇ、へぇ、へぇ。・・・・・・板内さま。屋上の準備を、先程、終えてきゃーしたがね! いつでも、号令がありゃー、わてがやりますわいな!」

「そうか。わかった。・・・・・・お主も、正式な黒曜団員ではないにも関わらず、このような作業を依頼してすまない。ご苦労だったな」

「へぇ、へぇ! この屯殿平(とんでんぺい)にかかりゃー、あの程度の仕掛けは、朝飯前だぎゃーね! 東洋江建築より、板内さまの仕事の方が、下請けしても金がぎょーさん貰えて嬉しいもんだぎゃ!」


 屯というヘルメットの男は、手に持ったスパナをくるりくるくると回し、下品に笑う。


「副木、立波、そして屯。・・・・・・身共に賛同してくれたこと、恩に着るぞ」

「押忍! 自分はぁ、板内団長に人生を捧げたであります! この国を憂い、団長と共に、素晴らしき国へと進化させるであります!」

「おれも同じでありますな。団長。恩を感じているのは、我々の方ですぞい」


 板内の前で、副木と立波は片膝立ちとなり、跪いた。

 屯は、「わてはまだ作業が」と言い、板内にぺこりと頭を下げて、どこかへ行ってしまった。

 すると、屯と入れ替わるようにして、前から檜垣が歩いてきた。


「檜垣・・・・・・。その顔は、もう、万全ということでよいのだな?」

「はぁい! 完全に、モノは揃ったようですわ。いつでも、始められるでありんす」

「そうか。・・・・・・ふむ」


 副木と立波は直立不動で、静かに板内の後ろで待っている。


「団長。いよいよでありんすねぇ? この国の新たな再興に大きな華を添えて、それはもう盛大に歴史の転換点を見届けたいと思うでありんす」

「檜垣もこれまで、戦前も戦後もこの国の脆弱な部分や闇を、葦原遊郭街から幾度となく見てきたことだろう。敵国に骨抜きにされた脆弱な傀儡政府など、信用ならんからな。黒曜団は、強き善き日本の姿を尊んで華を添え、もう一度その栄華を興すことができるのである」


 板内は鋭い瞳を輝かせ、檜垣に気迫の篭もった笑みを見せた。

 副木と立波は「さすが団長!」と板内を讃え、床に手を付いてその場で跪いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 板内、こいつやべーや! 今回の敵らも、やばげな奴ばっかだぜwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ