ニコル様の企み
王弟の遺骨と共にシリウスは戻って来た。
詳細を話したが反応は薄かった。
兄であるニコラス陛下は何も言わなかった。
今でも憎んでいるのかも知れないし政治に携わることのない愚弟などに興味がないだけかも知れない。
ニコル様は産まれたばかりの赤子を腕に抱きニコニコと聞いている。
笑顔で聞くような話ではないのにとシリウスは困惑した。
「モンクスフードのお薬は手に入りそうなの?」
「はい。まだ商談は重ねるつもりですがおおよそは決まりました。」
「成功の報酬は何でも願いを叶えてあげるだったわね、覚えてる?」
覚えているに決まっている。願いも決まっている。はずだったが。
「もう少し先に願いは叶えて頂きます。」
腕に抱かれた赤子をチラッと見たシリウスは何か吹っ切れたような精悍な顔つきになっていた。
ニコルは決して甘えて来ない息子に寂しさを感じながら溜息を吐いた。
「お母様は?モンクスフードに戻ったのかしら?」
王弟殿下の事は真っ先に話したがルイーズの事は聞かれなければ話したくはなかった。
だが王弟殿下の死亡原因がルイーズなので話さなくてはならないのだ。
ニコラス陛下はあからさまに顔を歪ませた。
皇族の恥だと吐き捨てて部屋から出て行った。
護衛が増えている。
ゆっくりと歩く父の後ろ姿は赤子の父とは言えないくらいゆっくりで弱々しい。
護衛を増やすような事があったのか聞こうと思ったがやめておいた。
ニコルは赤子を右腕から左腕に持ち帰るとシリウスをじっと見つめてきた。
「お母様はルーナを庇ったのね。知らない間にどれだけ絆を深めたのかしら。私にもお姉様にも愛情を向けなかったあの人が。お父様まで死ぬ事は無かったのに。馬鹿な夫婦だわ、もっと早くに別れていれば良かったのに。それとも婚姻が間違っていたのかしらね。」
マーカス夫妻の間に愛情は無かったと聞いたけれど本人達はもう死んでしまった為に本心はわからない。
どんな気持ちで夫婦関係のまま長い年限を過ごしたのだろう。
「私と変わらない歳で母に懸想するって何なのかしら。でもこれ以上醜態を晒さなくて良いなら助かったわ。それは遺骨?城内には置かないでちょうだい。王弟宮に持って行かせなさい。息子達に任せればいいわ。本来の姿に戻って部屋から出ないらしいから暇なはずよ。」
麗しの容姿が自慢だったがルーナが魔法を消した為に元の姿に戻ってしまった。
ルイーズの魔法の解けたガブリエル様は平凡な容姿だった。
アイザック様も同じだ。
皆を欺いていたから今更顔を見せれないのだろう。
だがそれでは困るのだ。
シリウスは怒っている。この2人に関してずっとイラついているのだ。
「このまま何もさせずに養うおつもりですか?」
ニコルは悪戯な笑顔を見せた。
やはりルイーズに似ているなと思う。
「ニコラス様から最後通達を出されてるわ。それを拒否したなら追い出されるわね。」
追い出されたらどうなるのだろう。
平民となり野垂れ死ぬのか。
あの賢さを使えばいいものを。
顔などどうでも良いではないか。
「化粧品でも贈るか。」
つい心の声が漏れてしまう。
ニコル様が体を揺らして笑ったので寝ていた赤子が起きてしまった。
ニコル様は照れもせず素早く乳を出し赤子に与える。
「この子が時期国王よ。ニコラス様はそれまで生きられるかしら。それともシリウス、貴方がこの国を背負う?選ばせてあげるわ。まだ時間はあるから。」
そう言って手渡された招待状の中にはカーティスからのも混じっていた。
ニヤニヤ笑うニコル様は何か良からぬ事を企んでいそうに見えた。




