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カーティスの思惑

「ルーナ、学校の友達に会いたいだろう?茶会か夜会かどっちが良い?選ばせてやるぞ。」


カーティスが聞いてきた。薬の商談を済ませてとっとと国へ帰りたいのだが多分アクアと離れたく無いのだ。

いくら気持ちが通じ合ったとしてもこのまま残るわけにはいかない。

父にも母にも兄にも話さなくてはならないだろうし、母など説得に時間がかかるはずだ。

ジェイムズ様に薬を渡したままで投薬してから時間がかかるらしくルーナはぼっちで暇人だ。


「別に会いたくありませんが。」


「そうか、ではまずは茶会だ。陛下が亡くなられて以降多くの貴族が家督を息子に譲ったのだ。ルーナ、顔を売って来い。」


「え、聞いてましたか?私は行きたくありません。」


そんな若者貴族の集いなど絶対行きたくない。


「お姉ちゃん!助けてよ。」


「ん?私は違う茶会に行かなくちゃいけないの。頑張ろうね。」


「お前が残して行ったドレスが山程あるぞ。」


カーティスもアクアも悪戯な笑顔で圧をかけてきた。なんだろう。貴族の息子とか紹介してきたら暴れてやろう、煙草でも吸って鼻から煙を出してやる。頭に鳥でも乗せて行こうかな、危ないやつだと認識されれば追い出されるだろう。


どうやら声に出ていたらしくカーティスがめちゃくちゃ笑っていた。お姉ちゃんは呆れている。


「頭に乗せたら見せてくれ。明日の午後だ、忘れるな。」




翌日連れて行かれた茶会は王城のサロンだった。よく言えばアンティークな、悪く言えば古臭い調度品に囲まれた古風な部屋で見渡す限り老人と老婆が茶を飲んでいた。

立って話す者などひとりもおらず耳が遠いのかやたらと声が大きい。

だが王城に出入り出来るだけあって身なりは特上だ。

高齢者も多いが割と若い人もちらほらと見える。


カーティスが世代交代と言っていたがここに居るのはじゃない方だった。


ぼっちのルーナに付き添ってくれたのはジェイムズ様だった。

茶会など出る暇があったら渡した薬の感想のひとつくらい聞きたいのだがとルーナは心で悪態をつく。


「皆様、ご紹介致しましょう。こちらルイーズ・マーカス侯爵夫人の孫娘のルーナ様にございます。モンクスフードで薬の研究をしております。さあ、ルーナ様ご挨拶を。」


ルーナはカーテシーをすると小さく挨拶をした。


老人達は騒つく。

老人とは図々しい生き物だとルーナは常々思っている。遠慮がないのだ。


「ルイーズと血は繋がっているのかね?」

「どちらの子供なのだ?ダイアナか?ニコルか?」

「確かに可愛らしいがルイーズの足元にも及ばぬ。」


困っているとジェイムズ様が空いているテーブルに連れて行ってくれた。

ソファに座るとメイドが茶やら菓子やら持って来た。


「みなルイーズ信者なのですよ。陛下の悪友ですね。学生時代からのご友人です。」


「同級生なのですか?多少お若い方も見えますが。」


「はい。陛下と同じ歳ですね。こちらの皆様が年相応なのですよ。」


「陛下もおばあちゃんの魔法の力を借りていたのですか?」


「ふふふ、おばあちゃんですか、失礼、その、たいへん言いにくいのですが陛下とルイーズ様は男女の関係がありましたので。」


ルイーズの自由奔放さに驚いてしまう。王弟殿下とも関係しているはずだ。だがそれよりもーー


「おばあちゃんとすると若返るの?」


驚きで敬語をわすれてしまった。


「若返るのではなく歳を重ねる速度がゆっくりになると言った方が正しいですね。ほら、あちらの男性ーーステッキを持った背の高い方の、おそらく彼もルイーズ様と関係がございます。」


その男性も明らかに他の人よりも若く見えた。


「おばあちゃんってモテた理由が若返りたいからなんじゃ。」


「いいえ、純粋にルイーズ様に恋心を抱いておりました。ルイーズ様は誰よりも美しく立っているだけで花が咲いたような可憐なお姿でしたよ。花のように可憐な容姿でいて活発で聡明で男勝りな一面もありましたね。男友達の様に話すルイーズ様に夢中になったのです。」


ルイーズは裕福な高位貴族の娘だった。

外交官の父親に連れられて外国で過ごす事も多く色々な知識を持ち合わせていた。


「陛下は攻撃に特化した魔法に興味を示したのです。元々魔法は生活の手助けの様な些細なものだったのですが陛下が強化を始めたのです。」


次第に老人が少しずつルーナ達のテーブルに集まって来た。

渋い顔をしている。


「ルイーズがマーカスに嫁入りした時から狂っていったのだ。」

「陛下の奥方は気の毒だった。」

「魔法学校など反対だった。」

「陛下の自作自演だな。だから刺されてしまうのだ。」


老人が数人険しい顔で頷いている。


ルーナにはどうでもいい話しばかりで疲れてしまうが自作自演は気になる。

ルーナが聞き返すと話したそうにうずうずしていた白髪のふさふさした老人が教えてくれた。

陛下は魔法は使えなかった、力を示す為に魔獣を利用していたと。


「実際魔獣の被害など無かったのだ。それを討伐などしおってからに。子供達に力を見せつけたいだけさ、みみっちい男だよ。」


「どうして最後はマーカス公爵に刺されたの?」


孫娘のような口調になってしまう。


「ルイーズと婚姻したから相当恨んでいたんだ。あの手この手を使っても手に入れたかったがな。マーカス公爵に良からぬ事を度々企んでは酷い仕打ちを繰り返していた。」


「でもおばあちゃんとは男女の関係だったんでしょう?」


「マーカス公爵と結婚してくれて安心したのだ。他国へ行けば私達で争う事もなくなる。それを追いかけて無理矢理抱いたのだ。」


ルーナに聞かせたくは無かったようで周りの老人がふさふさ白髪の老人を嗜めた。

男女の関係は複雑なようだ。

ルーナには関係ない。


結局ルイーズは誰が好きだったんだろうと老人達を眺めていた時にふと思い出した。


「おばあちゃんから手紙を受け取ったわ、あれ読まなきゃ。」




その頃別の茶会が開かれていた。

カーティスの従兄弟にあたる公爵家には家督を継いだばかりの若い貴族が集まっていた。


そこへカーティスはアクアを連れて行った。

時期国王と名高いカーティスがパートナーを連れて現れたのだ。

会場は騒然とするかと思いきやそうでもなかった。

魔法学校での顔見知りばかりだったからだ。


「やあ、アクア。久しぶりだな。漸く帰って来たのか。」

「中々婚約者を決めないと思っていたらやはりな。」


カーティスはアクアの腰を抱き連れ回す。

アクアの追放を知りカーティスの妻の座を狙った者もこの中に大勢いるのではないかと思う。

だがカーティスはアクアを婚約者だとは言わなかった。

ただ腰を抱きながら挨拶をしただけだ。








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