懐かしの魔法(元)大国
2人が揃うと復活するなんて嘘だとルーナは思った。
ルイーズから旦那様のソレール様の話なんて聞いた事がない。
陽気でお喋りなルイーズはいつも酔うとむかしの話をしていた。
山のような釣書に毎週末のデート、贈り物だけで何部屋も使ったと言う。
求婚は数え切れないほどあったらしい。
魅了魔法があったからとは言い切れない。
何故なら今でも若々しく美しいからだ。
「おばあちゃん、ソレール様とは恋愛なの?」
「違うわ、政略でもないのよ。魔法使い同士番わせたら産まれて来る子はさぞかし凄いでしょうって話ね。」
「ふうん。ニコル様は受け継いだよね。ダイアナ様は?」
「あの子は何も無かったわね、だからさっさと結婚して家を出て出たわ。」
「会ったりしないの?」
ルイーズはちょっとだけ寂しそうな顔をした。
「私と夫があまり良い関係じゃなかったからね。喧嘩をした訳じゃないの。今思えば喧嘩なんてする愛情も無かったわ。」
「愛情があれば喧嘩しないんじゃないの?」
「違うわ、好きだから喧嘩するのよ。お互いに意見を言える仲って事よ。私達はお互いに興味も無かった。」
貴族の結婚は愛など要らないと聞く。
家同士の結婚なのだ。
だから愛人を持つ者が多くその出会いの場である大人だけの茶会や夜会がある。
「ふうん。どんなに浮気しても良いけどさ、愛人との間に子供を作るのは辞めてほしいかな。」
「あら、どうしてそう思うの?」
「家系図がややこしくなるもん。遺産分けが大変って学校で話してるの聞いたよ。」
ハンカチで目尻を拭いながらルイーズがけらけら笑った。
「私の遺産はルーナにあげるって書いといたわ。たいしたもの無いけどね。」
「シリウスにあげるんじゃないの?」
「あの子はもう全て持ってるじゃない。さ、もう寝ましょう。朝には着くわ。」
ベッドが大きかったからなのか寒かったからなのか2人はずっと一緒の部屋で同じベッドで眠っていた。
何故だか母のステラよりも安心するのだ。
ルイーズはステラとも一緒に寝てあげなさいと言うけれど両親はとにかく仲が良くお邪魔する隙はない。
「おばあちゃんと仲良くなれた事は私の人生での宝物のひとつなの。名言でしょ。」
ルイーズはメモしとくわと言いながら抱きしめてくれた。
翌朝と言っても既に太陽は真上に近かったが漸く長い船旅が終わり港に着いた。
陛下に呼ばれてソレール王国に向かった。
あれ以来この国には来ていないし戻るとは思っても見なかった。
今回の夜会が終わればこの国には来る事はないだろう。
復活の魔法など夢物語だと陛下に納得してもらわねば。
(シリウスとの明るい未来が叶いますように)
ルーナ達は迎えの馬車に乗り込み王城に向かった。
物々しい数の護衛が付くのはルイーズが居るからかエルザ様が思ったより位が高いのかわからないがルーナの為ではない事はわかる。
久しぶりの王城はルーナがいた頃と雰囲気が変わっていた。
(魔法で灯していた灯りが蝋燭に変わったからか。良い言い方をするならば古風かな)
客室に通されるまでルイーズはルーナにピッタリ寄り添った。
この意味はルーナにもわかる。
「おばあちゃん、私だけは歓迎されてないのね。」
「珍しく感が良いじゃない。魔法を消し去った貴方は歓迎どころか憎まれてるわね。」
「おばあちゃん珍しく語尾を伸ばさないのねえ。」
「ふふっ。ふざけて居られないって事よ。」
話が脱線しないので本気でやばいかもしれないとルーナは生唾を飲んだ。
「ルーナ、夜会で何がおこるか予想が出来ないわ。だからこれを渡しておくわね。」
ルイーズはそう言ってルーナに手紙を渡した。
「さっきも言ったでしょ、私の遺産を貴方に譲るって内容よ。すっっごく珍しいピンクパールは大事にしてね?作り替えてもいいけれど、あ、ピアスにしてネックレスは短くすればいいんじゃない?ルーナに似合うわ。貴方が褒めてくれた紫水晶のネックレスもあげるからね。」
ルイーズが饒舌になったので少し安心した。死んだらあげるって意味だからねと念を押されたのでまだ先じゃんと言っておいた。
客室の窓からは美しい庭園が見える。招かれた貴族が気ままに散歩している。服装は夜会前だと言うのに誰もが着飾っているのは王城だからだろうか。
これから湯浴みをして髪を結いドレスを着付けてもらうのにどれだけのメイドが必要なのかと考えていた。
「あれエルザ様達だ。私も庭園に行きたい、いい?」
「駄目よー、ルーナは目立ちすぎるから。夜会でばーんと登場しなさいな。察しの良い貴方ならわかるでしょ。」
確かに。部屋は客室でソファもテーブルも鏡も立派だがお茶もなければ食事も無かった。荷物は運んで貰えたが入り口に置いたままだ。
けれどお腹が空いたならエルザ様の部屋へ行けばいいし着付けも髪もメイクもエルザ様が張り切ってするだろうから何の問題も無い。
夜会の支度が始まった。
エルザ様は勿論のことルイーズの美しさに只々驚いた。
「おばあちゃん魅了使ってるでしょ。」
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
さて貴方の番よと言われて着せられたドレスは深い深いブルーの夜空色のドレスだった。
金と銀の糸で縁取りされたフリルやレース、星のように散りばめられた宝石。
シリウスが選んだドレスはルーナのカラーだった。
「シリウス様の1番お好きな色だそうよ。先程お付きの方にピアスをお預かりして来ましたわ。」
そう言って着けてくれたピアスは紫色だった。
「スピネルって言うの。滅多に出会えない貴重な石なのよ。よく見つけたわねって感じ。」
仲良くなったエルザ様はルイーズの話し方に似ている。
「長く垂らしたままの髪が貴方に1番似合うけれど今日は特別王族の多い夜会なの。だから結っていくわ。」
「忘れてた!エルザ様これをしとかなくっちゃいけないわ。」
準備を整えて会場に向かう。
期待と不安を胸いっぱいに抱えたルーナはもうすぐ17歳になろうとしていた。




