ルイーズの告白
「本当に素直にお育ちになられましたね。この娘は誰に似たのか頑固で疑い深くて。でもそのおかげで真実に辿り着けそうですわ。ふふっ、私にもお茶を淹れて、ルーナ。」
「おばあちゃんのが近いじゃない。カップを取るだけなのに。」
ルーナがルイーズをおばあちゃん呼びするのに面食らってシリウスはぽかんと口を開けている。
ルーナは文句を言いながら家族分お茶を淹れた。
「聖獣は産まれた木に帰ったんでしょう?」
「そうよ、やっと帰って来たわ。これで拗れた世界が戻るでしょう。」
満足そうな笑顔でお茶を飲むルイーズにアクアは信じられないと言った。
「聖獣って実在するの?そんなのファンタジーじゃないの!お母さんが聖女の末裔なのも驚きなのに。」
「いや、ルーナの姉上も魔法使いだと聞きましたが。俺にとって貴方も充分ファンタジーです。」
言われてみればそうかも知れないとアクアは眉間に皺を寄せて黙ってしまう。
「父さんの緑の手も相当ファンタジーだよな。」
「父さんは魔法じゃないぞ。」
「ルーナってちゃんと母さんが産んだの?」
「お姉ちゃんひっどい!私お姉ちゃんに似てるじゃん!」
ルイーズが笑い出した。ハンカチで目尻を拭きながら笑い転げている。
「似た者親子よね、真面目な話が出来ないんだもの。シリウス様まで似ちゃって。」
言われてみれば確かにそうだ。すぐ脱線してしまう。
これに反論したのはステラだった。
「ルイーズ様、私は別です!お話の続きをお願いします。」
「そうだったわ、ステラだけは真面目なのよねえ、でもステラ、貴方に育てられたシリウス様は素直で真っ直ぐな子に育ったわ。誇りに思いなさい。」
「おばあちゃんのウインクいらないし。早く続きを話してよ。」
ルイーズはルーナに失礼な子ねえ、と言いながらまた笑った。
だが中々話し始めないのでルーナが口を開いた。
「おばあちゃんと旦那様のソレール・マーカス侯爵はこのモンクスフードの産まれだよね?もしかしてシリウスはマーカス家の子なんじゃないの?おばあちゃんが産むには無理があるからダイアナ様かニコル様の子なんじゃないかと思う。違う?」
ルイーズはルーナの直球に満足そうに頷いた。
「あの文字が読めれば辿り着けるわよね。正解よ、シリウスは私の孫なの。ニコルとニコラス様の正当な血を引く唯一の王子なのよ。王家に狙われた私の夫を助ける為に魔法で容姿を変えていたの。復刻の魔法の持ち主だから。」
ソレール王国の復興は実際にあった話だった。
大国からの攻撃により壊滅的な被害に遭ったソレール王国は12代目のソレールの魔法で復活を遂げた。
資源豊富なソレール王国を欲していた大国は魔法が使える者を次々に攫って行った。
そして世界中に魔法大国の名を広め小さな国を属国に従えて支配していった。
これが実際の話だが物語はもちろん脚色されていた。
押しも押されもしない大国に成り上がった国王の座に着いたサイラスはソレールに和解を持ちかけた。
先代の事は水に流して和平条約を結ぼうとお互いの国を行き来するまでになって行った。
「サイラス陛下が媚薬を持ち込んだのよ。元々やる気のない国王は息子のニコラス様に政務を押し付けていたの。サイラス様の弟君は歳の離れた真面目で陰気な兄を良く思って居なかった。」
「何の為にあんな沢山子供を作ったの?」
「快楽に溺れていたのは弟君とその息子2人よ。望んで出来た子は恐らく1人もいないでしょうね。強い媚薬だったから。」
あのノートには妃の名前も産まれた子の名も書いてあった。
ガブリエルやアイザックが見たとしても何とも思わないだろうとシリウスは思った。
「サイラス陛下は復刻の魔法を探していたのですか?だから貴方を悪者に仕立てた。マーカス侯爵を捉える為に。」
「そうよ、認識阻害魔法は闇魔法だと言って魔女扱いされたわ。」
「わたし魔獣は見たわ。消えていくところも。」
「俺たちは討伐隊に居て何度も戦いました。」
「魔獣は悪ではないのよ、サイラスが追い詰めるから反撃をしただけよ。自分達の力を誇示したかっただけね。ソレールの森で静かに眠っているはずよ。」
「おばあちゃん、シリウスはこれからどうなるの?ニコル様は随分前に懐妊したって聞いたわ。その子がいるならシリウスを解放してよ。」
「待てルーナ、俺のおばあちゃんだろ?」
「受け入れ早くて気持ち悪っ。素直過ぎるのも気持ち悪いわ。」
「お前なんでそんなに口悪いんだよ!ステラの子なのに。」
聡明で容姿端麗なシリウスがルーナと罵り合っている姿は普通の少年だった。
だが出自のはっきりした今、彼はやはり皇族なのだ。
ルーナが蹴りを入れていい人物ではない。
静かにさせる為にルイーズが呟いた。
「この世の三大魔法って知ってる?」




