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ルーナの怒り

「中々小賢しい娘だな。バークレーが養女にした娘なのだろう?聖獣付きと知っていて養女にしたのなら王家を欺いたのと同じでは無いか?なあ、ニコル。」


「いけません。そのような事を仰らないでください、ニコラス様。私が必ず母を捕らえます。あの娘は可哀想な捨て子なのです。」


「だがあの娘にしか聖獣は見えぬのであろう?ならばやらせる他ないではないか。」


「聖獣はペットではないのです。ジョイが頼んでも動くかどうかは聖獣次第だと。」


「体調が戻った今がチャンスなのだ。父上達を暴かねばこの国は終わる。国民に課したあの重い税ではどの道暴動が起きるだろう。私は国民を助けたい。あの娘を利用してでも父上を排除せねばならんのだ。」




聖獣はルーナに頼まれてニコラスを見張っていたのだ。


《・・・と言う話だった》

《我等は魔獣を鎮めても魔女を倒すことなど出来ぬ》

《何でも出来ると思われても困るのだ》

《ジョイ、気をつけろ》

《何か仕掛けて来るかも知れぬ》


「殺されはしない。私が死んだら貴方達と意思疎通が出来ないもの。」


《ジョイに拷問などしたら即刻首を落としてやる》


「魔獣しか倒せないくせに。」


《護る事は出来るぞ》


「まあいいわ、何か仕掛けてくるなら受けてやる。」



だがルーナの決意も虚しく予想外の事が起きたのだ。

サイラス陛下が悪い知らせを持って来た。


「シリウスを解放したくば聖獣を使い魔女ルイーズを捕らえよと。」

「・・・何故シリウスを。」

「お前の1番大事な人だと判断したのだろうな。」


ルーナは黙って聞いていた。


(嘘だ、絶対こいつも絡んでる。)


「ですが私にはどうする事もできません。私には何の力もありませんから。」

「シリウスがどうなっても良いのか。」

「どうなるのです?四股を折りますか?眼を潰しますか?」

「解らぬ。だがあの王家の残虐さは知っているだろう?」


ルーナはもう誰も信じられない。信じないと思った。

自分達が招いた事なのに。

大人の癖に。

王族の癖に。

子供のルーナに丸投げしてくるなんて。



「ではシリウスは殺されるのですね。私には何も出来ませんし。シリウスが死んだら私も後を追うだけです。」


サイラス陛下との睨み合いは続く。


「聖獣殿に助けを求めてくれればよい。ジョイには出来るのだろう?」


「・・・聞いてみましょう。ではルイーズ様を捕らえて下さい。その位はしてくださるのでしょう?」


「・・・お前は何故怯まない?私は魔法大国の国王だ。私になぜそのような態度なのだ。」


「ではお聞きしますが魔法大国の魔法使いが何故私などに頼むのですか?まだ12歳の魔法も使えないような子供に。何度も言いますが私が気に入らないなら斬り捨てればば良いのです。」


陛下は答えない。


「私が聖獣と会話が出来るからですか?確かに会話は出来ます。ですが彼等は私の物ではありません。呼べばすぐ来るような間柄ではないのです。気まぐれに姿を見せるだけですから。」


(嘘だけど。すぐ横にいるし。)


「ならばシリウスの命の保証はないぞ。」


(はいはい、想定内の返事。)


ルーナが何も答えずに立っていると側近が近づいて来た。

彼等は剣を抜いている。

ジェイムズがルーナの頬に切先を当てる。

ルーナはその剣を右手で握ると自分の喉に突き刺した。



真っ先に飛び出したのはリオだった。

陛下も側近も動けないのか動かない。


リオはルーナを抱き上げると部屋から出ていった。

医務室の場所など知らない。

リオは当てがわれた自分用の客室にルーナを連れて行った。


「やっぱりな、お前もか。」


リオはソファにルーナを下ろすと喉元を触りながら言った。


「お前にも加護がかけられている。怪我しても血でないだろ?」


「はい。小さな頃から転んでも怪我をしませんでした。まさか剣で死ねないとは思いませんでしたが。」


「じゃあ死ぬ気で刺したか?」


「はい。」


「協力する気はさらさら無いのか?」


「ありませんね。私関係ないもの。シリウスだけは助けに行くけど。」


「中々良い性格してるな。その度胸もな。」


リオは楽しそうに笑う。


「俺もアイツ気に入ってるんだ。こんな国から連れ出してやりたい。」


「ではシリウスの生活の保証をしてださるのですね?約束してください。シリウスが自由に生きられる様に約束を。」


「俺の家に住めば良いよ。母はシリウスの乳母だったんだ。」


ルーナは驚いた。シリウスから何度も聞いていた。優しく厳しい乳母の教えを今も忘れずに守っている事を。


「そんな繋がりがあったのですね。驚きました。シリウスも喜ぶでしょう。」


「シリウスが大国に住める様に陛下に協力してやってくれないか?」


「・・・私大人が嫌いなんですよ。特に王族が。何でも自分の思い通りになると思っているし、実際その通りになる。命令するだけで自分でやらないしやって貰って当たり前と思っている。その根性が嫌。腐ってる。」


リオはくすくす笑って聞いている。


(父様にそっくりだな。俺にもアクアにも似てるけど。)


「私きっと殺しちゃうわ。こんな国大嫌いだから。それでも良いの?」


興奮すると敬語じゃなくなる実の妹は可愛い。

さてどうやって打ち明けようか。

この拗れに拗れた妹の心を癒す者をまず助けないと。


「ジョイが手を汚せばシリウスが悲しむぞ。辞めておけ。きつく罰すれば良いだろう?」


「貴方は信用出来る?信用しても良いの?」


「うーん、そうだなあ。どうやったら信用して貰えるかな」


リオはそうだと言って自分の喉に剣を突き刺した。

驚いて止めようとしたルーナは更に驚く。


「俺もジョイと同じ加護がかけられてるんだよ。母の力でね。多分シリウスにもかけられてるはずだ。昔母がそんな様な事を言っていた気がするんだ。だからシリウスは死なないよ。信用してくれる?」


「気がするだけじゃ信用出来ない。確実にシリウスが死なないって証明してくれないと。」


リオが思っていた以上にルーナは疑い深く育っていた。

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