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ニコルとルーナ

《ジョイよ、何故我等がいる事を隠した》



「隠れてたわけじゃないよね?陛下には見えなかった。だから言わなかっただけ。」


《ジョイよ、この国を救わぬのか》


「シリウス、聖獣の声聞こえる?」

「聞こえるし見える。」


《ジョイよ、無視はよくないぞ》


「無視したわけじゃないから。シリウスはどう思う?」

「ルイーズを捉えればいいんだろ?」

「簡単に言うけど姿を変えられたらわかんないし。」

「俺わかるかも。なんとなく覚えてるから。」


シリウスはいつものシリウスとは違った。

虚な顔をしている。

それもそうだ、本当の父親がアイザックだったのだから。

ルーナはシリウスの手を離さない。この冷たい手を離してはいけないと思った。


《ジョイよ、魔獣はもう現れぬぞ》

「うるさいわね、今それどころじゃないの!」

《な、な、ジョイよ、その口の聞き方はなんだ、そんな子に育てた覚えはないぞ》

《反抗期が来たのか》


「反抗期なんてこないよ!産まれてこのかた従順に生きてるもん!」


睨み合うルーナと聖獣達を見てシリウスはふっと笑った。


「本当の親子みたいだな。親子はそんな風に言い合うんだろ。知らないけど。」

「私だって知らないよ!」


「魔獣が現れないって本当?」


ルーナがうっかり聞き逃したのをシリウスはちゃんと聞いていた。


《現れぬ、そもそもルイーズとやらにそこまでの力は無い》

《だから媚薬を使っていた》

《もう魔法自体が弱っているのだ》

《我等が消える前にルイーズを浄化せねばならぬ》


「え?待って待って待って!消えるってなに?」


《時代だ、もはや魔法を使わずとも便利な物が増えた》

《魔法が使える者も殆ど産まれて来ぬ》

《我等の役目は魔獣の浄化なのだ》

《それが終われば我々は消える》


「ダメ、浄化なんてしなくていい。消えないで。私の家族でしょう?ひとりぼっちはいや!」


《お前の両親を探せ》

《ひとりではないぞ、シリウスがいる》


「じゃあシリウスとずっと一緒にいられるの?」


《わからぬ、ジョイ、お前が決めるのだ》

《国を救えば自由になれるのではないか》

《両親を探せ》


「ルイーズを捕まえたらいいの?そしたらシリウスといられるの?」


《ジョイよ、何度も言うが両親を探せ》

《ジョイよ、スルーはよくないぞ》


「両親なんていらない!消えないで!泣くわわたし、いいの?泣いちゃうよ!」


ルーナはもうとっくにぐしゃぐしゃに泣いている。

聖獣にしがみつきながらずっと消えないでと叫ぶ。


《すぐには消えぬだろう、泣き止め》

《鼻を拭け、我等の美しい毛並みがカピカピになるではないか》


シリウスはルーナの腕をそっとひいて聖獣から離すと顔を拭いてやった。


「ジョイの両親を探したら何かあるのか?」


《さあな、本当の名前がわかるだろう》

《王家から出されても住む所が出来るのではないか》

《何故我々が見えるのかわかるかも知れぬ》

《それよりこの毛も拭いてくれ》

《水に濡らしたハンカチで拭いてやれ》


「鼻水だからな。」




シリウスとルーナはゆっくりと邸に戻って来た。

話し合うには時間が足りず暗くなって来たために戻ったに過ぎない。


陛下もリオもラインハルトも心配だったのか庭を見渡せる部屋の窓からずっと外を見ていた。

2人が戻って来たのを見届けると皆がホッとしていた。




「陛下、ニコル様にお会いしたいのです。ニコラス殿下のお部屋を訪ねても宜しいでしょうか。」

「何故だ、ジョイはお二人とも面識はないであろう。」

「ありません。ですがお尋ねしたい事がございます。」


陛下は腕を組みルーナを見つめている。


「ジョイ、病み上がりのニコラス殿をあまり刺激してくれるなよ。但し同席はさせてもらうぞ。」

「解りました。」


その日の午後にルーナはニコルの元にやって来た。

陛下と側近の2人も一緒だった。


部屋には陽が差し込み開け放たれた窓からの風で僅かに残る薬の匂いを和らげている。

ニコラス殿下は顔色もよく長椅子に2人で座っていた。

この空色の髪の女性がニコル様だろう。


「話とは何だ?私にか、それともニコルにか。」


腐っても王族だなとルーナは思った。

薬漬けだった身体はまだ細く皮膚も老人のようだ。だが髪や髭は整えられ王族の証の上着を着たニコラス殿下は威厳を放っている。


「ニコル様にお伺いしたい事がございます。ルイーズ様はこの手紙をさがしているのではありませんか?」


ルーナが差し出した4通の手紙は以前シリウスが持ち出した物だ。

ニコルはそれを受け取ると既に開封されている封筒から手紙を取り出した。


手紙をじっと読むニコルをルーナは黙って見つめる。


「私には読めません。古い神話に出てくる言葉ですね。」

「はい。神話に出て来る魔術の詠唱です。5つの詠唱を唱えると魔術が発動するそうです。」

「4通しかないわ。」

「はい。あとひとつ必要です。ですから魔術は完成しておりません。」


ニコルは読めない詠唱を見ている。少しでも読めないか記憶を辿っているのかも知れない。


「ルイーズ様はこれを集めてどんな魔術を使いたいのか知りませんが今頃あとひとつを探しているのではないですか?」


「そうかも知れないわ。」


「でしたらこれを取りに戻って来ますね。」



「ジョイ、それは何処にあったのだ、お前には読めるのか?」

「シリウスが育った別邸で見つけたそうです。ルイーズ様はそこに戻って来るのではありませんか?闇の魔術の詠唱が書いてあります。完成したらこの国は魔物が支配するそうです。そう書いてありました。」


「ジョイ、あなたはこれが読めるの?何故・・・」

「聖獣と話せるのもこれが読めるのも何故かはわかりません。ニコル様、貴方がルイーズ様を止めてください。母親なのでしょう?」


ルーナは協力する気はない。勿論シリウスも関わらせたく無い。

隠れていないで母親を捕らえればいいのだ。

だって私達には関係ない。

だがニコラスが反論する。


「聖獣と話せるなら其方がルイーズを止めてくれ。」


「無理です。話せても彼等が動かねば私には何もできません。」


人を当たり前の様に使おうとするニコラスにイライラが止まらない。

考え込むニコラスとニコルに追い討ちをかけてやった。


「王家が招いた事ではありませんか。このままでは王家は滅ぶかも知れません。国王陛下と王弟殿下にルイーズを捉えるよう頼んで下さい。身体の繋がりがあるなら捉え易いのではないですか?ルイーズ様のお子様を人質に取り脅せばいいのです。」



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