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呼ばれたジョイ

魔法大国の国王であるサイラスはルーナが聖獣を連れて来るのを待っていた。

聖獣が見え会話が出来る少女の事を話してよいものか考える。

供に連れて来た側近は大国でも珍しい魔法の使い手で長年サイラスに使え信頼もある。話しても問題はなかろう。

優れた攻撃魔法の使い手であるリオは学生でありながら討伐隊で指揮を任される程優れた青年だ。

だが話す事は躊躇ってしまう。


リオはこの国で産まれたが途中で父親と妹と大国に渡る。後に母親を取り返すが妹のルーナは行方不明のままだ。

サイラスはガブリエルとアイザックに調べさせた。


「其方達は執務もあまりしていない様だな。暇だろう?この件を調べてくれないか。」


嫌味を言われて鋭い目つきで返事をしたのはガブリエルだ。


「わかりました。調べましょう。」


誰を使って調べるのかはわからないが名前がわかっていれば容易いだろう。ほんの数日で知らせを持って来た。


「最初に子を預かった妃は世話をしていた様ですが自身が身籠ると侍女に任せ切りだったようですね。彼女は後宮から出された後は教会に身を寄せていました。まあそれは関係ないですね。世話を任された侍女を探すのに手惑いまして見つけ出しても中々口を割りませんでした。罪に問わないと言うと漸く話しました。面倒見切れない赤子を捨ててくる様に命じたそうです。」


長々と言い訳じみた話だったが要するに邪魔だから捨てたのだ。

ちらっとリオを見ると真っ直ぐガブリエルを見ていた。


「捨てに行ったのは護衛に付いていた男だそうです。この者には会えませんでした。侍女が聞いた話では森に捨てたと。」


魔獣など存在しなかったこの平和な国にも動物はいる。

小さな赤子など獣に襲われなくとも呆気なく死んでしまう。


「恐らくもう生きてはいないしょう。護衛を探し出しますか?それとも侍女を罰しましょうか。」


まるで自分達に非はないような言い方だ。

ニコラスを貶めたりしなければ妃を次から次へと娶らずに済んだし侍女や乳母の家庭が壊れる事も無かったのだ。

母と妹を王宮に奪われたリオの気持ちはどうなる。


「妹の捨てられた場所へ案内してもらえませんか?侍女や護衛への罰は望みません。父や母も同じ事を言うでしょう。」


リオはルーナが生きているのを知っている。

だから真っ直ぐ敵を見据える事が出来た。

リオが罰を望むのは現国王と王弟、その2人の息子にだ。

自分がどうなろうと構わないから今すぐ火だるまにしてやろうか。

そんな事を考えてしまう位にガブリエルの態度は悪い。


「すぐに向かいますか?そんなに遠くはないのです。」


悪びれた様子など微塵もないガブリエルに腹が立つ。


「はい。陛下、行ってもかまいませんか?」



確かに近かった。

王宮からも遠くはない。

住んでいた頃もこの場所に近づいた事は無かった。


「この辺りだと聞いたそうです。目印の大きな石が2つ並んだ横のクローバーの上にそっと置いたと聞いています。」


ガブリエルの連れて来た従者が2人で当たりを見回す。


(骨とか探してる振りだろうけど生きてるし。何年も前の赤子の骨など跡形もないに決まってる。獣が見つければ骨まで食べてしまうだろうし。馬鹿なのか?)


リオは心の中で悪態をつく。


「獣が赤子を見つければ森の奥まで咥えて行くかも知れません。少し先まで入っても構いませんか?」


従者を先頭に薄暗い森に入って行く。

ガブリエルは背後に立たれるのが嫌なのか警戒しているのか陛下の隣に並んで歩く。

何かあれば陛下を盾にするつもりだろう。


「気持ちの良い森ですね。」

「そうか?私には薄暗く気味悪く感じるが。」

「確かに薄暗いですが空気が凄く澄んでいます。」


この神聖な空気を感じ取れないのはやはり濁っているからだ。

悪事に手を染めた者にはわからない。


「行方不明の赤子を探す目的でいらしたのですか?」

「これはついでだよ。目的は君の叔父上ニコラスの治療さ。随分弱っていたのが気になってね、あの身体で執務をこなしてるんだろう?」


ガブリエルは先程睨んだのを反省したのか忘れたのか、この質問には顔色を変えず眉ひとつ動かさなかった。


「叔父上は自らがやると言い出したのです。今までの愚行を改めて反省したのでしょう。」

「君は何を任されているんだ?」

「私は長子ですが王弟の息子です。即位する事はないでしょう。ですから公務は勿論執務には手を出しておりません。私は父が管理する領地の経営に携わっております。」

「領地があるのか?皇族に?」

「はい。我が国では普通です。」

「そうか。」


陛下が指を顎に当てて頷いた時は調べろの合図だった。

きっとその領地にルイーズがいる。

まずは魔獣を消滅させねば。

ルイーズが捕まれば王族がニコラスや貴族にやった悪事が明らかになるはずだ。

ルーナの事はそれが済んでからでいい。



「私お断りしましたよね?手紙にも書きました。」

「ジョイ、君ね、陛下からの命令は絶対なんだよ。断るなどとんでもない。」


船でルーナはむすっとしながら遠ざかる港を眺めた。

断りの手紙を何故ラインハルトが持っていたのかは知らないし興味もない。

きっと陛下の直属の部下に違いない。


そのラインハルトに連れられ船にいるのだ。


顔ではむすっとしているがシリウスに会えると言う気持ちで胸がいっぱいだった。

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