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離れ離れに

王弟殿下と執事と侍女は膝を突き合わせて座っている。

ルーナはこざっぱりとした赤ん坊の服を着せてもらい漸く人間らしくなったところだ。


服を着せている間にルーナは抱きついたり指をぎゅっと握ったり大人達を翻弄した。

良い匂いになったルーナにキスしたり抱きしめたりしたいのを皆グッと我慢した。

立場の決まらないルーナを甘やかしてはいけないのだ。


「孤児院に連れて行きますか?」

「殿下の養女にするのは手続きが大変かと。」

「養女にする事は考えていない。兄上が聞きつけると面倒だからな。」

「孤児院には今赤ん坊はいないだろう?世話をする者を増やすなら此処で面倒を見るか。」


3人はルーナをじっと見つめた。

はいはいのスピードからすると一歳になるかならないくらいだろう。

じっとしていられないルーナは部屋をはいはいで徘徊している。

時々止まってはソファやテーブルに掴まり立ちをした。

これは付きっきりで世話が必要になる。


「あうーと言っているぞ」

「よだれ出てますね。お腹が空いたのでしょうか。」

「赤ん坊にしては痩せてますね。あまり乳を与えられていないのかも知れませんね。」


確かにルーナは赤ん坊特有の丸い腹やエクボの出来る手をしていない。

肉付きが薄いのだ。

だがじっくり観察するとルーナの金色にも銀色にも見える巻き毛はまだ短く、くるくると渦巻いている。

大きな藍色の瞳、白い肌、形の良い頭。小さな顔。


「かなりな美人になりますね。」

「国王から遠ざけないといけませんね。」

「何年かしたら使えるな。」

「では淑女教育も身につけさせましょうか。」

「一応探している親はいないか調べてくれ。」



ルーナはひとまず唯の拾い子として保護される事になった。

広い王弟宮の屋敷で数人の侍女達の手で世話をする。

人見知りもなくいつもニコニコ笑うルーナは皆に可愛がられた。

通いの侍女やメイドや庭師は家に帰る度に赤ん坊のために何かしら持って来た。

自分の娘や息子の着ていた服やら靴やらおもちゃでいっぱいだ。

夜は侍女頭が一緒に眠った。

静かだった王弟宮に花が咲いたかのように皆の気持ちも明るくなりよくわからない希望の光が差し込んだ気がした。



殿下の兄、国王の悪政で国中が息を潜めて過ごしている。

目立たぬ様、話題にならぬ様、目に留まらぬ様に。



《なぜ養女にせんのだ》

《裸で捨てられてた上に怪我もない奇妙な赤ん坊を簡単に養女にするほど馬鹿ではない》

《だが人間として育つのは間違いない》

《王族同士の争いに巻き込むつもりではなかろうな》

《あの男ならやりかねない》



ルーナはジョイと名付けられた。

本当に単なる偶然なのだが聖獣は満足そうに我等の力だと笑った。




王弟殿下は孤児院を経営している。

親のいない子供達を住まわせ世話する者を雇った。

昼間は教師を雇い勉強させている。


ジョイと名付けられたルーナは孤児院に入る手続き待ちだった。

活発なルーナの世話が思ったより大変で其々の仕事に支障が出る様になったからだ。

だが王弟宮の料理長夫妻がルーナを引き取りたいと言って来た。


この夫婦が引き取るならルーナは敷地内で育つ事になる。

侍女もメイドも執事までもが喜んだ。


こうしてルーナは名を変え料理長の娘になった。




ステラはルーナを奪われた事を夫に伝えた。

王宮から出る事が出来ず直接会って伝える事が出来なかったのでルイーズに頼んだのだ。

ルーナが無事に保護されているのを星の位置から知ったステラはルーナを探さなかった。

下手に探して王家に殺されるのを危惧したからだ。



ルーナが連れ去られた話を聞いた夫は怒りに震えた。

それよりも怒りに満ちたのが娘のアクアだった。


「父様、わたしの星が言ってるの、この国を出ろって。」


アクアはそれしか言わなかったがリオには伝わった。


「もうこの国に居たくないよ。ここを出て母様を迎えに行く準備をする。」


リオとアクアにとっての準備とは魔法の強化だ。

この国が唯一恐れている国に渡る。

騎士団に入りこの国を滅ぼしてやる。

氷の魔法で動きを止めて木っ端微塵にしてやろう。

それともリオの炎で骨まで燃やしてやろうか。

アクアもリオもそれが出来るくらいには強いはずだ。

ただ王宮に入る術がない。

国王は常に護衛がいる。

ならば敵国として攻めるまでだ。



マーカス侯爵はリオとアクアを抱きしめた。


「すまんな、何も出来なくて。お前たちの母は必ず守ると誓おう。」


「私が倒しに来るわ、それまで母様をお願いします。」


ステラと夫のソルムはこの先夫婦が離れ離れになっても子供達は手放さない事を決め移住する事も考えていた。


アクアの星周りが異様に強力になっていたからだ。


ソルムは子供達を連れて国を出る決心をした。

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