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はしゃぐ陛下、戸惑うニコル

魔法大国の国王が毎日見舞いに来る。

2人の側近と若い青年を連れて。

こんなに堂々と来られては王族に睨まれてしまう。

只でさえ薬を盛られていたのに。



「どうだ、目は見えるようになったか?緑の野菜を沢山摂るんだぞ。」

「排泄は大事ですからね、水分はこまめに摂るように。」


まるで母親の様にニコラスに声を掛けるとワゴン一杯に運んで来た料理を広げる。


「ニコル殿は魚が好きだと聞いたのでな。この王弟宮の料理長のイチオシだ。さあ、みんなで食べよう。」


閉め切っていた窓を開けて空気を入れる用になった部屋は病人の心も回復させた。

少しずつ食欲が出て起きている時間が増える。


「執務などやらせれば良いのだ。ニコラス殿下は国王でもないのに王弟と名乗る暇人がいるではないか。その父たる王も暇だろう。我々は羽根を伸ばそうではないか。」


陛下は高らかに笑い肉や魚を頬張った。

ニコルは細かい切り分けニコラスの前に運ぶ。


(この人大国の国王よね。マナーとか気にしないのかしら。)


「このパンの真ん中を切るだろ?この野菜を挟んでから肉をみっちり乗せて」

「あっ、陛下、ソースはこれが美味いですよ!」

「肉入れ過ぎなんですよ。服汚さないで下さいね。」


(本当に国王なのかしら。もうソースはとっくに溢れてるし袖にも付いてるわ。)


けれど皆んなで食べる食事は美味しい。

陛下がいる内は安心して過ごせるのも有り難い。

ニコラス様に笑顔が戻った事が何より嬉しかった。


「さて、食べ終わったな。ニコル、今日もやってくれ。」


陛下が目をキラキラさせながらニコルの前に座る。

ニコルは溜息を隠しながら陛下に魔法を掛けた。


鏡を見ながらご満悦だ。


「ふむ。30年前はこんな感じだったな。どうだ、お前達より若くなったぞ。」

「でも陛下、手は隠せれてません。中年の手です。」

「あとは動きも微妙と言いますか、キレがないので違和感が有ります。」

「手を隠して黙って立ってれば20代だろう?」

「黙って立ってるだけが何の役に立ちますか?」

「む、いつか役に立つかもしれん。」


ニコルの魔法で姿を変えてもらう遊びにはしゃぐ陛下達。

こんな事をしていても良いのだろうか?

母のルイーズを捉え、王家の悪事を暴かねばならないと言うのに。


「あの、ニコラス様はもう安全なのですか?また薬を盛られたりとかは。」


「大丈夫だ。結界があるからな。この部屋にはルイーズでさえも入れんよ。もう暫くは静養に励め。ルイーズが接触するのを待てば良い。」


ニコルは漸く食事を終えたニコラスに茶を与え頷いた。


(それまで毎日来るのかしら。有り難いけれどはしゃぎ過ぎでは?衣装まで持ってくる様になったし。)


「そうだ、ニコル様。これシリウスが手に入れたノートです。こっちは手紙の束ですね、何処の言葉にも当てはまらなくて読めないそうです。」

「リオ、まずは陛下にお渡しするべきだろう?」

「妃になった全員の名前が書いてあるんですよ。ニコル様が見たほうが早くないですか?」



ニコルは渡された随分可愛らしいノートを広げるとパラパラとめくって行く。


「ルイーズの子は解ったか?」

「はい。」

「リオ、お前シリウスに聞いてこい。」

「お待ちください。子供を巻き込みたくありません。」


陛下はそれもそうだなと踏み留まる。


「もう少し待とう。解決の糸口がやって来る。」





ルーナに手紙が届いた。

開封された後もない。蜜蝋の印は陛下のものだ。

シリウスからの手紙が届かないと愚痴っておいたので中身は絶対シリウスからだと思った。

封筒を思い切りよく破り中を開ける。

1枚の高価な紙に書かれていたのはーー



ジョイ、至急こちらに参られよ



たったこれだけ?

ルーナは破れた封筒の内側も調べて見たが何もなく書かれてもいない。


《シリウスからの文はないのか》

《行かなくてもいいぞ、シリウスは危険ではないからな》


「なりたくもない婚約者にして連れて来たくせに至急来いとはね。」


《またジョイを振り回すか》

《あやつの魔法でちゃちゃっと解決すればよいものを》

《まあ無理だろう》


「陛下の属性って何?何の魔法が使えるの?」

《会ったら教えて貰え》

「会わないから教えて貰えないわ。」


ルーナは陛下への返信に


お断りします


と書いて封筒に入れた。

聖獣はめちゃめちゃ笑った。


《一国の主人からの願いを断るとは》

《怖い者知らずだな》

「怖いものもないしこの世の未練もないから。」

《シリウスにもか?》

《向こうに行けば会えるのではないか?》

「会っても私はカーティスの婚約者のままだもの。」


会うと帰りたくなくなるだろう。

そんな我儘は許されないだろうとルーナは思う。

お断りこそが立派な我儘だと言う事に気づいていないルーナだった。

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