怪しい奴は誰だ
「シリウス様をこちら側に引き入れませんか?」
リオの発言に陛下は眼を輝かせた。
面白がっているのだろう。
陛下の側近2人はは顔色ひとつ変えない。こちらのがよっぽど王族らしい。
「信頼出来ると思ったか。」
「はい。彼もマーカスを疑っています。何よりルイーズ・マーカスは彼の侍女頭でしたから。」
「お前の母親は乳母だったな。」
やっぱり調べられていたか。
「はい。数年前にこの国に母を奪いに来ました。その後彼は王弟宮で育てられたはずです。」
「そうか、奪還したわけだな。その判断は正しかったようだ。他の妃の多くは行方不明のままだからな。リオ、お前の目にシリウスはどう映る?」
リオはシリウスを思い出しながら答える。
「聡明な子だと思いました。歳の割に落ち着きがあり冷静に物事を考え行動しています。」
陛下はリオに質問しておきながら聞いている様には見えない。
窓の外を見て何か考えている。
「ルイーズを探す事が近道か?」
「わかりません。ただ陛下が危惧している件に深く関わっているような気がします。」
「闇属性は放っておけんからな。ルイーズの顔を知るものがシリウスかお前の母親のステラしかいない。」
「でしたら尚の事。」
今回お忍びと言っても陛下が訪れている事は王宮の誰もが知っている。
元気を取り戻した国王と狩に出たり食事に出掛けたりしているからだ。
2人とも仕事には少しも手を付けずに遊び歩いている。
その間にリオは少しずつシリウスとの距離を縮めて行った。
「リオ様に魔法を見せて貰えるのです。この王弟宮に招待してもかまいませんか?」
シリウスはアイザックに聞いた。
本当はガブリエルに聞きたかったのだが運悪くばったり出会してしまったのだ。
あれ以来シリウスはアイザックを避けていたがどうやら気付かれてはいない。
「いいぞ、俺も見てみたいな。日曜日の昼間に来るよう伝えてくれ。お前は学校があるからな。」
「はい。ありがとうございます。」
「そう言えば久しぶりだな、ジョイが居なくなって寂しいか?」
「そうですね、頻繁に会っていた訳ではありませんが幼い頃からの友人ですので寂しいですね。リオ様と同じ学校に通い始めたと聞きました。元気にしているようですね。」
「リオってあの子だよな、ずっと前に魔獣討伐で来てた子だろう?」
「はい。魔獣は消えたのですぐ帰られましたが。」
アイザックは何かぶつぶつと考え始めた。
シリウスは何かまずい事でも言ったかなと思ったがリオが話すだろうとその場を立ち去った。
リオと話すのは楽しい。
ジョイに少し似ている。
自分の意思を持ち真っ直ぐ立っている。
そんな気がする。
「俺の属性は火なんだ。本当は戦闘向きなんだけど。見てて。」
そう言ってリオは手のひらを壁に向けた。すると壁は一面炎に包まれる。
「邸が燃えてしまう!」
シリウスもアイザックも慌てて立ち上がる。
「大丈夫。これ魔法だから。燃えてないよ。」
「でも熱かったし、燃える音もしました。」
「本当に焼き尽くす事も出来るけどさ、そんな事したら大事になっちゃうよ。」
「凄い。」
シリウスは眼を見開いて感動している。
「凄いな、こんな技が使える奴等がごろごろいるんだろう?我等の国には到底太刀打ち出来ん。」
アイザックはリオを見つめてそう言った。
(アイザック様はシロかな。)
魔法を披露した後にシリウスはリオと庭に来ていた。
父を見た場所だ。
迷いに迷ってあの時の出来事をリオに話した。
ステラの息子なら信用出来ると思ったからだ。
「この王弟宮に居るはずです。薬を盛られて目が見えなくなっているのは逃げ出さない為かも知れません。」
「じゃあ怪しいのは3人とマーカス夫妻に絞られたね。シリウスはどう思う?あと敬語はやめてよ。最初は俺のが敬語だったけど逆転してるじゃん。ジョイと話すように接して欲しいな。」
そうだ、いつの間にか敬語になっていた。
シリウスはアイザックを疑っている。
言うべきではないのだが歪んだ性癖を知った時から怪しんでいると告げた。
「憶測だけど義兄弟も何人かお手付きだと思う。休日に見かけた事があるし、そいつらは学校でも暗く悲しそうに見えた。前は明るい奴だったのに。」
「その子達のまわりで急に身体を鍛え始めたり異常な程潔癖になった子いない?」
シリウスは腕を組み考える。
そう言えば思い当たる。
「あとは女の子と遊びまくる子は?義兄弟の中で。」
「いる、3人。真面目な感じだったのに。」
「俺の持論なんだけどさ、性的搾取されたりそれを知った子は防衛本能って言うのかな?自分を守る為の行動だと思うんだよね。あくまでも持論だよ。」
「俺も最初知った時は気持ち悪くて自分がされた訳でもないのに手を頻繁に洗っていた気がする。」
「そう言うこと。多分お手付きにされても誰にも言えないと思うんだ。だから自分で身を守るしかない。」
シリウスはもうアイザックに対して嫌悪感しかない。
「陛下が調べているのは何かわかる?」
「魔獣が消した村は聖女が住んでいたから。」
「お、よく調べたね。聖女を消すために魔獣を操っていたとしよう。誰が操る?」
「・・・ルイーズ。」
「そうだね、正解。ルイーズは誰かに頼まれてだと思う?」
「・・・アイザック様?」
「俺はアイザック様は違うと思うな。あれは唯の性癖だ。やり過ぎだからお仕置きは必要だけど。」
「ガブリエル様も違う。幼い頃から世話になったし凄く優しくて。」
「アイザック様だって優しいでしょ?アレを知るまでは疑ってなかったろ?」
確かにそうだ。
父上に薬を盛るなど王弟殿下かその息子であるガブリエル様、アイザック様にしか出来ないだろう。
「ルイーズが認識阻害魔法を使えるのは知ってた?闇属性の危険な魔法なんだけどさ。」
「認識阻害?」
「顔を微妙に変えるんだよ。雰囲気とかさ、全くの別人にはなれないけど。君の侍女達にその魔法を使ってたんだ。君の父上のお手付きを免れる為にね。」
「顔を変えていた?」
「母から聞いたんだ。侍女は皆若くて美しかったから地味で平凡な顔に変えていたって。」
「え?侍女は5人居たけれど皆若く美しい者ばかりだった。特にステラは綺麗だった。淡い髪も美しい瞳も。ステラが母親だったらといつも思っていた。ステラだけは俺をちゃんと叱ってくれたんだ。今でも教えられた事は守っている。」
シリウスが泣きそうな顔になる。そこまでの想いをリオは知らなかった。母を奪いに来た時はまだ5歳くらいか。
「母に会いたいか?」
「ステラと呼び捨てにして悪かった。会えるなら家族と引き離した詫びを言いたい。」
「俺達が帰る時に一緒に来いよ。陛下に頼んでやろう。」
シリウスは眼を輝かせたが戸惑っている。
「父上の事を知りたい。だからまだ俺は行けない。全て解決出来たら連れて行って欲しい。」
ステラに会いたいのもあるがジョイに会いたかった。
「そうだ、忘れてたよ。陛下がジョイの手紙を預かって来たんだ。どうせ届いてないんだろ?シリウスからの手紙も届いてないってよ。この意味わかる?」
「俺も疑われてる?」
「そう。王弟一家にね。」




