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優しいクラスメイト

《忘れ物はないか》

《宿題はやってあるか》

《髪にリボンは着けないのか》

「ない。リボンもいらない。」


聖獣は母親のように話しかけてみたがルーナにとっては唯の質問だった。

母親を知らないから。


「この制服は好き。チェック可愛い。スカートが短いのもいいよね。ブーツも好き。可愛いが詰まってる。」


ルーナに侍女は付かなかった。

最低限の世話はして貰えるが離れの別邸で1人で過ごしている。

だから髪を結うことも出来ずに下ろしたままだ。

聖獣はそれを不憫に思い親の如く世話を焼く事にしているのだ。


「ありがとう。私は大丈夫だよ。陛下も時々来てくれるから。」

《来ても役には立たないでは無いか》

《独りで食事は寂しいであろう》

「貴方達がいるから寂しくないよ。行って来るね。」


毎朝馬車を用意してくれるだけで有り難い。

魔法学校へ行けるだけで感謝だ。

聖獣達と一緒に居られるし国王陛下のお気に入りだから優しくして貰える。

カーティスは特に好きでも嫌いでもないが気に掛けてくれるから優しい部類なんだろう。


学校への道のりも気に入っている。

均等に植えられた街路樹も好きだし石畳みが続く歩道にベンチ。曲がり角にある変なオブジェ。

こんな栄えた街中でも空気が綺麗だ。


「あの、歩いて帰って来てもいいですか?」


御者に聞くと困った顔をしている。


「お嬢様には徒歩の場合必ず護衛を付けるように言われています。こんな可愛らしい方が独りで歩いていたら攫われてしまいますよ。」

「そうですか、陛下に聞いてからにします。」


ルーナは帰りは聖獣に迎えに来てもらおうと思った。




学校での生活は順調だった。

意地悪な奴等は1人もいない。

同じ歳なのにみんな大人びている。


「ジョイは女の子に意地悪されがちでしょ。」

「酷い事されなかった?」

「何でわかるの?女の子の友達はひとりも居なかったよ。」

「男の子の友達はいた?」

「うん。」 

「その子が格好良ければ良いほどジョイは虐められるのよ。」


腑に落ちる。

シリウスはとにかくモテた。


「この学校はそんな幼稚な虐めはないわ。人に意地悪する暇があれば魔法の鍛錬をするから。」

「見目の良さなんて好みの問題だしね。」


この学校の生徒も先生も髪色が多彩だ。

だから髪の色なんかで差別されない。


「赤い髪初めて見た。グリーンっぽい人も居るんだね。」

「ああ、魔法の属性が色濃く出る場合もあるの。赤毛は火の属性が多いわ。」

「ジョイは光属性なんじゃないかな。お祖母様から聞いたんだけど光属性の魔法が使えるようなるまで時間がかかるって言ってた。」


ジョイを囲んで女の子達がひっきりなしに話すので名前と顔を覚えるのが大変だ。


「ジョイは伯爵家なんだってね。私もよ。レイラって呼んでね。」

「うちは子爵よ。でもこの国じゃ貴族も平民も変わりないの。差別がないのよ、素敵じゃない?」

「なりたい職業を選べるの。ジョイは何か夢がある?」


夢なんてない。

希望もない。

ルーナは答える事が出来ないでいた。


「まだ私達12歳だもんね。これから探そうよ。」

「そうだよ、貴族でも自由恋愛なんだよ!恋人も選べちゃう。」

「ジョイは向こうの国で好きな男の子はいたの?」


好きな男の子。

好きも何もルーナにはシリウスしか居なかった。

ルーナはまた黙ってしまった。


「いたのね!離れちゃったけど大丈夫?遠いから中々会えないでしょう?」

「あ、魔法でその男の子に直接手紙を届けれるよ!」

「ラインハルト先生に渡すと送ってもらえるの。何かその男の子が身に付けていたものある?」


そんな大切な物を貰ったり交換するような間柄ではなかった。


「ないの。お手紙は普通に出すよ。」

「そう、夏休みに帰れるといいね。来てもらうのもいいかもよ。」



無理だ、きっと。

だって王子の婚約者として来たのだから。

 

「元気だして、キャンディあげるから。」

 

クラスメイトの優しさがなければ折れてしまいそうだ。

シリウスに会いたい気持ちを甘いイチゴの味のキャンディと共に飲み込んだ。




リオから言われた。


「アクア、知ってる?年少のクラスに最近転入した子がいる話。すっげえ可愛いらしいよ。その子が側妃なんじゃないかな。」


こんな時期に転入するならその子がそうなんだろう。

見てみたい気もするが興味ない振りをした。

人の気持ちに疎いカーティスが話してくるか最悪連れて来るかも知れない。

冷めた気持ちを遠回しに伝える為にあえて話題に出してみる。


「新たな婚約者とは会っているの?」

「ああ、婚約者ね、こちらに着いたばかりの頃は寂しかろうと会いに行っていたけれど。」 

「けれど?」

「魔法を見たがるから最近は行ってないんだ。」


アクアは可笑しくなり笑ってしまった。


「カーティスの魔法は特殊だもんね。デイビスを連れて行って見せてあげたら良いじゃない。」

「そこまでして見せなくても学校に来ればいくらでも見れるだろ。」


カーティスは人前でも構わずアクアの腰を抱く。


「久しぶりに帰りに出掛けよう。テストも終わったしさ。」


冷めたと思っていてもちょっとした事でぐらついてしまう。

急に突き放すのも怪しいので頷いた。

友人としての情だと自分に言い聞かせそっと腰に回された腕を外した。


「みんなで何か食べに行く?」

「あほか。2人で行きたいんだ。」


カーティスはアクアの手を取り教室を出た。

きっと誰も来ない音楽室に行くに違いない。

いつもそこで楽しく過ごしていたから。


揺れるアクアをどう思っているのか知らないがカーティスは呑気にバイオリンを弾き始めた。

伏せ目がちに奏でる姿は普段より麗しく見えてしまう。


(教養の差が出ちゃうわ。私は魔法以外何もないから。)

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