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魔獣

其方の息子はまだ生きているのか?

魔法大国国王からの質問に答えたのは王弟殿下だった。


「はい。幽閉を解き今は自室にて大人しく過ごしております。以前のような邪気が消え幼子の様になってしまいました。」

「あれの事は弟に任せてある。何か問題があるのか?」

「問題か、ないとは言い切れんな。合わせてくれぬか?」


国王ではなく王弟を見ている。


「今すぐでしょうか?」

「そうだな、早い方がいい。魔獣も追わねばならんしな。」

「何か関係があるのでしょうか。」

「・・・とにかく会わせてくれ。」



王宮の奥、自室とも言えない様なこざっぱりとした一室に王子はいた。

王族に相応しい広さはあるものの寝室が分けられていない。

物も少なく違和感しかない。


「王子にはもう欲がないのです。あれ程執着した妃達の事も覚えておりません。ただ執務能力は衰えておらず日に数時間は机に座り書類仕事をしています。」

「話せるのか。」

「業務内容でしたら話します。自分の事なども解らない様で聞いても話しません。」


国王を名乗って妃を集め後宮を思うまま操っていた男が机に向かい座っている。

こちらに気付いた時は立ち上がり頭を下げたが言葉はない。


「生かして利用する事にしたのだな。」

「利用とは他人聞きの悪い。監禁もしておりません。何かやる事をと考えた時に彼が自ら書類に目を通したまでです。」

「そうか、どうしたのか気になっていたのでな。」


父である国王を閉じ込め自らを国王と名乗っていた暴君はあの頃の面影はない。

顔は上げているが目は下を向いたままだ。

片方だけ握りしめた拳をもう片方の手で覆っている。

微かに震えているように見えた。

それに気付いているのは魔法大国国王だけだった。


魔法大国の国王は部屋を後にし間も無く到着する討伐隊を待つ事にした。



2次被害を抑える為に到着してすぐに討伐隊は現地に向かう。

リオは険しい顔で遠くの空を見ている。


「リオ、魔獣の痕跡探すの得意でしょ。何かわかった?」

「カーティスだって鼻がきくだろ?簡単に言うなよ。」

「いつもならすぐ方向教えてくれるのに。」

「気配が全くないんだ。邪気も消えてる。けど空気は澱んでるんだ。こんなの今までにない。」


リオは空を見たままだ。


「空気は全体的に悪いわね。魔獣の邪気とは違うんじゃないかな。」


アクアにもわかる。魔獣は攻撃的だ。的を決めると人や土地に対してまず邪気を放ってくる。

邪気で包囲するように攻撃を始めるはずだ。


「強いて言えばあっちかな。微かに唸り声みたいなのが聞こえる。」

「リオはもう人間じゃないな、そんな事誰もわかんないよ。」

「そもそも魔法を使える事が人間とはかけ離れてるんだよ。」

「カーティスだって戦闘中は人間離れしてるわよ。」


討伐隊はリオの差し示す方角に向かった。




討伐隊が向かう先には聖獣とルーナが来ている。

気配を辿りやって来たのだ。


魔獣は巨大だ。

こんなに大きな生き物がいるのかとルーナは驚きを隠せない。

聖獣にしがみ付きながら凝視する。


《何故村を破壊したのだ》

《其方達に迷惑などかけておらぬだろう》


魔獣から覇気が薄れて消えかかっている。

彼等は返事をしない。


《あの村には何があったのだ》

《我等が居る場には其方らは現れぬはずであろう》



消えかかっている彼等は風に吹かれた砂みたいだとルーナは思った。

完全に消える前に何か言ったがわからなかった。


「最後に何て言ってたの?」

《願い事を叶えたまでだと》

《魔物に願いを託すとは嫌な予感がするな》


「でも消えたよね?もう現れない?」

《目的は達成したから現れぬだろう》

《今のところはな》


「ふうん。じゃあ討伐隊の出番はないね。」

《さあな、帰るぞ》




討伐隊がついた頃には邪気も魔獣の気配が消えていた。

もう誰も住んでいない屋敷があちこちに建っている。

貴族の屋敷よりは小さく平民の家には見えない。

下位貴族の屋敷だろうか。


「何だ此処は?」

「王都程栄えてはいないけどまあまあ大きな街じゃない。その外れに放置された屋敷なんて。」

「あっち側は人もいっぱいいたぜ。」

「普通の街なのにここだけ廃墟みたいだ。」


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