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再びこの地へ

滅ぼされた村は酷いあり様だった。

自然豊かな土地で山と森の麓に農地が広がり川沿いに民家があったようだ。

田舎の特徴なのか家屋は広いが平家が多かったようだ。

大型の魔物が一緒で潰して倒壊した後があちこちに残る。

するどい爪痕の残った遺体は原型を留めていない。


「生き残りは数名います。運良く家の中の家具の隙間から発見されました。川の反対側は焼け野原です。誰も生きてはいないでしょう。」

隣村の村長が怪我人を保護している。

「一瞬でした。私の村からもわかる程の衝撃でしたから。直ぐに火の手が上がり駆けつけた時にはあちら側は燃え尽きここは踏みぶされた後でした。

もやのような黒い塊が森に向かって行くのが見えたので暫く潜んでから救出をしたのです。」



やはり姿は見えなかったようだ。


「カーティス、何か感じるか?」

「森にはいないようですね、アクアとリオがいれば良かったんですが。彼らは広範囲を察知出来ますので。」

「まだ学生だからな、国外に連れて来るのは難しいんだ。とりあえず此処にはもう戻らん事は確かだ。」


家屋に残された痕から魔獣は少なくとも5種類はいると思われる。どれも大型で攻撃力も強く魔法の使える騎士団が取り逃した奴らだ。


「逃した我等の責もある。急ぎ国に伝えよ、攻撃魔法を使える者を全て寄越せと。カーティス、お前は一旦帰れ。優秀な学生の力も借りたいと俺が言っていた事を伝えてこい。出来れば加護の力を持つ者も欲しい。」



それ程酷い有様なのだ。

この国の者は魔獣が見えない上に察知する事も出来ない。

カーティス達にはもちろん見えるし彼らの動きが読める者がいる為に被害を最小限に抑えて倒して来た。

カーティスは急いで国に戻った。



「やっぱり私達も行く事になるんじゃない。最初から皆んなで行けば良かったのよ。サクッと倒しちゃえば直ぐ済むのに。」

「学生だから連れて行く許可を取る手続きが面倒なんだよ。けどお祖父様から直接許可が降りたから頼むよ。リオもアクアも行く事になる。」


アクアは自分の力を発揮出来る魔獣討伐が好きだ。好きというより使命感みたいなものを感じている。

また産まれた国に行けるのも嬉しい。ルーナを探す手掛かりが欲しいからだ。


「マーカス侯爵家に行けた?」

「それがな、もうあの国には居ないらしい。貴族籍を抜けて国を出たと聞いた。」

「え?じゃあ聞ける人が居なくなったわ。あとは貴族の知り合いなんていないもの。」

「王弟の息子になら聞けるぞ、気さくな方だった。まだ未婚で歳の離れた幼い娘を妻に迎えるそうだ。」

「ふうん。人の性癖にとやかく言いたくないけど気持ち悪いわ。クソ国王みたい、王家って変態なのかしら。」

「いや、お前言い過ぎだから、他では言うなよ。」

「言わないわよ、幼いって何歳くらいなの?」

「10歳くらいに見えたけどなあ、他にも何人もいたけど。1人お前みたいな気の強い娘がいたぞ、綺麗な金髪で可愛い子だから虐められていたが相手は撃沈していたな。」


10歳ならルーナではないなとアクアは思った。

もう12歳になっているはず。

あの美しい髪と可愛らしい容姿ならきっと貴族の養女にでもなっているだろうとアクアは考えていた。


もっと注意深く見ていれば10歳に見えた娘の髪が金にも銀にも見えるくらいの輝きを持つ事や深い海のような藍色の大きな瞳だったとアクアに話せたはずだ。

残念ながらカーティスはアクアに夢中で他の小さな娘達など関心が無かった。



その夜リオとアクアは両親に魔獣討伐隊に選ばれた事を伝えていた。

またあの国に行くのに難色を示していたがルーナのいる土地が魔獣に荒らされるのも心配だった。

マーカス侯爵家の事も気になる。


「私もいきたいわ。加護の力を持つ者は行けるんでしょう?剣や防具に加護を付与するからって聞いてみてくれない?」

「ステラ、大丈夫なのか?お前は失踪した事になっているんだ。」

「唯の侍女だもの。平民だし。王子が無事なら誰も気にしていないわ。」


それもそうかと楽天家な家族は旅行気分になっていた。

夫のソルムも騎士団として行く事になるだろうからと魔獣討伐よりもルーナの痕跡を探す計画を立て始めた。


「どの妃がルーナを連れて行ったか解ればすぐ見つかりそうよね。」

「あれだけの数の妃がいたんだもの、どうやって調べたらいいかしら。」

「カーティスが王弟の息子と仲良くなったんだろ?調べて貰えばいいじゃん。」

「ステラが育てた王子に頼めないか?」

「そうね、シリウス様の事も気になるわ。」

「魔獣を倒したら頼みやすくなるかもな。」


ワイワイと家族会議をした翌日にはステラも討伐隊に入れられていた。


カーティスはアクアと過ごせる事が嬉しくてはしゃいでいる。

カーティスだけでなく騎士団員達も浮き足立っているのは負け知らずだからだ。

今まで討伐で倒せなかった事は一度も無く死者すら出していない。

それが騎士団の誇りである。

だから誰も緊張感など持ち合わせていなかった。



最短で準備を整えてステラはまたこの国に来た。

ルーナを探すという希望を胸に。


騎士団は王宮へ向かう。

ステラの顔など誰も覚えていないだろう。

ルイーズが魔法で顔を変えてくれていたし今日は髪も緩く結んでいるだけだ。

あの頃はきつく引っ詰めていた。


認識阻害魔法


(物凄く高度な魔法じゃないかしら。ルイーズ様は魔法大国の出身に違いないわ。何故王宮で侍女などしていたのか。)



ステラが再びこの地に足を踏み入れたと同時に聖獣も来ていた。


《戻ったな》

《ああ、すぐジョイを見つけねば》

《あの森に行こう》


聖獣は勝手知ったる住み慣れた森へ向かった。

そこならジョイが散歩に来ると思っていたからだ。

だがジョイはあれから伯爵家の養女になった。

シリウスに会いに王弟宮に来る事はあっても森へ行く事はない。


《ジョイの匂いが消えている、森へは来ないか》

《無闇に動かぬ方がいいかも知れぬぞ》

《そうだ、あの妖精に探させよう》




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