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家族

家族が再会した事にステラも夫も子供達も浮かれていた。

家中を掃除して洗濯に追われた。

買い物に行き食事を作る。

普段なら毎日の家事に疲れて愚痴のひとつも吐きたい所だが幸せを噛み締めている。


「またステラの料理が食べられるなんてな。」

「父様、わたしはこうなるって解ってたわ!」

「俺もまた家族が一緒になるって信じてたよ。」


ステラは涙ぐむ。

愛する家族と過ごす当たり前の日常がこんなに幸せで有り難いなんて。


「母様また泣いてるの?もう大丈夫だよ。俺達が守るからさ。」

「そうよ!わたしもリオもすっごく強いんだから!」


ステラはめそめそが止まらない。

夫が涙を拭い抱きしめる。


「この国にいれば安全だよ。もう誰にも奪われたりしないからな。」


その夜ステラは何年かぶりに夫の腕の中に閉じ込められる。

初めての夜のように気恥ずかしく、けれど何度も何度も確かめ合った。



「父様、母様、起きてよー。お腹すいたよー。今日は服を買いに行くんでしょ?」

「アクアがパンを焼いたから起きてよ。紅茶冷めちゃうじゃん。」


朝方やっと眠ったばかりの2人はまだ眠い。

子供達の前でちょっとだけ気恥ずかしい。


「家族で朝食も久しぶりよね!このジャム美味しいから食べて。このパン屋さんも美味しいの。」

「俺はバターがいい。どけよアクア。座れねーじゃん。」


ちょっとした言い争いも可愛いもんだ。

少しくらいお口が悪いのも許容範囲。学校へ行けば皆こんな感じになる。

ステラはうんうん頷きながら子供達を見ていた。



街並みが美しい。

街路樹も花も良く手入れされている。

何より街中なのに空気が澄んでいる。


「綺麗だろう?魔法なんだってさ。生まれ付き浄化の魔法が使える人がいるんだ。土壌を豊かにする能力を持った人もいる。信じられ無かったけど自分の息子も娘も魔法が使えるからなあ。信じないわけには行かないよな。」


誰も彼もが魔法を使える訳ではないらしい。

幼少期から使える者は魔法学校に通うそうだ。

大人になって覚醒するのも珍しくない。


「リオもアクアも魔法に関しては特級らしいぞ。座学の出来が良くないのは俺に似たんだなあ。すまん。」

「気にしないわ。元気に育ってくれて嬉しいの。」


ちょっと雑な所があるけれど。

・・・ちょっとじゃないわね、ゴミ屋敷に住めるくらいなんだもの。


「ここが一番大きなお店なの。服も靴も下着も揃うのよ。」


平民の服はどの国も同じようなものなんだなとステラは思う。


「この国は豊かなんだ。平民でも毎日風呂に入るし服も毎日違う物を着るぞ。沢山選ぶといい。俺の稼ぎはいいからな。」

「俺達が特待生で授業料がいらないからでしょ。」

「あと騎士団の助っ人もしてるからアクア達もお給料貰ってるし。」


なるほど。

それならとステラはお言葉に甘えて買いまくった。

長年ずっと侍女のお仕着せばかり着ていたのだ。

私服があったとて着ていく所も自由な時間も無かった。


「母様すっごく綺麗。淡い色も濃い色も似合う。」

「そう?じゃあ両方買っちゃおうかしら。」

「やっぱり無地なのね。うちの家族は柄物着ないよね。お花柄とか着たことない。」

「着ればいいじゃない。欲しいの?禁止してる訳じゃないのよ?」

「んーん、いらない。わたしワンピースもスカートも着ないし。」

「え?」


聞けばアクアはこの国に来てからリオのお下がりばかりを着ているらしい。


「学校の制服もお下がりよ。先生が良いって言ってたし、騎士団の魔獣狩りに行く時も男用しかないから。スカートを着る機会もない。わたし強くなる為に一生懸命なの。」


男の子っぽい物を好む女の子は珍しくはない。

年頃になればスカートも着たくなるだろうとステラは楽観的に受け止めた。


リオは普通なのかと思い観察していると何やら不思議な物を持って来た。


「父様、これ買っていい?プロテクターだって。カッコよくない?」

「いいけどお前いつ使うんだ?」

「敵からの攻撃で大事な部分を守れるんだよ。触ってみてよ、硬いでしょ。」


夫は感動している。自分の分も買う気に違いない。

大事な部分を守るのも大切だが心臓を覆う方が先ではないか?と思ったが言うのをやめた。

ちょっと抜けた所が可愛い人なのだ。


街で食べる食事も美味しかった。

好きな物を頼み食べられるのは幸せだ。

其処彼処に自由を感じ喜びで叫びたくなる。


「お酒を飲んだ母様は可愛いね。」

「何を飲んでも可愛いぞ。」

「あ、私達の先生が可愛い母様に会いたがっていたわ。」


王家から出られない母親を救いに行くから暫く学校を休むと伝えた際にステラに会ってみたいと言っていたのを思い出したのだ。


「俺達にかけられた加護に興味があるんだってさ。でもこの国ならそんな人山ほどいるよね?」

「山ほどはいないんじゃないか?騎士団だって魔法が使えるのは半分にも満たないからな。」

「魔法学校の生徒は全員使えるよ。」

「使える子供だけ入れるからな、当たり前だ。」


魔法学校の生徒数は少ない。

1学年に1クラスしかなく生徒は20人程だ。


「この国の王子もいるのよ。私と同じクラスなの。良いやつだけど私のが遥かに強いからいつもコテンパンにしてやるわ。だから子分みたいなものね。」


また王子か。もう王家とは関わりたくない。

ステラはちょっと嫌な顔をした。


「良い奴だよ、俺達に敬語だしな。魔法を教える代わりに勉強を教えてくれるんだ。」

「珍しいお菓子もくれるわ。」


餌付けされてるような気もするがこの2人なら心配は無さそうだ。


「あんまり深入りしないでね。王家なんて面倒くさいんだから。」


ゆらゆら歩くステラは可愛い。

ソルムは妻の腰を抱き寄せる。

今日も寝かせてやれないかもしれないな、そんな事を思いながら家に着いた。



子供達は自分で起きて支度をし、朝ごはんを食べて学校へ行った。

仲睦まじい両親の邪魔をしないように気を使っているのだ。


漸く目を覚ましたステラを後ろから抱きしめながらソルムは囁いた。

「あいつらの弟か妹が出来てしまうな。」


・・・・・



決して忘れた訳ではない。

この国に来るまでの怒涛の数日考えなかっただけだ。


「リオとアクアは毎日ルーナの星をみている。俺にはわからんからな。異変があれば教えてくれるさ。無事って事だ。」


星は不思議だ。ルーナの星が輝きだした。

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