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再会

《戻って来たな。懐かしい匂いがする》

《何故戻れたのだ》

《聖女の血を引く者に引き寄せらたのだ》

《聖女などどうでもよいな、ジョイが心配でおれん》

《うむ。ジョイの元に戻らねばならんな》


深い森の中で聖獣は遠くを見つめた。

神聖な森の空気が澱んでいる。


《魔獣の匂いだ。我等が来たから奴らは消えるだろう》

《そうだ、2、3日もすれば全て消滅する。聖女がこの地に来たみたいだしな》

《聖女と呼べるほど強い力は感じない。我等の姿を見ることの出来るジョイが聖女だと思ったのだがな》

《うむ。だがジョイは少々乱暴なところがある》

《ああ、虫を容赦なく殺すしな。あんな可愛らしい容姿で一撃で仕留めるのはどうかと思うぞ》


ルーナを養女にした料理長のルーカスは手作りで虫を仕留める道具を作った。

50センチ程の棒の先に手のひらのような薄い板が付いている。

ルーナはルーカスが虫を仕留めるのを見て真似するようになった。


《野蛮な娘に育たなければよいがな》

《うむ、心配だ》


それよりも心配なのはいつも1人でいる事だ。

誰か気にかけてやってくれるといいけれど。

神聖な獣達は何も出来ないのが歯痒い。


《我等くらいなら行きたい場所へひょいっと行けるのではないか》

《そのひょいっがわからぬから困っているのだ》

《こんな日が来るとわかっていれば習っておいたのにな》

《聞いていない我等が悪いのだ》





「母様!母様!」

子供が2人泣きながら母親に抱きついている。

母親も泣きながら子を抱き寄せる。

その横で父親も涙ぐみながら妻の肩を抱いた。


母様と呼ばれた女性はステラだ。

手紙のやり取りが出来るようになりステラが孤児院に行く曜日を伝えていた。

表向き拐かされた事になっているが夫のソルムと計画を立てた上で逃げたのだ。

アリッサまで着いてくるとは思わなかったが、2組の夫婦として船に乗れたので怪しまれずに済んだのは幸いである。


「とりあえず家に行こう。アリッサさんも一緒に。」


アクアとリオはステラに腕を絡ませて離れない。


「リオもアクアも背が伸びたわね。もう何十年も会ってない気がするけれど。」

「5年よ、母様。大事な母様との5年を奪われたのよ。許せないわ。」

「そうね、でもこうして会えたんだもの。感謝しなくちゃ。」

「母様、誰に感謝するの?母様は帰って来たけどルーナはいないわ。消えたままよ。」

「俺もアクアもちゃんと星を読んでたよ。だからルーナはまだ生きている事を知ってる。いずれまた助けに行く。」


アクアばかり話していたが口を開いた息子が僕から俺に変わっていたのをステラは少し寂しく感じる。


「もう小さな子供じゃないのね。」


リオの背はもうステラと同じくらいだ。ソルムに似たのか同じ年頃の子よりも大きい気がする。

貴族の子供達みたいに髪は伸ばしておらず短い。


アクアは髪が随分伸びていた。気の強そうな眼差しはあの頃のままだ。背筋をいつも真っ直ぐ伸ばし凛としていた。

変わっていない。


ルーナ。もう顔を見てもわからないかも知れない。面影は残っているだろうか。淡い淡い髪色と夜の海のような深い青の瞳を見ればわかるだろうか。私達の事は覚えていないと思うとやりきれない。


「ルーナにも絶対会えるよ。俺達の娘だ、運は強いはずだからな。」


沈んだステラを見てソルムはそう言った。


「母様、俺もアクアも魔法学校に通ってるんだ。俺達の魔法は攻撃に特化してるんだって。だから魔物退治に参加したんだよ。」

「アクアも参加したわ。父様の騎士団の後方から援護するの。楽しかったわ!」

「俺の火炎とステラの凍結があれば無敵だよ。母様にも見て貰いたいな。」

「父様の剣にも付与出来るのよ!私達3人で魔物の集団を8割方やっつけたの。首を落とさないと死なないから大変なのよ。」


え?


「え?魔物退治?貴方達も?だってまだ12歳よ?アクアなんてまだ11じゃないの!どうしてこんな子供を行かせるの?」

「え?強いからだけど?」

「母様の加護の結界で守られてるから死なないよ?」


ステラは驚いた。

別れ際に魔法を攻撃に使わないようにと言ったのに。

あれ?どうしてこうなった?


「俺に似ちゃったかなあ。ははっ。」

「そうよ、父様に似たのよ。だから雑なのよね、色々と。」

「父様ガサツだもん。起きれないから服着て寝るんだよー。」

「靴下裏返しでも気にしないもんね。」

「次に履くときは元に戻ってるから気にならんぞ。ははっ。」


3人が暮らしている家に来てわかった。

だいぶ大雑把な暮らしをしているようだ。


「さ、ちょっと散らかってるけどとりあえず座ってくれ。」


ソルムは物が散乱したテーブルの下の椅子を並べてアリッサと友人に薦めた。


「ちょっとってレベルじゃないわね。ゴミ屋敷じゃないの。ステラ明日からお掃除三昧ね。日用品を買いに行く時誘ってよ。私はハインツ様の家に泊めて貰うわ。」


ステラもそちらに泊まりたいと思うくらい汚い。

居間がこれだけ汚いのだから寝室はどれ程なのか。


(ちょっと考えたくない。)


ステラの眉間に皺が寄っている。

3人は察した。


「君を迎えに行くから休みを貰ったんだ。まだあと3日ある。さあリオもアクアも掃除をして片付けよう。ステラをこんな部屋に寝かせられないもんな。」


(いや、迎えにくる前にやっとけよ)

とステラは思う。

お口が悪くなるのは許してほしい。


それくらい汚いのだ!


「アクア、バケツ全部に水をちょうだい。リオはそれをお湯にして。魔法なら一瞬よね。」

「母様わかってるうー。アクアの水魔法で窓と床が綺麗になるよ。」

「じゃあ布団を全部干したらそれも洗える?」

「まかせて、母様。あ、待ってーー!帰らないでーー!ハインツ様ーー!」


呼び止められたハインツは風魔法で布団を乾かしてくれた。

魔法を初めて見たアリッサは褒めちぎったので気分よく帰って行った。


子供達の魔法は便利だ。


「小さな頃から詠唱しなくても使えるのよね。この国はみんなそうなの?」

「んーん、全く詠唱しないのはリオとアクアだけ。」

 

口を動かしながらテキパキと片付ける。

汚れた箇所を見つけるとアクアが水魔法で洗った。


何故こんな力があるのだろうか。

その答えに近い事をソルムが教えてくれた。


「この家さ、ステラが産まれた家なんだって。」

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