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友達

アイザック王子は学校を休み王弟宮で過ごしている。

口数は少ないがいつも泣かないルーナが塞ぎ込んでいるからだ。

養父も養母も忙しく殆ど構っていない。

アイザックは気になり侍女頭に聞いてみた。


「ジョイは食事以外はひとりなのか?夜もひとりで寝ているのだろう?」

「そうですね、歩く前は出来るだけ一緒に過ごすようにしていましたが最近はひとりでも機嫌良くしてましたので。」


アイザックは驚愕した。

世話も出来ないのに何故養女にしたのだろう。


「また泣いていたのか?目が腫れているではないか。」

「はい。大切にしていた子が消えたと言っていましたから猫かうさぎをこっそり育てていたのでしょう。」

「まだ4歳だろう?育てる事など無理では無いか?」

「庭に来る猫に餌を与えるくらいなら出来るのではないでしょうか。」


ルーナは悲しげに窓の外を見ている。

よほど可愛がっていたのか時々頬に涙が光った。


「父上、明日からシリウス王子がこの屋敷で暮らす事になります。慕っていた乳母と侍女が居なくなりまだ気落ちしていると聞いております。空いた時間にジョイの面倒を見させても宜しいでしょうか。」

「ああ、料理長の養女にした娘だな。お前が大事そうに抱えて来た時に見たがずいぶん可愛らしく成長したな。」

「料理長夫妻とは全く似ていませんからね。父上が養女にすれば宜しいのに。」

「それも考えたんだがな、兄上がまだ荒れていたから止めたのだ。何処からか美しい娘の事はすぐ聞きつけるからな。王妃のおかげで落ち着いている今なら考えたけどな。」

「今からでも考えてください。殆ど放置されているので無口な子になりました。あの容姿を活かせないとは残念です。」


養女にするのはもう少し様子を見てからだと言われてしまった。

返事を貰うまでにジョイにマナーを学ばせようとアイザックはマナー講師を探す事にした。



翌日シリウス王子は侍女頭のルイーズに連れられてやって来た。


「マーカス侯爵夫人ではないか、そなたがシリウス王子の侍女を務めていたのだな。」

「ご無沙汰しております。アイザック王子殿下。シリウス様がこちらに参りましたので私も本日よりマーカスの屋敷に戻ります。」

「そうか、時々はシリウス王子に会いに来てやってくれ。」

「畏まりました。シリウス様もマーカス邸へ遊びに来て下さいませね。美味しいお菓子を焼いてお待ちしています。」


優しいルイーズに微笑まれてシリウスの心は少しだけ和らいだ。

アリッサもステラもルイーズもいないこの王弟宮で暮らすのだ。

勉強をして力をつけてきっと2人を探し出すと決めた。


「今まで世話になった。感謝するルイーズ。」


ルイーズの乗った馬車が見えなくなるまで見送った。


「シリウス、俺は今から仕事がある。お茶の時間までひとりになるが問題ないか?部屋にいてもいいし屋敷を探索しても構わんぞ。あと2時間程だ。」

「問題ありません。2時間したら何処に行けばいいですか?」

「この庭に来てくれ。茶を用意させる。」



ひとりになったシリウスはぶらぶら歩き始めた。王宮では決められた場所しか行けなかったし屋敷を探索なんて本当に良いのだろうかと思う。

庭をぶらついていると小さな門を見つけた。森に行く道がある。

シリウスは迷ったが少しだけぶらついたら引き返そうと思い行く事にした。


歩いていると開けた場所に出た。この場所だけ丸く木を切り倒したようで切り株がベンチのようになっていた。

振り返ると遠くに門が見える。

切り株のひとつに座り空をながめた。


(よくステラが夜空を眺めていたな。星を見ていると言っていた。)

今はまだ明るくて星は見えない。

シリウス王子の瞳はまた潤んで来た。

ハンカチで涙を拭うと森の奥から小さな女の子が歩いて来るのが見える。

淡い髪の小さな女の子。薄いブルーのワンピースを着ている。


「あ、ジョイではないか。」


女の子はショーンのお気に入りのジョイだった。

ジョイは涙を流しながら歩いていた。

ハンカチで拭う事もせずに。

だからシリウスに気づかなかったのだ。


「どうしたのだ、なぜ泣いている?怪我をしたのか?」


自分が泣いていた事を忘れてジョイの涙を拭いてやった。

ジョイは何も言わずにシリウスを見て驚いたような顔をしている。


「今日から王弟宮で暮らす事になったのだ。ガブリエル様が教師になってくださる。」


ジョイは泣き止んで小さく頷くと立ち去ろうとしたがシリウスは手を掴み引き留めた。


「お前も悲しい事があったのだな。泣いていた事は誰にも言わん。存分に泣け。俺も泣いていたから解る。」


ジョイはシリウスの顔を見た。涙の跡があり目も腫れている様に見えた。孤児院で会った時はもっと明るい顔をしていた記憶がある。


「もう泣き止みました。」


シリウスは切り株に座りルーナにも座る様に言った。


「いつも男のような服を着ていたが今日はワンピースを着ているのだな。」

「アイザック様が」

ルーナは口数が少ない。

「買って下さったのか?」

「はい。いっぱい。」

「そんなに沢山あるのか?」

「はい。」

「ならば毎日見せてくれ。ここに散歩に来よう。ひとりでいると泣いてばかりだが2人なら話ができる。お前の話を聞いてやる。人に話すと楽になると侍女が言っていた。」


ルーナはなんとなく腑に落ちた。

シリウスといれば涙が出ない。


「はい。」

「お前は勉強の時間はないのか?」

「明日からマナーを習います。」

「ああ、だからワンピースなのだな。その内ドレスを与えられるかもな。お前に最初にドレスを贈るとショーンが言っていたがアイザック様に先を越されるな。」


シリウスは楽しげに笑った。

ルーナは与えられる物を身につけるだけなのでワンピースでもドレスでも何でも構わなかった。


「あ、アイザック様より先に俺が贈ろう。アイザック様に内緒にしなきゃな。ガブリエル様に相談しよう。」


ルーナは決してドレスが欲しい訳ではないのだがやっぱり誰もルーナの好みを聞かないんだなと思った。

ルーカスからもジーナからも聞かれた事は1度もない。

ジョイは活発だからと言って男の子の服を着せられていたしアイザック様も突然マナーを学べと言って大量のワンピースを持って来た。


「ジョイは何故いつも男の服を着ていた?」

「わかりません。父と母に与えられたので着ていました。」

「お前が好んで着ていた訳ではないのか?」

「ちがいます。」

「では好きな色は何だ?好みのドレスを作らせよう。」


ルーナは好きな色を考えた。が、わからない。ドレスなんて見たこともない。


「わかりません。ドレスを見た事ありません。」

「すまん、料理長の娘だったな。ドレスなど必要ないからな。だがひとつくらいあっても構わないだろう。じっくり考えるといい。好みの色くらいあるだろう。あ、でもじっくりだとアイザック様に先を越されてしまう!早く考えろ、いま考えてくれ。」


ルーナは可笑しくなって少し笑った。


「笑っていれば福が来るそうだ。これも侍女から聞いた。なるべく笑って過ごそうな。」

「はい。」


2人はなんとなく友達になった。

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