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ガブリエル王子とアイザック王子

《ジョイよ、我等の姿はお前にしか見えぬ。他の者には声すら聞こえん》

《我等の事は他言無用だ、決して話してはならぬ》


今日は侍女もメイドも忙しくルーナは部屋で遊ぶように言われておもちゃに囲まれている。

聖獣がいるので1人きりではない。


「どうして?」


《皆が見えぬものを信じるとは思えん》


「どうして?」


《人とはそういう生き物なのだ》

《ジョイが特別なのだな》


《どうして?》


《むむっ、どうしてしか言わぬな》

《何でも知りたい年頃なのだ》


「変な子」


《しかも気まぐれだな》


ルーナは変な子に抱きつくのが大好きだ。


《側から見たらジョイが変なポーズをしている様にしか見えん》

《ジョイこそ変な子なのだがな》

《人は皆変わっている、それが個性なのだ》



ルーナは王弟宮の厨房側の部屋で過ごしているが時々アイザックとガブリエルに連れられて孤児院に行った。

あまりの可愛さに息子達がかまうので王弟殿下が許可を出したのだ。

ルーナは人前ではあまり話さない。無口だが人懐こく誰に抱っこされても幸せそうに笑うので人気者である。


「ほんとに可愛いな。どんどん美人になっていく。国王の息子に見初められてしまうぞ。」

「それは俺が許さん。だが料理長の娘だから王族には嫁げない。良かったな。」


休憩時間になると真っ先にショーンがやって来た。


「ジョイ、今日もご機嫌だな。ほらクッキーだ。」

「僕もカップケーキを持って来たよ。」


「待てお前たち、ジョイも決められた時間にしか食べれんぞ。預かってやる。」


ジョイは国王の息子達に混じって絵を描いたり絵本を読んでもらったりしていた。


「なんだこれは?ジョイこれは何だ?動物だな。」

「うーん、馬?ではないな。」

「ははっジョイの絵心はまだまだだな。」


《失礼だな、ちゃんと我等とわかるではないか》

《羽も描いてあるしな》


ジョイの絵は上手くはないが聖獣は自分達を描いてくれた事に感激している。


「女の子ならドレスを着たお姫様を描くんじゃないの?」

誰かがそう言った。


ジョイは料理長の娘だ。ドレスなど見たことも着たこともない。

活発なジョイはいつも男の子ような服を着せられている。色味がピンクやラベンダーなので辛うじて女の子とわかる。


「もう少し大きくなったらドレスを着せよう。」


ショーンは絶対自分が贈ると心に誓う。



ガブリエルとアイザックは教室にいる国王の落とし胤達を見回した。

ジョイの周りにいる者居ない者、1人で本を開く者、外に出て遊ぶ者。

週に1度学校の休みになると子供達に勉強を教える様に父に言われた。

秀でた者を見極めろということだと2人の息子は理解している。


1人だけ別格と呼べる子供がいる。

シリウス王子。

国王には全く似ていない。

母親に似たのだろう。

目鼻立ちも整い精悍な顔立ちをしている。

髪はありふれた金髪だが瞳は黒に近いがよく見ると濃い紫色で珍しい。

歳の割に落ち着いた話し方で知識欲もある。

何より冷静だ。トラブルがあっても落ち着いて順を追って解決する事が出来る。


「シリウスはジョイの側に行かないのか?」

「はい。ジョイは誰が来ても嫌がらないし嬉しそうにするけれど心は開いてないような気がします。だから僕は遠くから変化を見ているのです。」

「ふうん。変化はあるのか?」

「はい。たまに空を見上げて頷いています。小さな子にしか見えない何かが見えるのでしょう。妖精とか。」

「ははっ。だとしたらジョイは聖なる者だな。大きくなったら取り合いだ。」

ガブリエルはシリウスの髪をくしゃっと撫でた。


「この中に王太子に向いている者がいると思うか?」

「わかりません。どの様な者が向いているかわかりませんが兄弟達のそれぞれの性格はなんとなく理解しました。」

「ショーンはどうだ?仲が良いであろう?」

「ショーンは素直で優しいです。争いが嫌いでテストも1番になろうとは思ってないんじゃないかと思いました。けれどジョイは譲らないと言っています。」


シリウスは何人かの義兄弟の事を話した。

人をよく見ているなとアイザックとガブリエルは感心した。


授業が始まったのでルーナはアイザックが先に連れて帰って行った。

「ジョイ、父上がお前を引き取れば良かったのにな。そうすれば義妹になれたのに。」


ひとりごとの様な呟きはルーナには伝わらない。


「雨が降る」

「なんだ?そんな事がわかるのか?」


王弟宮に着く前に本当に雨が降ってきた。

ジョイは雨を予報出来るわけではない。

聖獣が雨を嫌い降る前に突然姿を消すから知っていたに過ぎない。


「雨の匂いした。」

「ああ、だからか。子供は不思議な力を持つからな。いつからその力が失くなってしまうのか。」

ルーナはじっとアイザックを見た。

「今日は王弟宮に来客がある。皆忙しくて構ってやれんから私の部屋にいるが良い。夕方になれば兄上も帰ってくるしな。」


雨で肌寒かったからか孤児院で遊んで疲れたからなのかジョイは眠くなりアイザックに抱っこされたまま眠ってしまった。


「眠ると重くなるのは本当なのだな。手足も温かい。本に書いてある通りだ。」



アイザックはルーナをソファに寝かせて毛布を掛けてやる。

王族のソファは無駄にでかい。

ルーナは暖かくなったのか両手を上に伸ばし足も投げ出した。赤子のような寝姿だ。

クスッと笑うとルーナの頭の横に座り溜息を吐いた。



王座は父である王弟殿下が奪還するだろう。これ以上あの愚王を野放しには出来ない。

父は水面下で信頼の置ける貴族達と動いている。

自分達兄弟も将来の国王候補なのも知っている。

その為の教育を受けているからだ。


アイザックは兄のガブリエルが国王になる事になるだろうと密かに思っている。

温和で賢く立ち回りが上手い。

女性のあしらいも上手く話題も豊富。

何より名前だ。平和の象徴のような名前を付けられたのは父や母の願いが込められているに違いない。


愚王の息子達を育てるのは側近候補を育成する為だろう。彼らも12歳になるまでには選別されて行く。


(父上ならあの愚王を倒す事も容易いはず。何故サクッと捕らえないのか。母上の仇を取るつもりなら気が緩んでいる今がチャンスだ。)


王弟宮では密かに貴族の家長や大臣職の者が集まり始めていた。

料理番は忙しくてルーナなどかまっている暇などない。

執事も侍女もメイドも総出で動き回っている。


アイザックもいつの間にか眠っていた。ルーナの温かさを抱きしめながら。

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