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第五話 「花恋は頑張った!」


 

 今日は少しだけいつもよりも軽やかな足取りであの公園に向かう。れなはまた一人で足元を見ながらゆらゆらとブランコを漕いでいた。私が隣に座るとれなはハッと気がついたようにこちらを見て話しかけてきた。


 「今日も来てくれたんだ?」


 そう言いながられなはにこやかに微笑んだ。


 「何か考え事?」


 「ううん、大したことじゃないから。花恋はなんだか嬉しそうじゃん。そっちこそ何かあったの?」


 「え、やっぱり嬉しそうに見えた?」


 そんなに顔に出てたのかと思って少し驚いた。


 「で、何があったの??」


 「今日ね、頑張って先輩に話しかけてみたの!」


 私がそういうと意外だったのかれなは目を丸くしている。


 「ほんと?! 花恋頑張ったんだね!」


 そう言いながられなはブランコを降りて私の手を握る。


 「で、どんな話をしたの??」


 れなはさっきと打って変わって目をキラキラさせながらそう尋ねる。


 「えっとね、私が"おはようございます!"って言ったら先輩が"おはよう"って返してくれたんだ!」


 私は自信満々にれなにそう言った。


 「えっと、それで?」


 それでとはどういうことなのかわからなくて私が困ったような顔をしていると、


 「他に何か話してないわけ?」


 とれなが言う。


 「え、うん。朝通りすがってそれきりだけど......」


 れなははじめ少し呆れたような顔をしていたが何か腑に落ちたように私の頭を撫でる。


 「先輩に挨拶できてえらいね~ 花恋は頑張った! うん」


 れなはなんだか小さな子どもを諭すようにそういうので私は


 「え、何かだめだった??」


 とれなに尋ねた。


 「頑張った! けどもうちょっと頑張ろ? 挨拶だけで喜んでたらいつの間にか卒業になっちゃうよ?」


 れなの言葉はいつでも説得力があって私にはよく効く。納得しつつも少し悔しいので言い返した。


 「卒業しても先輩を追いかけるからいいもん! 大学だって同じとこ行けばいいし」


 「先輩の行きたい大学知ってるの? それに頭良いとこだったらどうする? ちゃんと同じところに入れるの?」


 れなの言葉がグサグサと突き刺さる。私、一条花恋はあまり勉強が得意ではない。それを突かれるとなんとも言い返せない。


 「せ、先輩のためだったら頑張って勉強するもん」


 私は苦し紛れにそう答えると、れなはふーんと少し冷たい目線でこちらを見つめてくる。


 「まあいいけどさ、ちょっとずつ頑張ってかなきゃね? 挨拶できたことは褒めてあげます」


 「なにそれ、なんかえらそう」


 「え、じゃあ、"ちゃんと挨拶できるお姉さんを尊敬してます!"とか言えばよかった?」


 とれなはわざと私を揶揄うようにそう言う。


 「えー、なんかそれはれなっぽくないから嫌」


 「もう、花恋はわがままなんだから!」


 と言ってれなは微笑んだ。


 「そういえば、私が来た時少し元気がなさそうだったけどどうしたの?」


 と私は思い出したように尋ねる。


 「今ずっと別の話してたから何とか誤魔化せたと思ったんだけど、花恋って結構ちゃんと覚えてるタイプ?」


 「うん、だって一回気になったら忘れないもん。それに、いつも元気なれながそんな様子だったら力になってあげたいでしょ?」


 「どうしても気になる?」


 「うん」


 「本当の本当に?」


 私はこくりと頷くとれなは観念したように話し始める。


 「私、家出しちゃった。」


 




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