第三話 「また来ちゃった......」
学校帰り、また何となくあの公園に足を運んでしまった。ふと公園の中に目をやると、れながブランコを漕いでいた。れなはすぐにこちらに気がついたようで微笑みながらこちらに向かって大きく手を振っている。
それをみて自然と私がブランコの方へ向かうと、れなはブランコを降りて、こっちだと言うようにぽんぽんともう片方のブランコを叩く。
「また来てくれたんだ? もしかして私のこと好きなの? なーんてね」
れなは昨日と同じく少し冷やかすように笑った。それを聞きながら自分でも意外なほど素直にれなの隣のブランコに座った。
「何となく来ちゃった。自分でもよくわかんない」
「そっかそっか、それで何か進展はあったの?」
満足げな顔でれなは私にそう問いかける。
「あるわけないじゃん、昨日振られたばかりの相手にそうやすやすと話しかけられる? どんな顔してあえばいいかもわかんなかったんだから......」
するとれなは何だそんなことかとでも言いたげな顔で呟く。
「昨日頑張るって言ってたのに、そうやって先延ばししてるといつまで経っても振り向いてくれないよ?」
れなの言葉が胸によく刺さる。
「うるさいな~、れなは誰かと付き合ったことあるわけ?」
そう言うとれなはきょとんとした顔をしている。
「どう見える?」
少し経ったあと不適な笑みを浮かべながらそう問いかけてきた。
「最近の小学生って......」
そう言いかけると、
「どうだろうね?」
とはぐらかされてしまった。
「とにかくまずは友達から始めたら? その先輩とはどういう関係なの?」
「別に同じクラスとか同じ部活ってわけじゃないんだ。だから話しかけるにも機会がなくて......」
そういうとれなは不思議そうに首を傾げる。
「うーんと、それで何で好きになったの......?」
「入学式の日、お気に入りのキーホルダーがカバンから取れちゃって、それを拾ってくれたの」
「それで?」
「えっと後は、廊下でたくさんのプリントを運んでたら手伝ってくれたよ」
「うーんと、それで?」
「それだけだよ?」
何でこんなに問いただされてるのだろうと思いながらもれなの質問に答えた。
「それだけ?」
「え、うん、そうだけど」
そう答えるとれなは何だか少し呆れた顔をしている。
「もしかして、花恋ってすっごく単純?」
「......そんなことないよ! 好きになる理由なんて人それぞれじゃん」
そういうとれなは私を諭すように尋ねる。
「えっと、じゃあその先輩のどこが好きなの?」
「優しくて、可愛いし......あとかっこいい」
私が少し顔を赤らめながらそう答えると、れなは額に手を当てながらやれやれというような顔をしている。
「花恋ってなんか、ううん、なんでもない」
れなは何故かブランコを降りて私の頭をよしよしと撫でた。
「なんか馬鹿にしてない?!」
「ううん、いいと思うよ? 花恋のそういうところ」
何故か下に見られているような気がしたけど私を本当に馬鹿にしようとしているわけではないことは何となくわかるので何も言わないことにした。
「なんかわかんないけど私すごく花恋のこと応援したくなっちゃった。無事に付き合えるといいね?」
「えっと......それはありがと」
れなの前だと何故か不思議と素直になってしまう。
「とりあえず本当に付き合いたいならもっと先輩のことを知ること! 花恋が先輩のこと大好きなのはわかったけど、流石に関わり薄すぎ! もうちょっとがんばりな?」
「はい......」
こんな小さな子に相談に乗って貰ってるなんてやっぱり私情けないなぁ......