第十三話 「秘密のお泊まり④」
「着替えとかちゃんと持った?」
「うん」
れなはこくりと頷く。
そうして2人は部屋の外に踏み出した。
幸いうちはダイニングを介さずにお風呂場に行けるからその点は安心なんだけど......
再び階段を降りて、ダイニングへ続く扉の前を通り過ぎようとするとガチャリとその扉が開く。
「あら、お風呂?」
間一髪れなは私の後ろにピッタリくっついて姿を隠した。
「あ、あーそう、今から」
「そう」
そう言ってお母さんが扉を超えてこっちに向かってくる。れなは私の背中にぎゅっとしがみついた。
「あ、え、お母さんはどこ行くの?」
「急にどうしたの? 普通にトイレに行こうかなって」
お母さんは構わずこちらに向かってくる。私は廊下の先にあるトイレに向かうお母さんが通り過ぎるまでぎこちない笑顔で見送った。
お母さんは不思議そうな顔でこちらを見つめていたけど、なんとかバレなかったと思う。というかそうだと信じたい。
お母さんがトイレに入るのを見届けると私達はほっと胸を撫で下ろした。
とはいえ今のうちにお風呂場に向かわなくちゃ......
そうして私はれなの手を引いて急いでお風呂場に駆け込むのだった。
「ふぅ......」
ふとれなの方を見ていると先程まであんなに余裕そうにしていたというのにかなりドキドキしている様子だった。
「れな、大丈夫?」
「えっ、うん! ぜーんぜん」
れなは少し強がっているのか私を心配させないようになのか毅然としている。
「ごめんね、いつかこんな形じゃなくてちゃんとうちに呼べるようにするから」
その言葉に全く根拠はなかったが何故だかいつかそんな日が来るんじゃないかと思ってしまった。
「......うん! でもこうして花恋と一緒にお風呂入れるし私は良かったかな~」
「別に普通に家呼んだ時でも入りたいなら一緒に入るよ?」
「え、そ、そっか」
れなは返事が意外だったのか少し驚きながらも満更でもない顔をしていた。
「花恋ー? 何かあったの?」
突然扉の向こうからお母さんの声がした。
「え、何でもないよー。なんで?」
れなのことがバレたのかと思うと冷や汗が止まらない。
「今花恋なんか喋ってなかった?」
「うぇっ、いやただの独り言だから気にしないで!」
「そう」
お母さんはの足音は遠くの方へと消えていった。全く油断も隙もあったものじゃないね。
「じゃあ入ろっか」
私は徐に服を脱ぎはじめる。何の気なしにそうしたけど、れなも服を脱ぎ始めると急に少しだけ恥ずかしくなってきた。意識しなければ良いだけなのに一度意識し始めるとなんだか気まずい。
「どうしたの、花恋?」
れなは生まれたままの姿で頭にはてなを浮かべるような顔でこちらを見つめてくる。れなの眼差しはとても純粋だ。
「な、なんでもない!」
そう言って服を一気に脱いでしまうと何だかれなの視線を感じる。
「な、なに......?」
「え、いや? 花恋ってその、意外と大きいんだなぁって」
そう言われて余計に恥ずかしくなって身体を隠した。
「もしかして花恋、恥ずかしがってる? 別に恥じることじゃないと思うけど。ただ、花恋もその、ちゃんとお姉さんなんだな~って」
そんなことを言われても昔から人に身体を見られるのが苦手でどうも温泉とかにもいかないものだからこういうことには全然慣れていなかった。
「う、うるさいな~。早く入るよ」
そう言って私はそそくさと浴室へ向かった。




