第十二話 「秘密のお泊まり③」
とりあえずパパッとご飯食べちゃわないとね......
私は足早に階段に降りてダイニングへと向かった。
「ほら、食べなさい」
「はーい」
テーブルに並ぶのはグラタンだった。レンジで温めてくれたみたいでちゃんと熱々だ。
「今日は友達とお出かけ?」
「あーうん、そうだよ」
うん、嘘じゃないからね......
「遠くに行ったの?」
「ううん、その辺をぶらっとしてただけ」
「そう、珍しいわね」
「えっ、そ、そうかな~」
「だって花恋休日は家で過ごすことが多いでしょう? 彼氏でもできたのかと思っちゃった」
そんなふうに思われてたんだ......
「や、やだなぁお母さん、彼氏なんていないって」
だって私が好きなのは......
「もう高校生なんだからそういう話の一つや二つあってもいいと思うけどね?」
「あ、あはは、そうだね......」
お母さんには言えないや、女の子が好きだなんて......
私はいつもより早めにご飯を食べて食卓を後にした。
「ごちそうさま!」
「お風呂沸いてるから早めに入りなさいよ。ガス代勿体ないからね」
「はーい」
少しの時間だけどれなを1人にしてしまったから心配だ。早く戻ってあげないと、変なこととかはしてないよね......
私は再び階段を駆け上がって自室の扉を開ける。
すると、れなは私の枕を抱えてベッドに座っていた。入ってきた私に気づくと
「おかえり~」
と言って私に微笑む。
「ただいま~1人で大丈夫だった?」
「もしかして子ども扱いしてる? これでも私家では1人で過ごす時間が多かったんだけど」
「あっ......それもそっか」
「というか花恋、心配してくれたんだ」
そう言いながられなはいじらしく笑った。
「ち、ちがうし。ほら、私がいない間変なことしてないかな~って気になっただけ」
「も~花恋は素直じゃないなぁ」
そう言ってれなはニマニマしている。憎らしい、この笑顔。
「というか花恋何か見られちゃまずいものでも部屋にあるの?」
「うぇっ、まぁ大したものはないけど、そりゃあ一つや二つくらい......」
「ふ~ん」
「えっ、何その顔」
「なんでもないよ?」
れなの表情はさっきまでの心得顔からすました顔に変わっていた。
「むー、まあいっか。あ、そうだお風呂沸いてるって」
「沸いてるから?」
「だから入らなきゃって......」
そっか、てっきり別々に入るものだと思っていたけど状況的に1人でれなをお風呂に行かせるのって無理があるというか危険すぎるよね......
「一緒に入る......?」
「うん!」
れなはどうやらご機嫌の様子。すごくルンルンしている。
「楽しそうだね」
「だって誰かと一緒にお風呂に入るなんて久しぶりだから、お泊まりって感じがしてなんか楽しいの」
「そっか」
うちに人を呼んだことなんてなかったからもちろん人とお風呂に入るなんて小さい頃お母さんと入ったきりかも......
というか親戚でもない小学生の子を勝手に家に連れてきてお風呂まで入るって大丈夫かなこれ、なんかの法に触れない? 急に不安になってきたけど正直今更な部分あるよね、うん、多分大丈夫、そういうことにしよう。
「そう言えば、着替えとかある? 大丈夫そう?」
「ないって言ったらどうする?」
「えっ......ないの? え、う、どうしよう。私の服着る? あーでも下着とかあるし......」
私がうんうん唸っているとれなは徐に自分のリュックを漁ると
「ごめんごめん、ちゃんと持ってきてるから安心して?」
「もー、れなはそうやってすぐ私のこと揶揄うんだから!」
「ごめんてば」
さて、これからがまた難しい。今度はお母さんに気づかれないでれなをお風呂場に連れて行かないといけない。どうしようかな......




