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第十話 「秘密のお泊まり①」



 「日も暮れてきたしそろそろ帰る?」


 「うん。花恋のおうち、楽しみ」


 さて、どうしよう。お母さんにれなのことなんて説明すればいいの? 公園であった子なんて流石にいえないよね......なんて言い訳しよう。友達の妹? うーんでもそんな話したことないし万が一だめって言われたら約束破るみたいでなんか嫌だし.....


 「花恋どうしたの? 疲れちゃった?」


 私が考え込んでるのを心配したのかれなが声をかけてくる。


 「ううん、ちょっと考え事」


 「やっぱり家行くのだめかな......?」


 れなは捨てられた子犬の様な目でこちらを見つめてくる。実にあざとい。本来れなからそれを言ってもらえたら素直に断れると思ってた。


 「ううん、大丈夫。たぶんなんとかできると思う」


 口から出たなんの確証のない言葉に少し驚く。一番欲しかったはずの言葉で、断るチャンスだったのに、断るどころかなんとかすると言ってしまった。


 「よーし、なんか色々考えるのやめた! 行こ、れな?」


 そう言って今度は私がれなの手を引いた。口に出すとより一層なんとかしなければという思いが強まって、私は覚悟を決めることにした。少し不安そうだったれなの顔は驚きに変わり、やがて可愛らしい笑顔に変わった。


 「うん!」


 れなに手を引かれやっと登ってきた坂を今度は私がれなの手を引きながら降っていく。


 「あ、そうだ。うちに来るならこれだけ約束して。れなが家に泊まってるのはお母さんにも内緒にするつもりだからくれぐれも見つからない様にね」


 「バレちゃだめなの?」


 れなは少しとぼける様にそう答える。


 「だってれなのことなんて説明すればいいかわかんないもん......」


 「普通に友達って言えば?」


 「うーん、それはちょっとなぁ」


 「あ、やっぱりれなのこと友達と思ってくれてないんだ。そうだよね、れななんて......」


 「あーちがうの! 私達年も全然違うし、公園であった子を泊めるなんて言えないでしょ? だからその、れなのことはちゃんと友達だと思ってるから、ね?」


 「えへへ、そっか」


 どうやら泣き真似をしていたらしく、れなはいじらしく微笑んだ。


 そうこうしているうちに我が家の前に辿り着いた。


 「ここが花恋のお家なんだ?」


 「うん、じゃあちょーっと待っててね」


 自分の家に入るはずなのに嫌に緊張しながらガチャリとドアを開ける。


 「ただいま~」


 「遅かったのね? どこに行ってたの?」


 「あー、そんな遅くなる予定じゃなかったんだけどちょっと友達とあったから話し込んじゃって、あはは......」


 嘘じゃない、うん、嘘じゃないから! 


 「ご飯できてるから早く食べちゃいなさい」


 どうしよう、とりあえずれなに私の部屋まで行ってもらわないと。


 「ええと、あっ、玄関の鍵閉めたっけ、確認してくる~、部屋に荷物置いたら食べるから!」


 またガチャリと玄関の扉を開けて、外で待っていたれなを手招きする。


 「今お母さんが私の夜ご飯用意してくれてるから今のうちに私の部屋に行ってて」


 私はれなに小声でそう伝える。


 「なんかこういうのちょっと楽しいかも」


 私は緊張で冷や汗が止まらないのにれなはなんだか少し楽しそう。


 「もう、こっちは真剣なんだから、行くよ?」


 れなはこくりと頷いた。そして私達は再び玄関の扉を開いた。

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