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冬の祝福  作者: 神間みと
1/1

あの時の君はまだ儚い少女だった。



 《関東甲信越では記録的な大寒波を記録しー……

 夕方から寒さに注意しましょうー……》


 うー…寒っ…今日で仕事(おさ)めだったし、スーパーで特売の豚肉と白菜やら食材も買えたから、帰ってテレビ観ながら

 焼酎1杯やるかぁ……


 …ん?なんだあれ…?


 夕方、小さな町の横断歩道と公園がある通りに差し掛かった。公園のブランコで1人少女がボーッとした表情で座っている、ボロ切れのような薄汚れた布から細くて色白な手足が伸びている。小学生1年生くらいだろうか?とても華奢な手が錆びたブランコの鎖を握りしめていた。


 家出…か?突然の生気のない少女の出現に戸惑った。


 そろそろ暗くなるので危ないと思い

 その少女に恐る恐る声を掛けてみた。


『あの……さ、君何処から来たの?もしかして家出した?』

 ボーッと砂の方を見つめていた少女が声に気づいて、ゆっくり顔をこちらに上げた。


『……家?』


『………分からない。。』


 目に光がない。


『分からない……って、住所とか、名前とかは?』


『……名前…分からない』


 警察署…行くか…

 でも、買ってきた肉とか腐りそうだな…。


『と…とりあえず今から冷蔵庫に食材入れてからでもいいかな…?ほら、暗くなってきて雨も降りそうだし…』


『……うん。』


『よし、じゃあこっち、そこの横断歩道を渡って

 交差点すぐのアパートの二階だから』


 少女はすくっと立ち上がり、

 俺はぎこちなく、(あいだ)を開け歩き始めた。……


 灰色の空に雪雲が広がっていたー



 ◆


 ーカンカンカンカン。

横断歩道を渡りアパートに到着し、

2人分の階段を登る音が鳴り響いた。


少女は凍えた手にはぁー…と息を当て温めているのを横目にポケットから鍵を取り出した。


―ガチャ。

重めの鉄のドアがゆっくり開く


『ごめん、玄関宅配便のダンボールとかで

散らかってるけど、ちょっとここで待ってて冷蔵庫に食材入れてくるから…』


少女はこくん、と頷いた。


玄関から伸びる1本の廊下と玄関を入ってすぐ

横に人1人分くらいのトイレ、クローゼット、寝室、リビング、キッチンがある築45年のアパートだ。


部屋は意外と殺風景で茶色のフローリング、リビングの部屋の隅にはテレビ、その横には窓があり、その横にはネット通販で安くで買った白フレームの姿見と灰色のフロアマットを敷いている。


簡単に手を洗い、ガサガサと音を立てて白色のビニール袋の揺れを見ながら、一人暮らし用の小さな冷蔵庫に食材を詰めていくー……


『よし、終わった!』

あの子を警察まで送り届けようー

そう思い立ち上がり振り返ると、

その黒髪の少女が立っていた。


『……玄関で待っててっ言っただろ?』


『……お腹…すいた。』

黒くて大きな瞳がこちらを真っ直ぐ見つめている。

沈黙に耐えきれなかったのか、

ぐぅ〜とお腹が小さく鳴った。


『……分かった、、今日の夜ご飯は鍋だからそれでいいか?』


『お鍋……好き。。』

小さく薄いピンク色の唇が小さく動いた。

その繊細で小さな動きに思わずドキッと心臓が高なった。


料理を作っている間、その子はテレビを見ていた。

黒髪ロングストレートが肩の下くらいまで伸びている。時折、じーっと真剣そうな顔をしている。


白菜と人参を包丁で切り分け

、こまぎれの豚肉を出汁を取った鍋に投入した。

15分くらい待って、蓋を開けると、

ぐつぐつと出汁の上品な香りと

黄金色の出汁の中に、綺麗なオレンジ色に色付いた人参、煮込まれた豚肉、

透明な芯に薄い黄緑色に色が変わった白菜が顔を覗かせた。おまけに入れておいたウィンナーが

燻製したような香りが出汁と混ざり

食欲をそそる香りが漂っているー。


『おっ…おーい…出来たぞ…』

一瞬なんて呼んで良いのかわからん分からず、

また心臓が高鳴った。


その女の子はぴくっと肩が動き、

黒い髪をなびかせながらゆっくり振り返った。


こくんと頷きながら、

そろそろとこちらに近寄ってくる。


『お鍋…良い匂い…』

少女の顔色が少し明るくなったような気がした。


『いただきます…。』

二人は声を合わせて少しおじぎをした。


白米にたくあん、鍋をテーブルに置き

二人は食べ始めた。


カチャカチャカチャー…

無言の静かな時間がまた流れた。


『お…美味しい?』


『うん、美味しい…!』

彼女は目を輝かせながらこくこくと何度も頷いた。


相当腹が減ってたのか…

何日食べていなかったのだろうと思ったが、

言葉を喉を奥で留めた。



一通り食事が終わり、いつもならすぐに洗い物に取り掛かるのだが、少女の薄汚れた姿に耐えきれず彼女に罪悪感と共に言葉を投げかけてみた。


『あの…さ、風呂入る?沸かすけど…』


『…!いいの…?』

少女が大きい目を更に丸くした。


『うん、別に構わないけど…』


『じゃあ、一緒に入る……!』


『えっと……いや、そうじゃなくて、

1人で入って欲しいんだけど……』

申し訳なさそうに返すと、少女の顔が

しゅん…と下がった。


なにか悪いことでもしたかと思い焦ったが、

今のところ何も悪いことは言ってない気がした。


『その、君のことが嫌い…とかじゃなくて…』


嫌いでは無い、嫌いでは無いが

一緒に入るということは

犯罪に当たるわけで、牢屋に入るのなんてまっぴらごめんだ。


『警察に届けても、戸籍は出てこないよ…?』

口を少しとんがらせながら彼女が言った。


新手の脅しか……?

ポカン、と口を開けていると

少女が続けた。

『私、ここじゃない世界からやってきたの』


ここじゃない世界ってどこだ。

夢の世界か?夢の国か?

そもそも、これが夢なのではないかと

手を軽くつねったが痛みはある。


『いや、夢でもなんでもそういう事はイケナイカラ……』焦りすぎて思わずカタコトになってしまった。


『私、幽霊だから……』


『……はぁ?』


『だから、ゆうれいだから!!』


『ちょ……ちょっと待て!俺の前頭葉の頭の思考回路を整理させてくれ……』頭が現実とファンタジーの狭間でこんがらがってきた。


『いや、俺…霊感ないし、

幽霊なんて見たことないし……』


『幽霊の間では、その気になる人が居たら真正面から『てぃやー!』って体当たりして、霊魂の欠片をその人間に入れれば見えるようになるんだよ?』

《ミニキャラがよちよちして体当たりする画》


『……は、はぁ。。』

……なるほど、よく分からん。


『それで、youは何しにここへ?』


『……その/// ひ……一目惚れ////』パァァァ

乙女オーラー前回とキラキラとした光の欠片が

瞳の中を舞っている。


『…はい、ダウト!!…ってかあり得んだろ。』

『あり得ますぅ』


『ほら…幽霊だけど触れるんだよ?

ねぇ、触って!!』


『いや、触りませんけど……』


『むぅぅ……。。』

白くてピンクに色付いたぷにぷにした

ほっぺが膨れている。


『こうなったら……強行突破だぁー!!!』

《ガバッ……!ドサッ》


『!……痛ッ……』

押し倒され、フローリングに頭を打った。


(や……柔らかい。。これは……!!?)

バッと顔を上げると黒髪ロングの美少女が

俺の上に覆いかぶさっている。

目はうるうるしていて、今にも泣きそうだ。


『……お兄ちゃん。。』


『……!!!///』


その海のように深く濃い青色グラデーションの虹彩と

涙で水分量の多いトロトロの瞳にまたドキッとしてしまった。


いいか?俺はロリコンじゃない……ロリコンじゃない…ロリコンない…。。


1人でぶつぶつと呪詛を唱えていると

少女の白くて細い腕が俺の首筋まで伸びてきた。


上から馬乗りで覆いかぶさられ、

首筋に腕を回し抱き締められた。


『お兄ちゃん……好き』


『……あっ……あのさ、俺に妹は居ないんだけど……』


少女の瞳からポロポロと涙がこぼれた。


『あ、いや、ごめん。。』


《続く》












































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