隠し事
そこから数週間、…。『グレーゾーン』集めも案外順調だった、やはり不満に持っている生徒は少なくない様だった。
優子先生も隠密に先生達の『グレーゾーン』の署名や名乗り出るものを集めてくれていた。
だが、……。その数週間、暁春が学校に来ることは無かった。俺からも家に行くことはなかった、作戦が終わったら…そう考えていたから。
ある日の朝、いつもと変わらず屋上で青空を眺めていた。
最近は慎之介も大人しく落ち着いている、それでも、怪我人や泣いている人が絶えないのは事実だが、でもまぁ、呑気なものだ、裏で慎之介達を陥れる為に俺達が動いてるとも知らずに。
「おい!持ってきたぞ〜!」
と言って大量のファイルを抱えた柊朔が屋上の扉を開けた。
「だいぶ集まったな……。こっちが生徒で、こっちが先生。案外すんなり行ったな、慎之介にもバレてないと来た、こりゃ勝てるぜ!」
そして、俺は柊朔に伝えていなかったファイルを出した。
「ついでに、このファイルもだ。」
「このファイルは?」
「聞いて驚くなよ、これはグレーゾーンの親御さんからの証言だ、怪我や通院記録、とりあえず証拠となり得るものを揃えた。」
そう、俺は数週間の間グレーゾーン集めだけではなく、何か決定打になり得る状況証拠を揃えていたのだ。
「でかした!!流石!お前は頭が良いだけあるぜ!!…あと揃えるのはアレだけだな…!」
「…?他になにかあったか…?これだけ証拠と署名があればほとんど敵なしだと思うが…、?」
「とぼけんなよ!お前、まだ集めてねぇんだろ?暁春の分。」
「暁春!?い、いや、要らないだろこんだけあれば行けるって、」
「駄目だ、お前、最後に話してから話してないんだろ?暁春も学校に来て無いしな。そろそろプリント渡しに行けって言われる頃だろうぜ。」
「お、おい、なんでまた俺がプリント持っていく流れなんだよ。」
「ずっとそうだったじゃねぇか。」
「……。気が向いたらな…。」
「素直じゃねぇなぁ…。おっと、そろそろ時間だし教室行こうぜ。たまにはちゃんと出席しろ?じゃないと暁春にお前が好意持ってること言うぞ…?」
「…!わ、わかった!わかったよ!行くから!」
そうしてその日は一日出席した、授業は思った通りつまらなかった、が、作戦の事…暁春の事を考えていたら何だかあっという間だった。
「冬輝!今回もプリント頼んだぞ〜」
もう決定事項のようだった。
そうして皆が帰り支度をして、帰路に着く中、俺はいつも通りの屋上に来ていた。
……。
「もうそろそろ……か…。」
「なぁにがもうそろそろだってぇー?」
!?
後ろにいつの間にか慎之介の姿があった。
「慎之介ッ…!」
「なぁ〜んかこそこそやってるらしいねぇ〜…!楽しそうじゃ〜ん俺も混ぜてよ〜♪」
勘付かれていたのか……??まぁいい…もうそろそろでこれも終わるんだ。
「は、はは。もう俺はお前なんか怖くねぇぞ、……。」
「あっはは〜!面白い人だねぇ〜!冬輝くんは〜!何もわかってないよ君は〜♪」
「ど、どういうことだよ…?」
「ここからグラウンドの方見てみぃ〜♪」
そう言われて恐る恐るグラウンドの方を見下げる。
「柊朔……??」
遠くからではなかなか見づらかったが、恐らく…恐らく柊朔であろう人が三対一でボコボコに殴られている光景だった。
よく目を凝らす…いや、あれは柊朔だ、長い間一緒に居るんだ、わかる…。
「……ッ!?柊朔ッ!!、」
俺は慎之介を押しのけて柊朔の元へ行こうとする。
だが、慎之介に腕を掴まれてしまった…。
「そう簡単には行かせないよぉ~。ここで取引をしようじゃあないかぁ。君が今やっている計画を止めるのであれば君をこのまま行かせても良い、君と柊朔くんの行いは見逃そう。でも…今、ここで!誓わないのであれば俺はお前を行かせない。」
慎之介の手に力が入る。痛い……。
クソ…、。どうすればいいんだ…、。ここで俺が首を縦に振ったら全ての計画が台無しになる。でも、このままだと…柊朔が…。あいつは部活で頑張ってるっていうのに…。この前言ってた…。「「このままだったら推薦貰えるかも」」って……俺は……俺はッッ!!!
「冬輝くんッ!!!」
階段を駆けあがて来たのか息も絶え絶えな優子先生が俺の名前を呼んでいた。
「おおっと、優子先生のお出ましだぁ。助かったなぁ、いや、半殺しなだけかぁ♪あっはは!まぁ、今回は興が冷めたから許すよ、でも、ちゃあんと考えとくんだな。」
慎之介はそのまま去っていった、俺はそのまま腰が抜けて地べたに座り込んでしまった……。
「冬輝くん、大丈夫??」
「はい…腕が痛いぐらい…、って柊朔!!」
「柊朔君がどうしたの…?」
「リンチに合ってたんです…。早くいかなきゃ…。」
俺は急いで柊朔の元まで行った。
「大丈夫か!?柊朔ッ!!」
そこにはボロボロになった柊朔。
「あはは、変なところ見られちまったな…。」
「お前、まさかじゃねぇけど…。」
そのまさかだった。
「…。お前の前ではカッコつけたかったからあんまり言いたくなかったんだが…。」
そう、慎之介がここ数週間大人しかったのは柊朔が俺たちの知らないところで対象にされていたから。
いや、この数週間だけじゃない、俺が被害に合わなかったのも恐らく柊朔のお陰……。
「あんまり気を落とすなよ、俺が勝手にやったことだ。とりあえずお前は絶対にこの計画を止めるなよ?何があってもだ。あと、暁春の事、忘れるなよ?」
そう言って足を引きずったまま優子先生と保健室へ去っていった。
……。俺はどうすれば……、、
そうして何を考えるわけでもなく歩きだし…。行き着いた先は…暁春の家だった。心の中では会いたい気持ちがあるのだろうか…。
何も考えずに家のチャイムを鳴らした。




